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勇者よ、それがお前が望んだことなのか?  作者: 安藤昌益


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3/7

ちょっとご機嫌を取っただけよ

 2人は唇を重ね、口を吸い合いながら、互いの服を脱がし合った。全裸になると、あらためて、いったん口を離して、互いの体を貪るように見た。二人の体からは、きつい臭いが立ち昇って鼻をくすぐった。魔界への進軍で、多少は川や泉で体を軽く洗うことはあっても、ゆっくりと念入りに洗うことはできないし、この3日間はそう言うこともなかったから、汗や汚れ、さらには高まる欲望から生じる雄雌の分泌する臭いが混じっていた。その臭いが、さらに欲望を高めることになった。

「3回の生で得られなかった、最初は特に憧憬した肉体、こいつの裸の姿、臭いがこれだったんだな。今回も欲しいとは思ったな。確かに、たまらない体だ。」

と彼は思ってゴクリと唾を飲み込んだ。ふと、他の女達、ある意味ずっと過去に、別の意味ではここでは存在しない未来に結ばれた、恋人であり、妻であり、戦友であり、同志であり、協力者であり、共犯者であり、親友であり、副官であり・・・、の裸体を思い出した。彼女達も素晴らしかった、でも、これはこれでと思っている、全く据え膳を遠慮する気は全く起こらなかった。

「俺という男は全く・・・屑だな。」

と心の中で苦笑した。

 彼女も唾を飲み込んだ。

「人間って・・・。」

と思って、さらに欲望が高まるのを感じた。

 堪らなくなった2人は、また唇を押し付け合って、強く抱きしめた。

「いい気持ちだ。」

と彼は思った。エルフとしては長身だが、抱いた女の中では小柄な方だし、体の厚さが薄かった。体がぶつかり合いながら蕩けながら一体となるのではなく、自分の体に蕩けて一体になってくるように感じた。乳房が胸に当たる感じも全てが気持ち良かった。

「俺は、これが欲しかったんだな。」

と心の中で感慨をもった。

「あー。こんなに熱くて・・・。強くて、でも優しく抱いてくれて・・・とてもいいよ~。全然違う~。」

と彼女は心の中で叫んでいた。


 これからは、ひたすら舌を指を這わせあい、一体となり、色々な体位でひたすら激しく、時にはゆっくり、優しく、楽しむ様に動いた。あらゆる体液を出して、その臭いをつけ合った。何度か彼が果てる間に、その十倍体を彼女は痙攣させて、最後は完全にぐったりして、快感に溺れまくった後の満足そうな顔をしていた。それを見て、彼は、

「愛しているよ。素晴らしいよ。」

と囁きながら、

「これで、まずはこいつを確保したな。」

と心の火でホッとするとともに征服感、復讐の思いを複雑に交差させていた。

「う、うん。私も愛している。」

と息も絶え絶えに答え乍ら、

「勇者を私のものにしたのよ。私も、エルフも死なせはしないのよ。」

と心の中で叫んでいた。


 翌日、

「勇者様。もう・・・。」

とドアを開けた騎士は、性欲を掻き立てるような臭いが、まず鼻を駆け巡り、それから耳に女の喘ぎ声が飛び込んできて、目には勇者とエルフの女魔導士がくんずほぐれつする姿が飛び込んで来た。朝日で目が覚めて、立ち込める臭いと昨晩の記憶と目の前の互いの顔を見て、性欲が高まり・・・となつた結果だった。慌てて、その騎士はドアを閉めて、ゆっくりと立ち去ったのだった

 結局、勇者イチジツがエルフの女魔導士インとともに、朝食を取りに現れたのは、かなり午前も遅くなってからだった。しかも、勇者はハイエルフ女の腰ら腕をまわし、彼女は彼の体に身を預けるように寄り添って、彼は鼻の下を伸ばし、彼女は乙女のように顔で、周囲の視線をはばかることなく、恋に狂った愚かな男女そのもので、イチャイチャラブラブ状態だった。


「勇者様は、あのエルフ女と結婚すると言い出して、従軍修道士騎士さんを驚かせたそうだぞ。」

「しかし、あの傲岸不遜なハイエルフの女が融資や様とは言っても、人間と結婚を承諾するのかな?」

「それがさ、もうベタベタイチャイチャラブラブ状態で、勇者様と結婚できないと死ぬなんていう状態だとよ。」

「へえー、さすが勇者様って言えるところかな?あのハイエルフまで、魅惑しちまうなんてな・・・。やっぱり床上手さも勇者と言うところなんだな。でも、魔王打倒の方はどうなのかな?心配だけど?」

「それが、2人とも意気盛ん、意気軒高なんだってさ。魔王を倒して、即結婚式を挙げると従軍修道士騎士さんに納得させたそうだ。」

「あら、それならいいんじゃないの?愛の力で一気に魔王打倒!と言うところじゃない?」

「何かこっちも意気が高まってくるな、こちらも。」

「勇者様の恋のために、結婚のために頑張るか?」

「そうだな。」

「そうね。」

と人間の騎士達の方は、砦各地での配布されたパン、チーズ、燻製肉、とスープを食べながらそんな会話となっていた。


 他方、勇者パーティ―のメンバーとはいうと、彼らだけで固まって、

「あの馬鹿ハイエルフはどういうつもりだ?まさか裏切ったんじゃないのか?」

 パンをかじりながらドアーフの男、ナア・セツが言うと。

「ふん。エルフなんてそんかものよ。ブスで、性格の悪い、胸も尻も小さい、淫乱で、馬鹿で、身勝手で、我がままで、気まぐれな考えのない臆病者なんだよ。」

と倍近い体の大きさのあるラキ・ノキト、オーガの女戦士は吐き捨てるように言った。あんな奴、こうして食い殺してやりたいというように大口を開けてパンをかじり取った。

「問い詰めたが、そんなことはないといっていたよ。勇者に求婚されて断るわけにはいかないから、やむを得なかった、ご機嫌を取っただけ。勇者が自分に心を許して、好きが増えたんだからいいじゃないといっておった。」

 竜人族のユウ・キュウがため息をつくような調子で言って、腕を組んだ。トカゲというか、竜の顔からは想像できないが、一番冷静で常識的である。

「いっそのこと、もう殺してしまったらどうだ?エルフには、事情を後で知らせればいいのではないか?」

 豚頭オークのエイ・ケツが面倒くさいと言う感じで提案した。

「そんなことしたら、人間達にも勇者にも不信感を抱かせるわよ。士気が低下して、特に勇者が意気消沈とかしたら、魔王を倒すと言うどころではなくなるわよ。本末転倒よ、それでは。」

 セイ・ソウ、女有翼族、が呆れたわよ、という表情で睨んだので、ケツが不愉快そうにブイと横を向いた。

 狼頭獣人のオシ・アケが、

「あいつにそれとなく、そんなことを言いだす連中が出て来ると仄めかしたら、なんて言ったと思う?そんなことをしたら勇者が俺達全員を殺しかねないわよ、とか言ったんだよ。」

と言うと、キュウが、

「確かにそうだろうな。それで彼女は、勇者を安心させて、油断させるために、常時奴のそばにいるといそいそ自分の荷物を持って、勇者の小屋に行ってしまったがな。」

「う~ん。」

と全員が思わず唸った。


「本当に、私も殺される未来だったの?あ、疑うわけではないのよ、決して。ただ、一応・・・。」

 スンは少し心配そうな顔をして尋ねてきた。明日は、魔王城への総攻撃の夜センシュウに抱かれながら、スンは彼を見上げた。少し頭を冷やしてみると、彼が一度体験した歴史、それがあるというとが事実であったとしても、彼が事実を言っているかはわからない。狂暴している亜人達の中で、彼女だけが、エルフだけが殺される、裏切られるという雰囲気はなかったしない。もしかしたら、彼が嘘をついて、自分達を分断しようとしている可能性があることに気が付いたからである。

「もし、私が気味も殺されたのを見ていなければ、君も騙されていたということを知らなかったら、とういうことがなかったら、君が殺されないで他の男の妻となって過ごして居たら、可愛さ余って憎さ100倍で、それでも君を助けたいと思うほど悪党ではないよ。君が死ぬ直後、私にごめんと口にしたからこそ、君が私の暗殺に加わっていたことを忘れることができたんだよ。君への愛を純粋に愛し続けられたというとが、私の言っていることが真実だという証拠だよ。」

「そ、そうね。全然疑ってなんかいなかったわよ。」

とあわてて否定して、彼の胸に顔を擦り付けた。

「悪党か・・・。こいつは馬鹿が付くほどのお人好しで善人だもんね。私を忘れられないのよね。」

と安心した。

「あの時は、お前は死んでいなかったよ。死に際の俺を罵っていた、近くにいるだけでも汚らわしかったとか言ってな。30年後に転移して、他人、ハイエルフ、の妻になっていたお前を殺したし、2度目にはお前も含めて一度は許した、後でお前も含め全員殺した。3回目は、最初からお前も含めて全員殺してやった。既に1回は許して、3回は殺した。悪党か?本当に俺は悪党だよ。」

 彼は、心の中で苦笑いした。

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