復活の魔王➁
「魔王様。どちらに?心配しましたよ。」
とトオビが本当に心配していた、というように問い質した。
「すまんすまん。好奇心が抑えられなくてな。つい町の散策をしてしまった、というところだ。」
照れ笑いしてみせた。魔力の回復は、成長を早めさせてはいるが、まだ外見は少年てであるから、その姿はいたずらを咎められた、門限に遅れて照れ笑いして、一応謝るものの反省は全くしていないが、憎めないという感じではあった。
「仕方がないですね。でも、人間の領域までもう間近なんですから、気をつけて下さいよ。」
とため息をつきつつ、あきらめたように言った。
「前も出会って、勇者の館に入るまでこういう奴だったな。思わず情が移ってしまう。あの時の最後の彼女はこの彼女にはないのだろうか?」
結局、前回と同様、魔王はパーティーを率いて、勇者のいる場所を強襲、そして勇者を討ち果たす、という方法を取ることになったのである。
勇者が1人であるというのど同様、魔王も1人である。魔王がいた戦線で、そこに勇者がおらず勝利したとしても、他の戦線で勇者により壊滅する軍があり、他でも押されてしまっては、どうもこうもない。どこの戦線を優先すればいいのか、と問われると、どの種族もジ分のところに魔王を、と言って譲ろうとしない。
それに勇者さえ殺せば、倒せば、人間達はバラバラになるし、戦力比は逆転する。
そういうことで、前回と同じ方法ということになったのである。もちろん、魔王以外は前回、という知識は存在はしないのであるが。
そして、今、もうすぐ人間の領域に入る手前の町の宿にいた。パーティーメンバーは40名、さらに途中で合流する予定である、であるから分宿している。同じパーティ―のようには行動していない。亜人の傭兵という触れ込みでここまで来ている。情報漏れがないようにするためである。自分達の領域内であっても用心に越したことはないのである。
粗末な宿ではないが、かといって一流の宿ではない。汚くはないベッドなどの家具が最低限置いてある部屋である。平均より少し上くらいである。目立たないのがいいが、かといって魔王の機嫌を損ねてはということで、色々と考えた、あまりに些細なことで議論になって、こういうクラスで収まった経緯がある。魔王には伝えられてはいないが、彼はそれを察していた。
「前回は、野営がほとんどだったな。」
とベッドの上に横になって思った。
前回は、勇者は魔王の討伐直後、勇者パーティーのメンバー全員を殺した、自らの手で。これには、ともに活動していた人間の騎士、将兵も驚いた。彼は亜人達が自分を殺そうとしていたし、人間を支配しようと攻撃することを計画していると言って、人間達を叱咤してまずは魔王討伐軍にいた亜人達を一掃した、ある例外を除いて。そして、凱旋するや否や、人間の王侯貴族に訴えて、亜人討伐を実施させたのだ。だが、亜人達は準備を整えていたかのように反撃を試みた。それは、勇者が言っていることが真実だと思われた。戦いは激しかった。しかし、勇者の存在は大きく、人間が勝った。とはいえ、完璧に亜人の殺戮を終えたわけではない。人間の諸国が、これ以上は、と音をあげたのである。魔族との戦いで荒れ果てた国土がこの戦いでさらに荒れ果ててしまった。早く平和になって、国土の再建に国力を振り向けたかったのである。亜人達の領域は、人間の領域となった。が、各亜人種族の部族のある程度、部族国というべきかはいくつかが残っていた。
トオビとは、先ず裸の体に殺した人間達の服を切り詰めて着てからだったが、人間やグリーンオーガやハーフオーガの目を逃れて、時には、というより大抵の日は、主にハーフオーガの家に押し入って、略奪して、殺していった。あの頃は、彼女が言うがまま、自分達、オーガの土地を奪い殺戮し、奴隷狩りをしたり虐待を続けている人間とその手下への復讐、オーガの解放のために行っているということをそのまま信じていた。そのうち彼女の仲間?友人?達と出会い、合流して人数が増えていったのである。
人間の圧政下に入っても、亜人達は臥薪嘗胆、雌伏して、反撃のチャンスを考え、密かに準備していた。そして四半世紀以上が過ぎ、勇者は50歳を過ぎ、力の衰えが著しく、次期勇者達もまだ若すぎる、この時がチャンスということで、各地で反乱の火の手が上がった。亜人達の残存部族国は、素知らぬ顔でそれの糸を引き、その火が激しくなるとはっきりと反乱を宣言した。その頃には、彼らの指導者と魔王は出会い、彼の存在に力づけられたともいえる。各地で、人間村や都市、砦を彼が先頭になって次々に燃やし尽くしていたこともそれを後押ししたと言える。
「今思えば、ハーフオーガとかが多かったな。後は人間とダークエルフとか亜人達が冷遇していた部族達・・・。まあ、我もあの時はそんなことは気にすることもなく、殺戮することに喜びを感じていたからな。事実がどうだということは、全く関心もなかったな。」




