最後通牒?
「同じパーティ―の仲間じゃないか?私は、かつての仲間達と戦いたくはないんだよ。」
センシュウは、神人族(有翼族)の領域にある彼の領地の邸宅の一室、大事な客用の比較的小さな居間の一室でテーブルを挟んで、かつて勇者パーティ―のメンバーだったセイ・ソウと対峙するように座っていた。外からの光が巧みに入って来る、簡素だが上品な造りの一室だった。勇者パーティ―の面々が描かれた大きな絵が一つ、壁に飾られている以外は、草花の文様で描かれた壁紙が見えるだけだった。
「仲間面しないでほしいな。まるで、こちらが悪者みたいではないか?全てはお前達人間側がしかけているだけではないか?戦争の準備をしているのを知らないと思っているのか?」
人間の基準でも、なかなか美丈夫という感じの彼は、苛立たしそうに言った。
「人間は、我々の領域を侵してきた。」
と突然言い出した。それに対して、
「私は、紛争には公平に対処してきた。最近は紛争は数もへっているはずだが。」
と切り返した。
「緑翼族を取り込んでおいて、信用できると思うのか?」
彼らの前に置いてある酒の入った杯などを持って来たのは、緑翼族の侍女だった。
「迫害されている彼らを領地に受け入れただけだぞ。それに彼らとの紛争も、そのおかげでへっているはずだが。」
とまた切り返し、自分の前の杯を口に持っていき、二口、三口呑み、
「毒などはいってはいないぞ。吞んだらどうだ?この領地で作った自慢の酒だ。」
しかし、勧められてもソウは手を伸ばそうとはしなかった。それを咎めるように見たセンシュウだったが、それには触れず、
「魔王を復活させるから勝てる、という顔だな。」
と彼が言うと、何を馬鹿なことをという顔をして、
「何を馬鹿なことを。」
と言ったが、センシュウには図星をつかれたという表情と動揺を見透かされていた。
「君達は何度も敗れて来た。私は、常に戦訓と経験から体制をより強化してきたが、君達にはできない。それに今回は。スウ・インを殺すことができず。エルフが我々の側に入っている。それだけでもさらに我々が上回っている。」
「エルフごときが・・・。彼女を殺したというが、どうしてわれわれが殺したと言うのだ?我々の誰が殺したというのだ?証拠でもあるのか?」
「そんなこと知ったことではないさ。私にとって重要なのは、彼女が殺されたということだ。君達の誰かが殺したということだ。ただ、それだけだ。誰が、どうして、殺したのか知りたければ、君達がしらべればいいことだ。それに、エルフではあまり気にならないようだが、ドワーフもオーガもオークも私の方に加わろうとしているのも気にならないか?」
「な、何を馬鹿なことを。分断を図ろうとしても無駄だぞ。」
「まあ、信じなくてもいいさ。その時慌てればいい。それから、スウ・インには2度と気概を加えようと思うなよ。そんなことをしたら、即開戦だ。そして、女子子供でも容赦はしない、皆殺しだ。」
「何を。」
反論しようとしたが、センシュウの目は正気だ、本気だと感じられたので黙るしかなかった。
彼は、もうこれ以上話すことはない、と言って立ち上がった。
「自分から突然押しかけて・・・まあ、平和さえ望んでくれれば文句は言わない。ところで、私は、既に復活した魔王を倒しているからね。余り過信しないように。」
と背を向けてセンシュウは言って立ち去った。
「こいつ・・・どこまで知っている?どこからくる自信だよ、全く。一度倒しているからと言って、また、勝てるとは限らないだろうが?自分こそ過信するなよ、だ。その言葉そのまま返してやる。」
セイ・ソウは、震えながらも心の中で叫んでいた。
「最後通牒をもらった。」
とセンシュウが解釈した、とはセイ・ソウとは思ってはいなかった。ソウは、自分はそういう言質を与えなかったし、対人間・エルフとの戦争を決定しているということはセンシュウも確信できてはいない、と踏んでいた。もうこちせは密かに急ピッチで進めている。人間やエルフ達とは異なり、一歩も二歩も進んでいると信じていた、信じ込もうとした。




