富国強兵➁
その時の一件で、スウ・インの態度がかなり変わった。
ハイエルフの名門貴族の出身であるから、ハイエルフ至上主義でありながらも、ハーフエルフや人間の方が時として信頼できるという思考であり、ある程度身近で使ってはいた。それでも大半はハイエルフであり、その半ばは自分の同部族出身者だった。
そうしたハイエルフがいなくなったわけではなく、というより数は多いが、奴隷として一時落とされて解放されたハイエルフ、解放したのはセンシュウだが、ハイエルフと他のエルフ、人間との間のハーフエルフ、それ以外のハーフエルフ、人間の数が増えた。他のエルフ、さらにダークエルフまで咥えるようになった。態度もは、自分の使用人、家臣と一律に近い態度で接するようになった。
もちろん、他の亜人はいない。それでも、彼女の態度、彼女の周辺は、ハイエルフ、いやエルフとしても異例なものとの印象を与えることができるものだった。
「奥様が、私達ダークエルフにこのように接してくれるようになるとは思ってもいませんでした。誰もが驚き、喜んでいます。」
エン・チュウは、執務室のテーブルについていたイチジツの前で直立不動の姿勢で、彼女の見る数・インの領地の報告の最後に付け加えるように言った。彼の前では、世辞も忖度も言わない女であるから、こころから思っていることだった。そのことは、彼はよく分かっていた。総計何百年、千年以上ともに生きた、ベッドを共にして、肌を合わせた女であるからよく分かっていた。同時に、今前にしている彼女とは、そのような関係は全くないのであることも、彼は心の中で繰り返していた。
「君達がそう思ってくれるようなら安心だ。」
あの後の処置は、寛大であったのか、残忍であったのか、彼自身分からなかった。彼女の部族関係者は一族全員処刑だと、一応は脅かした。勘弁してくれと泣きを入れてきたところで、関係者の一家は赤ん坊でも全員処刑しろ、お前達でそれをやり、証拠を持ってこいと命じた。一族自ら、赤子まで殺させたのである。処刑の範囲は、寛大だと言われる場合以上に絞った。他の部族の場合は、まずは脅し付けた。行動が早く関係者が素早く処刑された場合は、それ以上はあまり敢えて求めはしなかった。あまりにもグタグダして行動が遅い部族は、部族幹部を抹殺し、残った者達に関係者一族全員の抹殺処刑をやらせた。
赤子を抱いて、命乞いする女、エルフだが、もいた。
「お前が、私の妻を殺そうとしなければ、その赤ん坊は死ななくて済んだのだ。全てはお前の責任だ。赤ん坊が哀れだな。」
とセンシュウは無情にも言ったのである。その赤ん坊を抱いた女を足蹴にしたのはインだったが。直接の関与者でなった、その女は。しかし、彼女の夫が成功していれば大きな恩賞が約束されており、彼女は夫を讃えていたろう。実際の所、センシュウもインも知らなかったが、躊躇する夫を焚きつけのは彼女であったし、日頃からインに対してエルフ、ハイエルフの面汚しと盛んに言っていたのである。
どちらにしても、彼女とその赤子を殺す ことは特に残酷なことでもなく、ここで終わらせることは寛大な判断である。それに、2人が赤子の処刑を直接求めたものではない。
「それにだ、私も妻も、その赤子の処刑を求めたことはない。処刑を決めた者に命乞いはするものだ。」
と彼が言ったのは、姉意味正論であった。ただし、それで終わらせて、満足だ、とは言うつもりもなかったが。
ハイエルフの社会では、これが玉突き現象を起こし、インの示す方向に批判的なというより、教皇に反丹、暗躍していた史実が追放、処刑となった。そこには、インのかつての婚約者の名前があった。インには、特別な感慨は抱こうとはしなかった。既に、彼女がセンシュウと結ばれたことを知って、即別の女、それもセンシュウが指摘した女と結婚式を挙げた時点で、彼は彼女の特別な存在ではなくなっていた。彼には、そのことがわかってはいなかったようだが。
ハイエルフの間では、既に他のエルフの間では現れていたように、人間との提携、同盟に一層傾斜するようになった。
同部族のハイエルフに襲われたインは、センシュウが勧めるまでもなく、自分の周辺に置く人間、ハーフエルフを増やしたし、ダークエルフの護衛まで置くようになったし、彼らに親し気に声をかけ、微笑むようになった。彼らの待遇にもきを使うようになった。その上で、ダークエルフ領域ではかなり普及して人間が作った風車、水車などの導入や田畑の開拓も始めさせた。もちろん、エルフの森に適したものとして、特別に開発されたものであるし、田畑にしてもエルフの森を侵すようにはしないのだが。それはダークエルフも同様だったから、違和感はもちろんなかった。
エルフの森も、今までのそのままにというのではなく、世話をするようになった。これも人間の技術でだーくえねふの領域で広まったものだ。センシュウが3回の生、それは2000年にもなるか、で試行錯誤で選び、洗練されたやり方だった。
産業が発達すれば、豊かななる。豊かになれば、軍事力も大きくなる。インの領地も、本格的に富国強兵化が進むことになったのである。インは、その役割をダークエルフにやらせたのである。もちろん全部ではなく、主要部分についてだが。
「あいつはねなかなかやるものだ。バランス感覚も磁気も分かっている。そういう女だったか?」




