亜人達の動向➃
「勇者は、あのエルフ女を連れてきたわけね。」
オーガの女王は家臣に尋ねた。
「はい。勇者とエルフ女の対応には、元融資やパーティーのメンバーだったものを贈っておりますので、問題は生じないかと思います。」
大柄で頭の禿げた初老の貴族は答えた。
「それで勇者の引き連れているのは、人間とエルフということ?どちらも汚らわしいわね。」
「それが少し・・・。」
「何か変わったことでも?」
「人間の数が多いですが、まあ、これは当然のことですが、ハーフエルフ、ハーフドアーフ、さらにはハーフオーガの数が意外なほど多いことと、ダークエルフや黄色ドアーフ、さらには緑オーガまでいたということです。さらに、エルフ女の周りですが、基本的にハイエルフなのですが、あのエルフ女もハイエルフなのですが、たしかに周辺をハイエルフで固めてはいるのですが、人間やハーフエルフも多く、さらには離れたところですが、ダークエルフもいれています。ハイエルフの仲でも、犯罪、全て政治犯に近い罪で奴隷になった者とかが多いようです。」
「自分の部族が信じられないということですか?浅ましい事。それで魔族と魔獣の討伐は問題ないか?」
言葉が途切れた。それを見て、女王は安心したように、その後方に小さくしていた、実際に小さな体だが、の男に目を向けた。人間である。人間ではあるが、彼女の側近だった。
この場に人間が、そして、女王の側近がいるのかというと、原因はオーガの政治組織にあった。オーガに限らないが、ドワーフを除くと、そのドワーフも完全とは言えないが、亜人は部族制が非常に色濃く残っており、オーガは戦士部族の集合体というか、連合というか、寄せ集めというかの性格が強かった。実力本位と言えば聞こえがいいが、力で部族長の地位を争い、勝ち取る傾向が強く、世襲の弊害がない反面、安定がない。強い部族部族が力でもって国をまとめ、統治するということにもなる。そうなると、種族全体の安定、繁栄をもたらすのには難しい面があった。その結果、3つの制度がというか、政治構造が出来上がった。部族とは関係ない王を任継し、各部族に国の職務が与えられる。部族長が代わっても、その義務は変わらない。それを遂行できないということを示せば、部族長としての正当性がなくなるということになっていた。とはいえ、それでは王の私生活も、国の公務も、国全体を統一した方針も、行動も、施策も遂行できないため、王に直属する軍なり行政官が必要になる。オーガも勿論任命されるが、人間がなる場合も多かった。
この国は、女王の下、若くしてその地位について以来、積極的に国の制度の整備に努めて来たから、人間やハーフオーガの側近達が数多く活躍していた。ここで、事実上の王国、部族国だが、の行政官、軍人でもある彼らではあるが、あくまでも女王の側近ということになっている。それは、女王が各部族内の権限にあまり入り込めていないこと、あくまでも国は部族の連合体で、本来国家機構というものがあくまで女王の私的部門ということになっているためである。
「かなりまとまった体制になっていると思われます。ダークエルフやハーフエルフも、銃砲部隊がおりますし、勇者の妻はハイエルフであるにも関わらず、主に氏優位はハイエルフで固めているとは言え、ダークエルフや人間も周囲に置いております。さらには、黒オーガすら傍にいることに気にしていないようです。勇者の下、人間とエルフが完全に同盟し、さらに他種族の一部まで取り込んで、一体となっており、統制もとれております。その戦力は、侮れません。」
と彼は述べた。
「ふん。エルフなど・・・。黒オーガの野蛮な・・・。銃砲等役にも立たんものを。」
と傍らのオーガの貴族が忌々しそうにつぶやくのが、聞こえるように呟いたことはよく分かるものだった。
しかし、彼がどう思おうとどうでもよかったむ。彼にとっては女王さえ、理解してくれればよかったからである。
「銃砲は確かに通用しない者もいるが、それは矢も投げ鎗も同じだし・・・、その他大勢を倒すことは大いに意味があることなんだが・・・。」
女王は、しばし考える風だったが、
「銃砲に雑兵ともを倒され、前面の城壁を壊されるのは、それなりに困ったことになる。まあ、それはよしとして、どちらにしても油断ならないのは、勇者だけではないということか。とにかく、今回の魔族の討伐で勇者の部下達がどういう者達か、よく見ておく必要があるな。引き続き観察し、報告せよ。」
と命じた。
「陛下はよく分かっておられる。」
その3日後、魔族討伐完了の報告があった。実際は、1日で完了、前後半日は相手側の確認と残敵確認だった。この件での報酬、勇者にとっては必要経費だが、の要請に対する交渉で人間の側近達が忙しく往復することとなった。
「うちの女王様は、どちらに動くのだろうか?」




