亜人達の動向➁
「よくあんな女と夫婦がやれるな。お前よりずっと年上だということを分かっているのか?お前なぞ子供としか見ていないだろうよ。子供のようなお前に、あんな女が満足していると思うのか?」
とセツは、かなりぐいぐい酒を呑み続けたため、本来ならイチジツが怒りそうなことまで言い出した。
「あっちの経験が少な私では満足させられない、あいつが欲求不満だと言いたいわけか?」
イチジツの冷たい視線にドキッとして、半分セツは良いを覚ました。
「いや、まあ、そういうことは・・・。」
「実は、もう私の方がお前やスウよりもかなり年上なんだよ。」
「え?」
「別に信じようと信じまいとどうでもいいさ。言っておく。あいつも私も互いに溺愛している、ドロドロなくらいにな。ところで、お前も覚えているだろう。私達が最初に顔合わせした時のことを、私が彼女と初めて死なしをした時の様子を。多分、お前達が思っていた通りさ。あの時の気持ちは忘れていない、私は。あいつを、今愛している、一度は私を殺そうとしてもな。あいつも、殺される、裏切られるということを知って吹っ切れた。だから、私の愛を受け入れて、私を愛している。そして、こんなに女は変わるものかと思う位に変わっただよ。」
「だから、誰も彼女を・・・。だれが彼女を殺そうとしたていうんだ?」
「私が知るものか。殺したのは、殺そうと思っていたのは、お前達、お前達の誰かということだ。怨むならそいつとその種族を怨め。それがお前で、ドワーフだと言われれば、私はお前達をこの世から、かつていたと記録に残るだけの存在にするということだけだ。ああ、人間との間のハーフドワーフや黄色ドアーフを除いてだが。それだけで。」
と彼に狂気に満ちた目で見据えられたセツは、
「誰かが俺が、ドワーフが犯人だといったのかい?」
「言う必要はないだろう?誠実さを示せばいいだけのことだ。」
「あの、胡散臭い子供爺さん見たいな髭男が可哀想に思えてきますね。それで、他の種族はどうなのですか?」
聖女は微笑みながらさらに尋ねた。
「まあ、似たようなものだ。」
「あなたは、それでも期待しているのでかね。彼らが共存することを受け入れると。」
「まあ、一度は苦楽をともにした仲だしな。俺を殺したあと、お前なんか話をするのも嫌だったんだよ、と嫌悪感丸出しの顔で言ったあいつでもな。」
「あなたが変態だからでしょう?」
「ひどいことを言うな。おれは変態でもないよ。一度は期待して裏切られた。あいつも一緒に決起しやがったよ。最初の時もそうだったが、憎しみと恨みと悔しさを浮べて悪態をついて、俺に止めを刺されて死んでいった。その時、もう妻達がいたというのに、彼女の首を切り取って抱きしめて泣いたよ。未練があったんだろうな。そして、今回はこのやり方をとったんだ。分断できた。今回は、他の連中も諦めてくれるかとも思ったが、どうなることか?少なくとも、あの女はね可愛い女になっている。」
「まあ、彼女のことはともかく、他の亜人達はどうですか?」
「そちらの目では?俺の方は、ドアーフち・・・他は懲りないようだ。彼らにとっては初めてだけどな。」
「同感です、としか言えませんね。彼らには、平和共存という概念はないのでしょうか、とつくづく思ってしまいますね。とはいえ、私達人間もも同種族で争うことが止められませんから、あまり悪く歯言えませんが。」
彼女は大きなため息をついた。
「前々回も、似たような場面があったな。あの時は、全てが敵だったから余裕が少なかったからねもっと深刻そうだったな。前回は、器用損の可能性はなかったのか、と心の底かせ質問していたな。時期的にはもう少し前だった。そして、この後、惹かれ合うように唇を重ねた。」
その後のベッドの上でのことをムシュウは思い出した。女性としてはやや大柄くらいに見えたが、抱きしめると、意外に華奢に、柔らかく感じた。それでいて、強く抱きしめても自分から強く抱きしめてきて、肢体を巻きつけてきて、しっかりした弾力があるからだだった。感度もよく、いつもの彼女からは想像できないほどに、愛撫の一つづつに感じて哀れもない喘ぎ声をだし、一体になると自分から激しく動き、何度も激しく体を痙攣させながらも貪欲に求めてきたものだ。いい女だったな。と思い出し、つい、このまま誘いたくなった。それを何とか堪えた。
パーティーの仲間達に殺され、気が付くとどことも分からない森の中で倒れていることに気が付いた。何故か、服を着ていた、裸ではなかった。ただ、装備はなかった、もちろん愛用の聖剣はなかった。とにかく生きているということで、自分の能力を試してみた。変わっていないし、収納魔法を発動すると死んだ時そのままの状態だった。そこから、予備の装備を取り出して身に着けた。聖剣などの聖具ではない、どこにでもある剣とかの類だった。
「聖女様。お逃げください。」
既に2人に減っていた護衛と思われる人間の騎士の1人が叫んだ。彼は、その直後に、胸をやりで突き刺されて絶命した。
「諦めな。人間ごときがどうかなる相手じゃないんだよ、あたいらは。おい、女は体に傷をつけるなよ、特に顔にはな。値が下がっちまうからな。」
女のオーガの戦士、まだ若そうだったが、灰色髪の人間から見ても、大柄過ぎるがそれなりに美人に見えた、十人以上のオーガの戦士を率いていた。それに対して、満身創痍の騎士が後ろに若い女、見事な金髪の美人、服装から聖女?と思われた。
「こういう話では、よくある展開だな。」
とセンシュウは呟いて彼らの方に歩み寄った。
念のため奇襲の策をとった。いきなり切り込んだ。オーガが人間の聖女を襲っている。合力すべきは決まっている、と思った。オーガを含む亜人達には裏切られていたから躊躇はなかった、迷いはなかった。
聖剣ではないが、オーガの戦士を次々に一刀両断にしてしまった。
「あいつに礼を言わないとな。」
とその剣をくれた若い鍛冶屋の顔を思い浮かべた。さらに、蹴りで何人かも吹っ飛ばした。あっと言う間に女オーガは孤立無援になった。それでも彼女はひるむことなく、でかい斧を構えた。
「誰だいお前は?」
と怒鳴る様にいったので、
「勇者、センシュウ・イチジツだ。魔王を倒した。」
と彼は言ってみた。
「はあ?勇者は30年前に魔王と相打ちになって死んでいるぜ。はったりを言うな。」
と怒鳴った。
「そうか。今は30年後か。」
と呟く彼に、彼女は突進して、大斧を振り下ろした。
「へ?」
自分の自慢の大斧が、砕け散るのを見たのが最後だった。彼女の首は、その直後に切り落とされ、血を吹き出した体が倒れる前に地面に落ちた。
その後生き残った騎士の手当をしてやり、既に失禁していた聖女から30年間の事情を聴くこととなった。自分の死後、亜人達は魔王と相打ちした勇者の葬式が終わるとともに、一斉にすべてが終わったとして安心しきった、ゆだんした人間達に襲い掛かり、人間達は一部の国家、都市を除いて征服も従属下になり、搾取、略奪の対象となってしまった。あのオーガ女の一隊は、人間に対する奴隷狩りでこの辺一帯を荒らしまわっている連中だということだった。
30年前に死んだはずの勇者が目の前にいるということに半信半疑の聖女と、彼は行動を共にすることとなった。この聖女とは後に結ばれたが、彼女は大聖女ノアケ・ボノボではない、彼女も美人でいい女だったが。ノアケはずっとずっと前に死んでいた。逆に、2度目、3度目の聖女の妻はノアケだった。最初の聖女妻はノアケの後任とも言える聖女ではあったが、彼女の娘ではなかった。2度目の時も、3度目でも会ったが、その時は少し残念におもったものの、かのじょとは勇者と聖女としての関係でしかなかった。
そして、あのオーガ女は、何度も出会った。3回目の時は、復活した魔王とともに彼の前に現れている。
「全く、魔王もあんな女に見事に騙されて、純情で勇敢な女オーガ戦士だと思い込んでいたとはな。あいつもとんだお人好しだな。」




