第四話:魔改造の咆哮
サーチライトの白光が、ガレージの残骸を暴き出す。 ガーディアンのモノアイが、歪な「怪物」を捕捉した。 「……重要機密を確認。だが、なんだその……下劣な外装は」 パイロットの軽蔑を含んだ声。 ダイアの『スペシャル』は、異星の心臓を無理やり移植され、全身の関節から蛍光色のプラズマをリークさせていた。 「テツ、舌を噛むなよ」 ダイアは操縦桿――基板が剥き出しの改造レバー――を指が白くなるほど握りしめた。 サブシートのユラが、痙攣しながら叫ぶ。 「……同調、深度、臨界……! くる、くる、くる……!」 「ああ、来てるな。お前の『論理』が俺に流れ込んでくる!」 ダイアがペダルを踏み抜くと同時、機体背部のユニットが「空間を吸い込む音」を立てた。 ドッ、という衝撃。 推進剤による加速ではない。機体前方の重力を極端に操作した『落下』。 ミシミシと圧壊寸前の悲鳴を上げるフレーム。それを補強するのは、ダイアが必死に巻き付けた高張力ワイヤーの軋みだけだ。
「速いッ!? レーダーが追いつ……」 ガーディアンが20ミリ機関砲をバラ撒く。だが、ダイアの網膜には、ユラの感覚を経由した「敵の火器管制システムの予測線」が、鮮やかなデバッグコードのように投影されていた。 「遅いんだよ。お前のOS、書き込み速度が化石レベルだ」 ダイアは、本来はコンクリートを粉砕するための油圧プライヤーを突き出した。 超高速の移動慣量を一点に集中させた、質量攻撃。 ガギィィィィィィン!! 火花が散るのではない。衝撃が装甲を透過し、ガーディアンの胸部を一瞬で「平ら」に叩き潰した。 「な……に……っ」 パイロットの言葉が続くことはなかった。コクピットごと圧殺された鋼鉄の塊が、後方の廃屋を突き破り、スクラップの山と化した。
「……はは、は」 ダイアは鼻から垂れる血を拭いもせず、法悦に浸っていた。 「見たかよ、テツ。型番も、予算も、軍の規格も関係ねえ。……仕組みを理解した奴が、その理を書き換えるんだ」 勝利の余韻。だが、それは空から飛来した無数の『星の欠片』によって打ち消される。 連邦の増援。そして、ユラを追ってきた「異星」の追跡者たち。 ガレージの天井が剥がれ、夜空が剥き出しになる。 ダイアは血まみれの顔で、無数の光が降り注ぐ天を仰ぎ、ギラついた瞳で笑った。 「……なあユラ。お前の国には、もっと面白い『ガラクタ』が山ほどあるんだろうな?」 少年は、迫りくる絶望を前に、新しい玩具をねだる子供のように笑っていた。




