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アラクネと黒髪ボッチ(改作)  作者: 雷誅 萬刃
11月 終わりゆく生活
26/28

白露

お待たせしました。


 ────


「おやすみ。これからはずっと一緒だよ。ずっっと、ずっっっっっと……ふふ、かわい」


 やっと彼が私の物になった。長かった……彼と交際を迎えたのは良かった。だけど


 彼は迷いのようなもの……私達の世界の邪魔者(国家権力)の心配でもしていたんだろう。


 この世界でも、私よりも早く動けるのは光くらいだった。


 1秒もかからずに壊滅させられそうだから私は何も心配してなかったけれど、


 彼にそんな事は教えてなかったから迷うのも無理はなかった。


 教えても良かったけど、私の強さを知られて拒絶されるのは、怖かった。


 だから、彼の周りにある必要のないものを掃除することにした。


 まずは彼の対人関係を把握するために密かに彼の様子を観察した。


 都合がいいことに特別親しそうな人は居なかったけど、それはそれで問題だった。


 最初から何も期待してなかったら日常が幸せじゃなくても大して気にならない。


 そんな時、都合よく現れたのがあの男だった。奴は彼のスマホを見て気色悪く笑い


 次の日から彼の弁当を盗み始めた。こんなにも些細なきっかけで彼は脅かされたんだ。


 これから先もきっと同じことが起こる。


 だから、放置した。


 いくら彼を幸せにするために必要な事でも彼が苦しんでいるのを見るのは辛かった。


 何度も殺してやりたいと思った。でも、彼がもう2度と辛い思いをしなくて済む……


 ……幸せには私だけが居ればいい事を分かってくれると思って我慢した。


 でも、彼は折れなかった。なんて高潔でかっこいい人なんだろう。大好き♡


 彼は十分折れるだけの環境にいるのにどうして折れないのか考え続けた。


 考え続けた結果、彼が自宅を帰る場所だと誤解しているのが原因だと思った。


 上手くいっていなくても生みの親だ。その重みを私はよく知っている。


 自宅があると彼はそこを帰る場所だと誤解してしまう。


 だから、少しだけ背中を押すことにした。彼の弁当に獲物を麻痺させる毒液を入れた。


 効果は絶大だった。


 彼は疑心暗鬼に陥り、私のことだけを信頼するようになった。そう……ほんの少し


 ほんの少し背中を押しただけ。それだけで彼の世界には私以外居なくなった。


 それでもまだ彼は折れなかった。なんて強い人なんだろう……素敵♡


 私との未来の為に苦痛に耐える彼を見るのは辛かった……愛おしかった。


 彼が苦しみ藻掻く様を見る度に心が引き裂かれそうだった。


 彼が酷い目に遭わされる度に抱きしめてあげたかった。


 それでも心を鬼にして我慢した。それは彼の幸せを叩き潰す事に他ならないから。


 そして、彼は爆発した。完全に予想外だ。


 本当なら彼が私に縋ってきたその時に不要な物を捨てさせる予定だった。


 だからこそ、爆発した時は喜んでいい事じゃないのに嬉しくなってしまった。


 彼がそう出来たのは、私という絶対的な味方が居ると確信していた事の裏返しだから。


 それは、私と彼が言葉なんてなくても通じ合っていたということに他ならない。


 もし彼と言葉が通じなくとも私は彼と一緒になっていただろう。


 彼と出会う為に私は生まれてきたと、そう確信した。


 彼が私のあげた笛を吹いたときもすぐに駆け出したかったけど、少し我慢した。


 彼からの信頼を絶対的なものにするための最高の状況


 ……真の絶望の前に私という希望が駆けつける状況を作るために。


 長かった……本当に長かった。彼には辛い思いをさせてしまった。


 彼が最終的に幸せになるからって今不幸にしていいはずがない。


 それなのに私はこんな手段しか取れなかった。だから、絶対に幸せにする。


 きっと今まで寂しかったし、満たされなかったはずだ。


 その事を分かってあげられるのは私だけだなんだ。


 だから彼には外なんて必要ない。彼のことを分かってあげられない外なんていらない。


 彼は私と居られれば幸せ……ちがう。私と一緒に居ないと幸せになれない。


 彼にとっての不幸しかない外なんて絶対に行かせない。


「……あ」


 大事な事を忘れていた。


 彼と私が一緒になるためにもう一つやっておかなきゃいけないことがあった。

 私と彼の幸せの為にはやらなきゃいけないことだ。


 こんな大事な事を忘れるなんて……盛り上がり過ぎだ。


「っ!!き……ぁ──」

「お前が消えれば私と彼の関係を知るものは居なくなる」

「彼を産んだ事には感謝しているけれど、もうお前に用はない」


 やった……やった……!!死んだっ!これで本当に彼には私しかいない!!


 今この瞬間、帰る場所も!頼る人も!私以外なくなったんだ……!!


 あぁ、そうだ。これも壊しておこう。色々便利だけど、これは便利過ぎる。


 外の事なんて彼が知っている必要はない。


 だって、これからは私達の世界はあの森の中だけになるんだから。


 郷愁を覚えさせるような物を放置したら彼に不幸がやってきてしまう。


 それに、これの主たる機能が遠距離間通信だとすれば、居場所がバレるかもしれない。


「ふん……!」


 これで彼が捕まって殺されるなんて事はなくなった。


 私が居れば彼は死ぬまで健康で居られる。もしそうでなくてもすぐに私が追いかける。


 彼をこの世を彷徨う亡霊(アンデッドモンスター)になんかさせてあげない。死んでもずっと一緒だ。


「ふふふ……ふふふふ」


 帰ったらまずは何をしよう。やっぱり膝枕はしてあげたいな。


 その後は……結婚初夜を迎えて朝までねっっとり交尾♡素敵……♡


 その前にご飯だ。きっと今までの生活でお腹空いてるだろうから。


 でも、最初はあんまり食べられないって言うしね。


 小さいけど栄養のある臓器なんてあったかなぁ……肝臓だ。


 疲れてるだろうしあんまり負担をかけるのもよくない。


 でも、今日は交尾したい。回復魔法で何とかなる……といいんだけど。


次は1週間後です。

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