両目のある達磨
お待たせしました。
「ん、済んだみたいだね」
「それじゃあ次は……私のお願い、聞いて欲しいな」
「約束だからね。なんでも聞くよ」
返り血をもってしても白露の美しさを損う事は出来ない。
いや、むしろ、最も原始的で魅惑的な雰囲気を纏っている。
まったく、ちょっと手を握られながらお願いされただけですぐこんな事を考える……
本当に救いようがない。自分が嫌になる。
「私と結婚して」
ん……?もしかして結婚って言った?いやいやまさか……言ってるな。
確かに出来ない事じゃない。いや、考えてなかったわけじゃない。
いずれ自分からプロポーズするんだろうなと思ってたし……
どういう生活を送るのか、どういう家庭を築いていくのか、想像はした。
いざその場面を呼び起こされた時、そんなものはままごとだったとはっきり思う。
重みが違う。質量を伴って現実に現れたのだ。いま、確かに。俺の前に未来が。
さっきまで考えてた事全部吹き飛んだ。
「最初はね、君の事ちょっと面白いなくらいにしか思ってなかった。でも、毎回帰る時わざわざ聞こえるように帰りたくないって言ってくれてたのを聞いて確信した。あぁ、この人は私と同じだって、周りに人は居ても独りでずっとずっと寂しかったんだって、君の事を分かってあげられるのは私だけなんだってわかった。今考えたら君の事気になり始めたのもその時だった。いつか君に言われた、そういうのは恋人になってからって言葉、最初は分からなかった。色々調べるうちに、私だけを見て、私の事だけを考えて、私の作った料理だけを食べて、私だけに触れて、私とだけ一緒に寝て、これからの記憶は全部私との思い出だけで構成したいっていうことを遠回しに伝えててくれてたって分かった。凄く嬉しかった。こんな言葉じゃ足りない。体が、頭が、心が、震えた。それからは四六時中君の事ばかり考えて……恋人になった時、これからは君とずっと一緒に居れるんだと思って笑みを抑えるの大変だった。でも君はいっっっつと帰る……!!でも気持ちはわかるよ。自分のせいで愛する私が殺されるかもしれないなんて思ってたら中々踏み切れないよね。同族殺しが野放しにされるなんてことあるはずない。そして、君がそんな事分からないはずがない。それでもやったって事は今までの全部を捨ててもいいくらい辛いことがあった。そうだよね。でも、私はちょっと嬉しかった。だって、そうでしょ?君が私を呼んでくれたって事は、君が本当に必要なのは私だけで今まで君が手に入れたものなんて全部ゴミ同然の物だって、そういうことでしょう!!君には私だけが居ればいいし私も君だけ居ればいい。さぁ、邪魔するものは全部なくなったんだから、もう我慢しなくていいんだよ」
「……」
過程は違えど、俺の気持ちは白露が言った通りだ。そう、その通りなのだ。
俺が帰るべきと思った場所は白露の元だけで、隣に居るだけで幸せなのも初めてだ。
今までの不幸も、人を殺さなきゃいけなかったのも、全ては目を背けていたからだ。
だから、もう目を背けることはしない。進むべき道を、真っ直ぐに、進み続ける。
「白露に先に言われるとカッコつかないな」
「それじゃあ……!!」
白露が手を握り目を輝かせている。本当なら、遅い!って引っぱたかれるところだ。
甘やかされてるなぁ……。
「結婚してください」
「はい、喜んで!」
「あ……れ?」
「もう限界か……ゆっくり寝てて。目が覚めたら私達の家だから」
「お……み」
短くて申し訳ないです。次も1週間後です。




