立ちはだかる将来という名の虚像
お待たせしました。
「おはよう。いい朝だね」
「……ん、んん」
「今日は獣が採れたんだ〜なんだと思う?はい、リスだよ♡」
「お腹すいてるでしょ?寝てるときお腹ぐーぐーだったもうね。はい、あ〜ん」
「……うん、うん!!」
白露が用意してくれたリスの丸焼きを食べる。美味しい
……苦い内臓も臭みしかない肉も……全部美味しい。
口を皿に直接着けてリスの肉に食らいついて飲み込む。手なんて使ったら遅くなる。
「美味しい?」
「ふぉ……うッ」
「あぁ、慌てないで……大丈夫、肉は逃げないから。落ち着いて。はいお水」
白露が背中をさすり、コップを口に当ててくれた。今のやり取り夫婦みたいだな。
いつかこれが日常になる日が来るといいんだけど。いや、来させるんだ。俺が!必ず!!
「ぷっはぁ……ふぅ……美味しい」
「そっかそっか。たくさん愛情が入ってるからね♡食べ終わったら……帰るの?」
「まぁ、そうなるね」
「嫌、帰らないで。ずっとここに居て。昨日みたいな事はあるけど、ここは広いから生活には困らないよ。昨日何か辛いことがあったんでしょ。好きな人の事なんだよ?見れば分かるよ。君を辛い目に遭わせる場所になんて帰る必要ないでしょ?ここにはそんなものはなんにもないから。君をそんなに傷付けた外になんか行かせられないよ……一緒に暮らそうよ。ね?何か不安な事でもあるの?」
不安な事、ここに居ること自体が不安そのものだ。俺が……絶対に誰かが怪しむ。
特に今なんて俺の弁当食ってカス共が負傷したばかりだ。
そんな状況で行方不明になれば血眼になった警察に捜索されるだろう。
国家機関は自分達の面子が傷付いた時だけは凄まじいスピード感で動きやがる。
白露に、そんなものを差し向けてはいいわけがない。
自分の為にそんな事をするなんて恋人のやる事じゃない。
「白露が考えてるより人間は……強い」
「俺がここに俺が居続ければそんな人間達がここにやってくる」
「そんなものから逃げられるわけない。きっと白露は死ぬまで体をいじられ続ける」
「そんなの耐えられない!失いたくない……失いたくないんだ……」
「………………分かった。そこまで言うなら私からはこの話はしないよ」
「でも、忘れないで。君が望むなら私はいつでも君を受け入れるから」
「どんなものからも、絶対に守るから」
「分かった。覚えとく」
「……少し早かったか。でも、ここまで進めば後は時間が解決してくれる。君が幸せになれるまでこんなに時間を掛ける私を許して欲しい……必ず幸せにする。待っていて」
白露がなにか言っていた気がする。
聞こえるように言っていないって事はそんなに重要なことじゃないんだろう。
本当に大事なことなら多分明日もう一回言うはず。今は手でも振っておこう。
頭から離れなかったら次に聞けばいい。
「……」
「……昨日どこ行ってたの」
「……」
「答えなさいよ!」
もう辛うじて出てきた挨拶も出てこない。
今までは怖かったこのメンヘラの癇癪も今ではただの雑音。
昨日これが作った弁当があんな事を起こしたんだ。
そんな暗殺まがいの事をする奴に挨拶なんて出来ない。
大学受験辺りで頼るつもりだったが、もうそんな事を気にする事もない。
父親に頼めば何とかなるだろう。
「その目は何!その目は何なの!!」
「……」
「答えなさい!」
白露が待ってくれている。
そう思うだけで今まで圧力を感じたこれの説教に何も感じない。
生まれて初めて平手で打たれたな……多分前までならショックを受けたんだろうな。
もうこいつに対してなんの感情も……
いや、一つだけあったな。“生んでくれてありがとう”
このメンヘラが俺を産み落とさなければ白露には会えなかったからな。
「……」
「ご飯ないから!」
「……そう」
学校の準備をし、制服に着替え、金を懐に忍ばせ学校に向かう。
メンヘラが何か喚いてるな。うるさい。白露の所に帰りたい……。
帰って白露の作ってくれたご飯食べて……イチャイチャして……
「……」
「……」
学校に着いたはいいものの周りの視線が冷たい。ま、当然か。
俺の弁当て負傷者が出たんだ。どうして俺はこんな所に居るんだ?
白露と一緒に居ればよかったのに……なんでこんな所に居るんだ?おかしいだろう。
「気を付け、礼」
「「「おはようございます」」」
「はい、k──」
はぁ……白露のエッチな写真でも見──増えてる。
俺を全裸で抱き締めながら頬にキスしてる写真だ。ホーム画像にしよ。
普段は胸ばっかり見てるから気付かなかったけど、太ももから先が鋏角なのか。
鴨川に蔓延るバカップルみたいな事をしてしまった……まぁいいだろ。バレなければいいんだ。
「気を付け、礼!」
「「「お願いします」」」
「今日はデータの分析にt──」
次は1週間後です




