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現代ダンジョン最底辺の清掃員は今日も静かに世界を救う ~異世界から帰還した元勇者の二周目無双攻略記~  作者: さとう
第一章

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第4話

 清掃ギルドに戻り、正式にアルバイトとして雇ってもらうことにした。

 意外なことに、ハイジも「仕事したいです」と契約。あんなにビビッてたのに何でだろうか。


「いや、その……怖かったけど、ドキドキしたんだ。ダンジョン清掃人、ぼくに合ってるかも」

「そ、そうか」

「ところで逢魔くん、大学入学って言ってたよね……どこの大学?」


 大学名を言うと、ハイジは笑顔を浮かべた。


「ぼくと同じだ!! うれしいな、よろしくね」

「ああ、よろしく」


 不思議と、ハイジは話しやすかった。

 そして、課長のガンモさんが封筒を俺とハイジに渡す。


「職業体験とはいえ、しっかり仕事をしてくれたし、危険な目にも合わせてしまったからその手当も上乗せしておいた。受け取ってくれたまえ」

「「ありがとうございます!!」」


 遠慮なく受け取る……うおお、けっこうな大金だ。

 朱美さんは言う。


「今回のようなパターンは滅多にありませんけど、魔獣に遭遇する可能性も否定できません。命を失う覚悟……とは言いませんが、覚悟はしておくように」

「「はい」」

「はっはっは。期待の新人だ、頼りにしているよ!!」


 と、ここで俺は気になっていたことを聞く。


「あの、清掃人の出番がそんなにないとは聞いてますけど、他の清掃人は?」

「ははは。我々の管轄であるE区画は、魔獣の遭遇も少なく、範囲も狭いからね。我々正規職員が今いない二人を含めて五人、そしてキミたちアルバイトが二人だけさ」


 すると、受付さんが雨合羽、そしてカードを二枚俺たちの前へ。


「こちら、作業着とゲートキーです。と……自己紹介がまだでしたね。私は、受付担当の佐藤と申します」

「あ、どうも」

「ど、どうもです」


 今はいない二人を合わせて五人か。

 ガンモ課長、受付の佐藤さん、清掃人の朱美さん。そしてバイトの俺とハイジ。

 カードキーを手にすると、ガンモさんが言う。


「一応、ダンジョン清掃人はダンジョンの出入りが自由になっている。それと、特殊なアンテナがダンジョン内に設置されているので、スマートフォンも使用できる。興味があるなら、ゲート付近ならダンジョン内の見学も可能だぞ」

「やった……!!」

「それと、ハイジくん。キミは水のエレメント適性があるようですね。よろしければ、魔法の指導もしましょう」

「あ、はい。じゃあ、せっかくなので」


 こうして、俺はダンジョン清掃人のアルバイトとして、雇ってもらうことになった。


 ◇◇◇◇◇


 ハイジと別れ、俺は家に向かって歩いていた。

 大学から自宅までは徒歩で一時間ほど。今日の稼ぎなら教習所代も何とかなるし、バイクも買えそうだ。バイクは……両親の遺産で買おう。勝手な考えだけど、両親からプレゼントしてもらったって考えると、嬉しく感じる。

 適当に食材を買い、家がある住宅街に入り、家の前まで到着し……。


「あ……」


 俺の家の隣に、誰かいた。

 赤いツインテール、シンプルなワンピースを着た、俺と同い年の女の子。

 炎堂カナデが、ドアノブに手をかけていた。


「……あれ、逢魔」

「カナデ、だよな」


 ダイバーの憧れ、日本に所属するダイバーで、火属性最強。クラス『斧戦士(アックスウォリアー)』で、登録者五百万人超えの配信者……そして、俺の幼馴染。

 俺の感覚では、実に十年ぶり。

 異世界転移前は、最後に会ったのは両親の葬式の時。でも……今はこの世界がダンジョンに支配されており、カナデも有名な配信者としてずっと活躍しているので、どれぐらいぶりなのかわからない。

 

「えと、久しぶり」

「うん」

「その……元気か?」

「まあ」

「そっか。じゃ」

「……うん」


 何を話せばいいのかわからない。

 幼馴染……昔は毎日、喋らない日はないくらい一緒にいたけど。

 今は、距離感がわからない。


「待って」

「……ん?」


 家のドアノブに触れた時、声をかけられた。

 カナデを見ると、ツインテールを指でクルクル巻きながら、俺を見ずに言う。


「その……おじさん、おばさんのことだけど」

「ああ、大丈夫。俺はもう、元気だから」

「そう……明日、入学式だよね」

「だな。お前は、忙しいんじゃないのか?」

「まあね。でも、大学生活の始まりだもの。入学式では挨拶もするしね」

「そっか」

「あの、さ……逢魔、ダイバーに興味ないの? その、おじさん、おばさんのことがあったし、あんたもそろそろ、エレメント適性受けたら?」

「ああ、今日行ってきた。俺、無属性だよ」

「……え」


 カナデは目を見開いた。そして、小さく「そ、そう」と呟いた。


「今は何とかなるけど、遺産だけじゃ生活できないからな。清掃人のアルバイト、することにした」

「え……清掃人!? 嘘」

「ほんとだよ。今日、正式採用された。ほれ、ゲートキーに、身分証明書」

「……ほんとだ」


 ゲートキーに、身分証明書を見せると、カナデはため息を吐いた。


「はあ……ねえ、あんたさ、清掃人じゃなくて、うちのチームで働かない? その、事務所の人手が足りなくてさ」

「……事務所?」

「うん。あたしのチーム、『ドレッドノート』の事務所。都内にあるのよ」

「…………」


 事務所ってことは、書類仕事かな。

 デスクの前で、ひたすら書類仕事をする自分を想像する。


「それって、ダンジョンには入れないのか?」

「そりゃそうよ。無属性がダンジョンになんて入ったら、すぐ死ぬわ。清掃人なんて、安全な場所で、ダンジョンの自己修復機能が働かない場所で掃除する仕事でしょ? お金が必要なら、あたしのところでも」

「悪い、もう採用されたし断るよ」


 そもそも、金も必要だが一番は『ダンジョンに入ること』だ。

 ダイバーギルド本部で感じた嫌な気配……恐らくあそこには、世界崩壊に関わりのある『コア』がある。ダンジョンに入り、コアを何とかしないと。

 書類仕事なんてやってる場合じゃない。

 カナデはムッとして俺から顔を反らして言う。


「そ、まあいいわ。一応、席は空けておくから……気が変わったらいつでも」

「ああ、その時は」

「じゃ……おやすみ」


 カナデは家に入った。

 俺も自分の家に入る。リビングの電気をつけ、買って来た食材を冷蔵庫に入れる。

 風呂に入り、適当に食事を作って食べ、そのまま地下室へ向かった。

 

「地下室……楽器部屋だけど、今はちょうどいい」


 父さんと母さん、実は音楽が好きで地下に防音室を作ったのだ。俺も子供の頃、地下で父さんからドラムやギターを習ったり、母さんからピアノを教わったりもした。

 今はもう使っていない。楽器類は全て処分し、今はタダの広い部屋だ。

 地下室のドアをしっかり閉め、誰も入ってこれないようにした。


「『解放(リリース)』」


 右手を前に出し、自分で決めた言葉のスイッチを入れる……すると、右手の前に魔法陣が浮かぶ。

 その魔法陣に手を突っ込み、中に収納してあるアイテムを取り出した。


「……やっぱり、精霊、神獣、魔獣とのパスは切れてる。デッラルテで契約した召喚獣は一切呼び出せない、か……」


 俺が召喚された時に得た能力、『召喚(コール)』。

 契約を交わすことで、あらゆる生物を召喚できる。デッラルテでは数多くの召喚獣と共に、いくつものダンジョンを踏破した。

 

「あるのは……デッラルテで手に入れた聖剣、魔剣、ダンバンの作った剣に、シャンティアの作った装備品。アイテムが大量にあるな……」


 魔法陣の中を漁る。

 これから俺は、ダンジョン調査をする。そのために必要なものを今のうちに探しておく。

 エルフのシャンティアが作った装備品やアイテムがあればなんとかなる。


「武器は……増殖剣があればなんとかなるか。いちおう、『切札』もあるし……それに、武器だけじゃない。俺にはデッラルテでの経験もある」


 問題は、俺だ。

 

「ダンジョンに入るのに、このままってわけにはいかないか……」


 俺はダンジョン清掃人としての身分で、ダンジョンに入ることはできる。

 でも……ダンジョン内で、他の誰かに見つかるのはまずい。できれば『久世逢魔』じゃない、ダイバーとしての仮の姿が必要だ。

 そう思い、アイテムを漁っていると。


「…………あ」


 小さな腕輪を見つけた。

 腕に付ける、シルバーのリング。

 それは、シャンティアとダンバンが作った、アイテムだった。


 ◇◇◇◇◇


 かつて、デッラルテには二人のドワーフ、エルフがいた。

 二人とも、伝説レベルの職人だが……俺が何となく話した『特撮ヒーロー』と『魔法少女』に食いつき、毎日しつこく話を聞いてきたのだ。


『おいオウマ、お前の世界のヒーローの話を聞かせんかい!! それを参考にカッコいい鎧を作ってやるぞ!!』

『飲んだくれのデブドワーフはあっち行ってなさいよ。それよりオウマ、魔法少女の話、続き聞かせなさいよ!!』

『お、おう……二人とも、落ち着けよ』

『フン、チビエルフ、あとにせんか!!』

『そっちが後にしなさいよ!! デブドワーフ!!』


 顔を寄せて睨み合う二人。

 俺は二人を引き離して言う。


『喧嘩すんなって。それよりさ、二人に頼みたい装備あるんだって。隠密用の鎧と、姿を誤魔化す道具!!』

『む……そうだったな。ふふん、カッコイイ鎧を作ってやる!!』

『そうね。姿を誤魔化すアイテム……魔法少女みたいに変身させてあげる!!』

『い、いや、普通ので』


 それから、どういう経緯だったか……『姿を誤魔化すための装備品』で意気投合した二人が作ってくれたのが、この小さなリングだった。

 腕に付け、言葉の認証でスイッチが入る。特撮、魔法少女に影響を受けた装備だった。


 ◇◇◇◇◇


 俺は、二人が作った小さな腕輪を見た。


「ダンバン、シャンティア……はは、お前らが意気投合して作ったんだっけ、これ」


 細いリングは、腕に付けるとアクセサリーにしか見えない。

 

「遺品になっちまったな……」


 このリングだけじゃない。異空間にある全てが、デッラルテの遺品だ。

 そして、異空間を漁り……驚いた。


「え、これ、まさか……」


 そこにあったアイテムは、俺も驚きの物だった。

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