第20話
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炎堂 カナデ
霧氷 刹那
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ダイバーギルド本部の上層階に、会議室がある。
現在、そこにカナデと刹那はいた。
チーム『ドレッドノート』と『ワルキューレ』の代表として、そしてカナデたち以外にも、国内でも有名なS級チームのリーダーが数名いる。
そして、ダイバーギルド本部、本部長でもあり、国内五指に入る強さを持つS級ダイバー、円城寺八房が言う。
「では、始めよう」
八房は、視線を二人の外国人……『ハンドレッド・ランカー』に向ける。
「アメリカ、イギリスより正式な依頼があり、キミたちを招いたわけだが……全ての事情はキミたちから聞けと聞いている。さっそく、説明をしてくれるかな」
「オーケー」
「……めんどくさ」
クラッシュはやや暑苦しい笑みを、アウローラは冷めた返事だった。
「オレらがここに来たのは、表向きは『日本にある高難易度のダンジョンを踏破する』って話だ。ネットでもいくつか記事が出ているが、まあそれはそれでいい。実際のところは……」
「『世界の危機』」
アウローラは、腕組みをしながら適当に言う。
その言葉に、カナデと刹那は目を見張り、他のダイバーたちは「何言ってんだ?」みたいな目をした。
八房は、カナデと刹那を見て言う。
「世界の危機。カナデ君、刹那君からも報告があったね」
「あ、はい。えーと……」
「アトラトル。彼がもたらした情報です」
刹那が言うと、アウローラは「へえ」と少し微笑む。
「動画で見たわ。アトラトル……剣を無数に放つ、投槍兵みたいなやつね。『投槍器』……フフ、日本にも面白いやついるわ」
クラッシュが言う。
「ま、ちゃんと理由はある。まず……アメリカで最大のダンジョン、『ヘルオアヘブン』……この最上階と、最下層に、とんでもない魔獣がいるのは知ってるな?」
「うむ、当然だ。地球最強の魔獣と言われている」
「そいつらが、捕食された」
静寂に包まれた。
捕食。喰われた、ということを理解するのに納得するまで時間が必要だった。
クラッシュは言う。
「オレは、地下にいた捕食者を討伐すべく、チームと、アメリカにいる強者を集めて地下に向かった。だが……結果は全滅。その魔獣に、みんなやられた……もちろんオフレコだぜ?」
誰も、何も言わない。
アウローラも言う。
「イギリスでも同じ。国内最難関のダンジョン、その最下層にいるボスが捕食されたわ。しかも……驚いたことに」
「そいつらは、知能があるんだ」
アウローラに被せるようクラッシュが言うので、アウローラはクラッシュを睨んだ。
「オレが生きてここにいる理由。そいつは……生かされたのさ。そいつは自分のことを『永久の魔術師』って言っていた。地球は、滅びの時を迎えるってな」
「イギリスも同じ。生かされて偵察隊のドローンカメラに『愉悦の遊者』ってやつの声が入ってた。地球は楽しい時を迎えることになる、って」
初房は目を細め、クラッシュとアウローラに言う。
「つまり、それに類する魔獣が、日本にもいると?」
「ああ。地球で最も過酷なダンジョンは十二。アメリカ、イギリスだけじゃない。それら十二のダンジョンにいるボスが、悉く捕食された……日本でもそうなんだろう?」
「…………その通りだ」
八房の答えに、カナデも刹那も、日本のダイバーたちも驚いていた。
カナデは言う。
「ほ、本部長……聞いてませんけど」
「まだ伝えるべきではなかったのだ。だが……カナデ君、刹那君の報告から間違いないとは思っていた。近く、ダイバーたちに通達する予定だった」
「ほんっと、お役所仕事」
アウローラが馬鹿にするように言う。
刹那は言う。
「それで、なぜ日本に?」
「決まってるじゃない。その最下層に住む魔獣を討伐するためよ」
「……答えになっていません。なぜ、自国を放って日本に?」
「そんなの、日本のダンジョンが、世界最難関ダンジョンの中で、最もレベル低いからに決まってるわ。最もレベルが低いなら、そこに住む魔獣もレベル低いでしょ?」
その答えに、刹那は目を細める……だが、アウローラは刹那以上の圧を向けた。
「何、やるの?」
「……いえ」
桁が違う。
エレメント能力者としても、戦力も、全て。
日本のレベルが低い。そう言われたが、言い返せない。
「まずは、日本の最難関ダンジョンを攻略して、地球に突如として現れた十二の魔獣……これらを倒すわ」
「……ねえ刹那、アトラトルが言ったこと、これだよね」
「そうね……」
世界の危機。
アウローラは、カナデと刹那の話す内容に少し興味を持っていた。
動画で見た、『アトラトル』という存在。
「……ねえ、ヤツフサだっけ」
「……ええ、なんでしょう」
「アトラトルだっけ。そいつ、呼べないの?」
「……彼の素性は不明です。調査をしていますが、何も」
「はっ、自国のダイバーも管理できないなんてね……」
八房は、何も言い返せなかった。
クラッシュは空気を変えようと、手をポンと叩く。
「とにかく。日米英、合同のダンジョン調査だ。このダンジョンの最下層、恐らく五百階層……そこを目指して、、魔獣を討伐だ」
こうして、日本、アメリカ、イギリス合同のダンジョン調査が始まるのだった。
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久世 逢魔
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清掃ギルドに到着するなり、朱美さんが言った。
「あら、ちょうどいいところに。来て早々悪いけど、清掃依頼が入ったわ。着替えて集合ね」
「「はい」」
挨拶もそこそこに、俺とハイジは着替え、掃除道具を手にして朱美さんと一緒にダンジョンへ。
清掃区画が増えてから、かなりの頻度で呼ばれている。
俺はすっかり魔獣の解体係となり、ハイジは修繕、清掃がメインになっていた。
今日担当するエリアは広く、魔獣もデカいので三人で掃除をする。
雑談をしながら、俺は朱美さんに聞いてみた。
「最近、忙しいっすね」
「そうね……スタンピードが発生したから、清掃人の重要さを上がしっかり理解してくれるとありがたいんだけど」
朱美さん曰く、俺とハイジが遭遇したスタンピードは、ダンジョン内の調査の甘さと、清掃という重要さを理解しなかった上層部の責任が重いということだった。
ハイジは亀裂にパテをうめながら言う。
「清掃人、やっぱり重要なんですね」
「ええ。規模が縮小されたばかりだけど、スタンピードの件があったせいでね……課長が上に掛け合って、また予算を多く取れるようになったの」
ちなみに、サブさんも今日は別の現場で清掃をしているようだ。
まあ、予算が増えることはありがたい。
「そうそう。二人とも、『ハンドレッド・ランカー』の話、聞いた?」
「あ、さっき会いました。ハイジのヤツ、興奮で気絶しちまって」
「お、逢魔くん、言わないでよ~」
清掃人の仕事は重要だが……俺は、何気なく会話できるこの仕事が好きだった。
だからこそ、守りたい。
「さて、ここの清掃が終わったら、サブさんのところへ手伝いに行きましょうか。それで、今日のお仕事は終わりね」
「はい!!」
この日、サブさんの手伝いを終えたあと、課長のガンモさんが「せっかくだしメシでもどうだい?」というので、清掃ギルドのみんなで居酒屋へ行くことになった。
俺、ハイジはジュースだったが……こういう、バイト先の人たちと食べるメシも美味い。
この日常を守るために、これからも頑張ろう。




