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現代ダンジョン最底辺の清掃員は今日も静かに世界を救う ~異世界から帰還した元勇者の二周目無双攻略記~  作者: さとう
第一章

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第1話

 改めて、俺は自分の状況、そして何が起こっているのかを整理することにした。

 水を一気飲みし、家の中を歩き回る。

 キッチン、リビング、風呂、トイレ、両親の部屋……仏壇。そして二階にある自分の部屋に、いくつかの空き部屋。


「俺の家……」


 俺は、両親の写真が飾られている仏壇の前へ。

 もともとは夫婦の部屋だったが、今は仏壇が置いてある。

 線香をあげ、両手を合わせる。


「……ただいま、父さん、母さん」


 最初にやるべきことだったのに、俺は悲しみから両親へ帰還の報告をするのを忘れていた。

 俺は、父さんと母さんの写真を見て言う。


「はは……そういや、二人が死んでまだ二か月くらいだっけ」


 大学入試が終わったある日……両親が仕事帰り、酔っ払い運転の犠牲になり亡くなった。

 俺は十八歳にして、この家の主となった。合格した大学は家から通えるし、バイクの免許も取ろうと思っていた……そんな時、俺は異世界に召喚された。

 まさか、大学入学前に異世界に行くことになるなんて、思いもしなかった。

 俺は仏壇の前に座る。


「いろいろあったよ。異世界で十年過ごしてさ、二十八歳になったんだ。酒も飲んだし、友達もいっぱいできた。それに俺、めちゃくちゃ強くなったんだ」


 異世界召喚。

 俺は、異世界『デッラルテ』を救うため、聖女フェリアナによって召喚された。

 異世界人には、特異な力が宿る。その力をもち、デッラルテを救うという神託によって。


「……でも俺、救えなかったんだ」


 俺は、デッラルテを救えなかった。

 そのまま消滅するデッラルテと運命を共にしたかった。でも……俺は、戻って来た。

 仲間を全て死なせ、愛する者を死なせ、救いたかった世界を死なせた。


「……父さん、母さん。俺……情けないよね。救えなかった、守れなかった……何もできなかった。俺だけ、のうのうと生き残って、戻って来て……」


 涙がこぼれた。

 父さんがいたら、『情けない』というのだろうか。母さんがいたら『あなたが生きててよかった』というのだろうか。

 俺は涙をぬぐい、立ち上がる。


「……ごめん。俺は今、生きている。だから……ちゃんと死んだみんなのぶんまで生きて、苦しむよ」


 もう一度、仏壇に手を合わせ……俺は自分の部屋に戻るのだった。


 ◇◇◇◇◇


 部屋に戻り、俺は今の状況を整理する。

 テレビを付けると、流れてくる内容は『ダンジョン』や『ダイバー』という、あまりにも馴染み深く、同時にこの世界では馴染みのない言葉。

 俺はテレビのチャンネルを変えながら情報を整理する。


「ダンジョン。テレビで当たり前のように放送してるってことは……最近発見されたとかじゃなさそうだ。CMもやってるし、なんだこの……『配信者』とかいう連中の特集までやってる。それに、チームってなんだ?」


 俺は歯噛みする。

 ダンジョン。そのせいで、異世界デッラルテは崩壊、消滅した。

 地球ではあり得ない、存在しないはずなのに……なんで当たり前のように存在するんだ?


「もっと詳しく知りたいな。あ、そういえば……」


 ふと、思い出す。

 窓を開けると、隣の家の窓が見える。

 カーテンが引かれ中は見えないが、その部屋の持ち主はよく知っている。


「カナデ、いるかな……」


 スッと目を細め、気配を探る。

 異世界デッラルテで得た技能の一つ、アサシンのクロから教わった『探知』だ。

 呼吸、心臓の音、衣擦れなどの『気配』を五感で察知する技……それを使い、隣の家に住む幼馴染、カナデの気配を探る……が。


「……いないな。おばさんはいるけど」


 カナデの母親が、洗い物をしているのがわかった。

 窓を閉め、思い出す。


「確か、カナデのやつは……俺と同じ大学に合格決まってたな。それに……父さん、母さんが死んだときも、泣いてくれた」


 最近では、年頃なのかあまり喋ることもなかった。子供の頃は窓伝いに互いの部屋を行き来するくらいの距離感だったけど。

 

「仕方ない。町に出て本屋でも……」

『ビッグニュースです!! 日本が誇るトップチーム『ドレッドノート』が、国内最難関のダンジョンに挑戦、踏破したとの情報が入りました!! これにより『ドレッドノート』は世界ランク入り!! 日本人としての快挙となります!!』


 ふと、テレビに視線を映し……俺は目を見開いた。


「……か、カナデ!?」


 テレビに映り、手を振っていたのは……隣家に住む幼馴染、炎堂カナデだった。

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