第16話
三百八十階層の通路は、改めて見るとかなり入り組んでいる。
俺はずっとタルに乗っていたし、魔獣などもオート設定でメギストスを発射していたから気にもしなかったけど……かなり魔獣が徘徊しているな。
まあ、それだけの話だが。
「召喚、射出」
魔法陣から発射されるメギストスが、魔獣を蹂躙する。
基本は一発、ゴブリンなど頭に剣が刺されば死ぬ。たまに象みたいな大きい魔獣なども闊歩しているが、三十本も剣が貫通すれば死ぬ。
「……け、剣、何本あるの」
三上がボソッと言う。質問というより、背後に浮かぶ無数の魔法陣から大量に剣が出てくるから、ストックが気になるんだろう。
「なくなることはない。それより……いた!!」
「あれは……チーム『ワルキューレ』の、新藤舞さんと、獅童蘭寿さん!!」
ショートヘアと、ツインテールか。
だが、かなり酷い状態だな。
ショートヘアの女は片腕がない。ツインテールの女も構えた盾がボロボロだ。
魔獣は……オーガに、デカいトラ。トラに腕を食いちぎられたようだが……へえ、目が死んでいない。
「オラァ!! あたしはまだまだヤれるぞ!! きやがれええええええ!!」
大した闘志だ。でも、あのままじゃ死ぬ。
「タル」
『ガウウウウ!!』
タルは尾を伸ばす。剣となった尾が魔獣を薙ぎ払った。
「『召喚、治癒剣パメヤ』
異空間から二本の霊剣を放ち、二人に突き刺す。
そして、そのまま剣を操作して浮かび上がらせ、走るタルに追従させる。
「なんだなんだぁ!? あ、お前!!」
「静かにしてろ。傷の治療をしながら運ぶ」
「あ? あ……腕」
ショートヘアの女……マイだっけ。マイの腕は、少しずつ再生していた。
やっぱりコピーした剣じゃ回復力も少し落ちる。まあ、腕も生えるだろう。
もう一人、ツインテールの女は大人しく……いや、気を失っていた。
『ワウ!!』
「ん? あれは……」
「鉄之助!!」
堂島だ。
堂島は、折れた大剣を構えていた。かなり出血している……周りにはブタの群れ。
するとタル、舌なめずりをした。そういやさっき食ってたっけ。
「鉄之助ぇぇぇ!!」
「っ!! かれん……!?」
俺は治癒剣を放ち、堂島に突き刺して浮かべる。
そして、魔法陣から一気にメギストスを発射し、ブタを一掃した。そして、一掃した一匹をタルは咥えて走り出す。仕方ないので亜空間に収納してやった……あとで焼いて食わせるか。
「お前……」
「喋るな、詮索と質問はなし。傷の治療をするから大人しくしてろ」
そして、タルは何度か通路を曲り、広い空間に飛び込んだ。
さっき俺が戦ったボス部屋と同じくらい広い。そして、部屋の中央には……なんだあれ。
腕が八本、足が八本、大きな顔に目が八つあるバケモノだった。
そいつを相手に、轟、カナデ、霧氷刹那、ポニーテール女が戦っている。
「カナデ!!」
「かれん!? って……えええ!?」
「お嬢!!」
「マイ!? って……」
そりゃ驚くか。いきなりデカい犬が飛び込んできたんだもんな。
タルが着地すると同時に俺は跳躍。治癒剣パメヤを五本投擲し、カナデたちに刺す。
そして、一気に後方へ。
入れ替わるように、俺が怪物の前に立つ。
『ギシャアアアアアアアアアアアアアアアア!!』
「武装召喚、固有武器。『炎岩剣ネロペ』」
俺の頭上から深紅の魔法陣が展開し、溶岩をそのまま剣にした大剣が落ちてきた。
直径三メートル、横幅一メートルある、溶岩に住むファイアリザード族の秘宝。扱えるのは溶岩の妖精に認められた者だけ。
当然、それは俺のこと。
俺はネロペの柄を掴む……重さは、その辺に落ちている棒切れと変わらない。
『シャガアアアアアアアア!!』
「やかましい!!」
八本腕が俺に向かって伸ばされたが、俺はネロペを一閃……灼熱の斬撃が、ネロペを蒸発させた。
俺は剣を収納。振り返り、カナデたちを見て言う。
「誰も死んでないな……よし、戻るぞ」
「「「「「「「…………」」」」」」」」
全員、黙り込んでしまった……あれ、誰も死んでないよな。
俺は剣を差したまま全員を浮かべ、タルに案内を任せポータルへ。
百七十階層に転移し、全員に刺した剣を抜く。ショートヘア女の腕もしっかり生えたようだ。
全員を見るが……かなりボロボロだ。
武器は壊れ、鎧は砕けている。
カナデは、俯いたまま俺に言う。
「……その、ありがとう。助けてくれて」
「気にするな。それと……お前たちには、まだ早い。もっと鍛えて、装備を整えないと死ぬぞ」
「……そうですね。あの、お礼を……」
カナデだけじゃなく、霧氷刹那に向かっても言ったつもりだ。
轟ですら、自分の無力に打ちひしがれて黙りこんでいる。
俺は少し考えて言う。
「……さっき俺が言ったこと、上層部にちゃんと伝えてくれ。それだけでいい」
「「…………」」
すると、カナデは言う。
「あの!! アトラトル……お願い、あたしたちのチームに入って指導してくれない? 仲間になってほしいの!!」
「なっ……カナデさん!! あの、アトラトルさん。私たちのチームに入ってくださいな。どうか、お願いします!!」
二人が頭を下げる。
だが、俺は首を振った。
「俺にはもう、仲間がいる。その申し出を受けることはできない」
「「……え」」
「大事な仲間だ。俺は、そいつらと一緒に戦う。お前たちは、お前たちにできることを」
そう言って、俺はタルに乗ってその場を後にするのだった。
仲間たちの遺した全てが俺の仲間。足手まといは、いらない。




