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現代ダンジョン最底辺の清掃員は今日も静かに世界を救う ~異世界から帰還した元勇者の二周目無双攻略記~  作者: さとう
第一章

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第13話

 大学で講義を終え、ハイジと一緒に清掃ギルドへ。

 着替えるなり、課長のガンモさんが俺たちを呼んだ。


「実は、清掃区域が増えてね。E7区画だけじゃなく、A~E区画全体の清掃を担当することになった!!」

「「……え」」


 ダンジョンの区画は、細かくアルファベットで分けられている。

 1階層ごとに二十六の区画に分かれ、それぞれアルファベット管理されている。

 俺たちの担当するのがE7区画。7階層にあるE区画だが……今回、E区画全域の担当となった。


「あ、あの……A~E区画って確か、50階層までありましたよね」

「うむ、その通り」


 五十階層より下は、番号だけで管理されている。

 五十一階層、五十二階層……とだけ。マップはあるが、特に細かく区分けされていない。

 ガンモさんは苦笑する。


「いやあ……清掃ギルドも人員不足でねぇ。組織の再編成が行われ、清掃ギルドの実力者はみんな、五十階層より下の階層の清掃を担当することになった」

「実力者ってことは……サブさん、朱美さんは?」

「二人はここの所属だよ。担当区画が一気に増えたからね……今は二人で、清掃個所の確認に向かった。依頼が入れば、キミたちにも出動を頼むよ」

「「は、はい」」


 呼び出されるまでは待機なので、リュックの中をチェックする。


「お、逢魔くん……緊張するね」

「まあ、汚れ落として、解体して、素材持ち帰ればいいだけだろ」

「あと、修繕ね。まあ……大丈夫かなあ」


 ハイジはスマホをチェックする。


「清掃依頼が入ったら、地図を見て現地に行けばいいんだよね。そこに、朱美さんかサブさんがいる……」


 すると、電話が鳴る。

 佐藤さんが受け、丁寧な対応をして電話を切ると、俺たちに言う。


「二人とも、清掃依頼が入りました。C2区画でサブさんが待っています」

「「わかりました」」


 リュックを背負い、俺とハイジはゲートを通って進む。

 今回はC2区画。Cエリアの2階、修復機能がない場所だ。

 ハイジはスマホを見てナビを起動。俺はその後ろをついていく。

 そして、特に迷うことなくC2区画に到着。フル装備のサブさんがいた。


「お疲れ様です。いやはや、申し訳ございませんねぇ。アルバイトのお二人に、苦労をかけまして」

「い、いえいえ。あの……仕事って」

「はい、これです」


 部屋には、ゴブリンの死骸が転がっていた。

 けっこうな損壊っぷり。頭を叩き割られ、四肢が転がっている。傷を見るに……剣と魔法かな。

 ハイジは青くなり、顔を背け口を抑えた……ああ、内臓や脳ミソ飛び出してるゴブリン、臭いもあるしさすがに気持ち悪いか。


「低レートの魔獣は、素材など放棄するパターンも多いです。今回のゴブリンは、全て廃棄で構わないそうです。では、清掃をお願い致します。私はこのまま別エリアの確認に向かいますので」


 サブさんは行ってしまった。

 するとハイジ、我慢できなかったのか……部屋の隅で嘔吐した。


「おい、大丈夫か?」

「……だ、だいじょぶ。うえっ」

「無理すんな。ほれ、水。まずは俺がゴブリンの片付けするから、お前は休んでろ」

「で、でも」

「いいから」


 俺はゴブリンの死骸、飛び散った内臓や四肢を集める。

 臭いもあるし、内臓は気持ち悪い。だが……デッラルテでの経験で、俺は慣れていた。

 内臓や血をモップで寄せ集め、薬液をかけて火を付ける。


「ゴブリン。デッラルテの魔獣と同じか……」


 バオファオが現れたことで、俺はこの世界のダンジョンが、デッラルテと同じと確信した。

 死骸を焼き終え、ハイジと二人で清掃開始……すると、朱美さんが来た。


「申し訳ございません、どちらかおひとり、D9区画への清掃を担当していただいてよろしいでしょうか? 素材は破棄、清掃を済ませたら戻って構いませんので」

「あ、じゃあ俺が行きます」


 チャンス。

 ハイジに部屋の修繕、清掃を任せ、俺は一人でD9区画へ向かう。朱美さんは別のエリアの確認、清掃があるらしくすぐに行ってしまう。

 D9区画へ到着。手早く清掃を済ませ、俺は周囲を確認しながら荷物を異空間へ収納。

 そして、異空間で留守番をしていたタルタリヤを召喚。


「『偽装』……よし、調査を開始するぞ、タル」

『わう』


 向かうは、百七十階層……その先にある、バオファオが転移してきたポータルだ。

 

 ◇◇◇◇◇


 以前、百七十階層に向かった時……ポータルはA区画にあった。

 スマホを確認しながら向かう。特に封鎖などされておらず、そのままポータルを使用して百七十階層へ。

 ポータル部屋から出ると、黒いトラみたいな魔獣が何匹かいた。


「『召喚(コール)』……ん?」

『ぐるるるるる……!!』


 メギストスで一掃しようとしたが、タルが前に出て唸り声をあげていた。

 毛が逆立っている。精一杯の威嚇……なんとも可愛らしいと思っていた瞬間。


『ぐぅるルルルルル……ガァルルルルル!!』

「うおっ」


 なんと、タルが子犬から馬……いやもっとデカい。水牛並みの大きさへと変わった。

 灰銀の毛並み、長く太い尾、鋭い牙、そして深紅の隈取……間違いない、『聖犬』だ。

 デッラルテの聖獣のひとつ。神の僕であり、魔獣とは一線を画す存在だ。


「タル、やれるのか?」

『ガルルル!!』


 任せろ、と言っているように聞こえた。

 俺は展開していた魔法陣を消し、一歩下がる。

 すると、タルが黒いトラに飛び掛かった。


『グアァル!!』

『ガオオオオ!!』


 おお、黒いトラの喉に喰らい付いて噛み千切った。そして、背後から飛び掛かって来たトラを後ろ足で蹴り飛ばし、さらにジャンプして壁を蹴って距離を取る。

 そして、なんと尾が膨れ上がり、さらに伸び……先端が『剣』となり、トラを両断した。


「お、尾が剣になった……? まさか、俺の異空間にいたから影響受けたのか?」


 テイルブレード。

 鋭さ、速度共に申し分ない。この黒いトラ程度だったら、何百匹いても問題ないだろう。

 十匹ほどいたトラをあっさり倒し、嬉しそうに俺に顔を寄せて来た。

 顔を撫でると目を細め、猫みたいにゴロゴロ喉を鳴らす。


『グルルル……』

「はは、いい毛並みだな。お前の母さんそっくりだぞ?」


 聖犬ルフィアーナ。彼女がいれば、タルの成長を喜んだはずだろうな。

 タルはしゃがむと、俺に乗るように鳴く。

 

「なるほど。こりゃいいな……走るより楽だ」


 タルの背に乗る。馬よりも乗りやすいかもしれん。


「よしタル。このダンジョンの最深部を目指して調査するぞ。恐らくこのダンジョンに、核の一つがある……それを破壊するのが目標だ」

『ワウ!!』

「俺と、お前でやるんだ。デッラルテは救えなかったけど……この世界はまだ手遅れじゃない。俺たちでやるんだ」

『……くぅん』


 一人じゃない。

 タルと一緒なら、きっとできるはず。


 ◇◇◇◇◇

『ワルキューレ』

 ◇◇◇◇◇


 霧氷刹那は、チーム『ワルキューレ』の三人と一緒に百七十階層にいた。


「なあお嬢……マジで行くのか?」


 そう言ったのは、ショートヘアにガントレットを装備した『格闘家』の新藤舞。A級ダイバーであり、チームでは偵察、斥候を担当する。

 やや男勝りなところがある活発な少女だ。

 刹那は頷く。


「ええ。ポータルの調査……戦闘はしないわ。三百八十階層へ続くポータルなんて、そうそうないからね。使えるようになれば、四百階以降の階層へ続くルートが開けるかもしれないわ」

「しかし、お嬢様」


 ポニーテールの少女、獅童蓮華が刹那を止めようとする。

 蓮華は、つい先日SSレート登録されたバオファオこと『アガリアレプト』がまた現れることを危惧している。

 すると、背の低い、盾を背負ったツインテールの少女、蓮華の妹である獅童蘭寿が言う。


「お、お姉ちゃん……あの」

「ランジュ、あなたは黙っていなさい」

「あう……」


 ランジュは小さくなる。A級ダイバーであり実力もあるが、性格は引っ込み思案だ。

 刹那は、ランジュの頭を撫でながら言う。


「レンゲ。戦闘はしない、偵察のみ、魔獣がいたらすぐ逃げる。約束するわ」

「……お嬢様」

「そーそー、レンゲは心配しすぎだって。なーランジュ」

「え、えと……」

「マイ。お前はもう少し緊張しろ。我々は一度、全滅しかけたのだぞ」

「知ってるよ。でも、ダイバーギルドからもう依頼受けちまっただろ。三百八十階層のポータルのチェックと、できるならフィールドの設置、周囲の簡易調査……」

「そう。誰かがやらないといけないの」


 刹那が言うと、レンゲは観念したのか、小さくため息を吐いた。

 現在、四人は三百八十階層へ続くポータルの前にいる。

 このポータルを発見し、起動させた瞬間……『アガリアレプト』が現れ、戦闘となったのだ。

 今は、一時的に起動停止をしている。


「ポータルを起動させることのできる、知能ある魔獣がいることにも驚いたけど……少なくとも、防御フィールド装置を展開しれ、気配隠蔽煉瓦を積めばポータルとしての機能はできるわ。今回は、フィールド装置の設置までできれば……」


 と、刹那は会話を止めた。

 目を見開き、三人の背後を見て硬直していたのだ。

 

「「「?」」」


 三人は、その視線の先を追って振り返る。

 そこにいたのは。


「……」


 白髪、赤髪、黒衣を纏い、仮面で顔を隠した何者か。

 つい先日、『ワルキューレ』と『ドレッドノート』を救った英雄、『アトラトル』がそこにいた。

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