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現代ダンジョン最底辺の清掃員は今日も静かに世界を救う ~異世界から帰還した元勇者の二周目無双攻略記~  作者: さとう
第一章

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第9話

 ポータル。

 転移魔法が付与された装置……でいいのか。外観は円形の透明な筒で、自動ドアみたいにガラス部分が開く。

 カナデたち、朱美さんは迷わず入り、俺とハイジは顔を見合わせる。


「ぽ、ポータル……ぼく、初めてだ」

「俺も。まあ、行こうぜ」

「う、うん」


 普通は緊張するのだろうけど……俺はデッラルテでも転移魔法で移動することは多かったし、特に気にしない。

 筒に入るとガラスドアが閉まり、何の脈絡もなく周囲が輝き、浮遊感……そして。


「到着ね」


 カナデが言う。

 周りを見ると、白い煉瓦で作られたような、そこそこ広い空間だった。

 ポカンとしているハイジを置いて俺は朱美さんに言う。


「ここが百七十階層ですか」

「ええ……私も来るのは初めてです」

「当然だろ。清掃人が来るような階層じゃねーよ」


 轟が言い、そのまま出口へ。

 三上が俺たちの前に来て言う。


「ちなみに、わたしたちの最高到達階層は二百十五階。ここら辺の魔獣は把握してるから安心して。まあ……今回の修復機能がないエリアは新発見されたエリアだからわからないけど……」


 そして、堂島がヌッと出てくる。


「……久世。お前が興奮して突進するような奴ではないとわかっているが、不測の事態というものもある。決してはしゃがず、前に出るなよ」

「わかってるよ。その言葉、俺より轟に言った方がいいんじゃないか?」

「……毎日言っている」

「お前も苦労してるんだな」


 轟はともかく、三上と堂島はまともそうだ。

 カナデはというと、朱美さんとスマホを見せ合っている。どうやらマップの確認をしているらしい。

 轟もそこに混ざっているが、カナデはうっとおしそうにしていた。

 俺は三上に聞く。


「なあ三上。轟のやつ、カナデに嫌われてんのか?」

「す、ストレートだね……うーん、嫌いというか、正太郎はけっこうボディタッチが多いのよ。その、わたしにもね……」

「イヤなら嫌って方がいいんじゃないか?」

「……あはは。言ってるんだけど、どうもスキンシップの意味、勘違いしてて」


 セクハラ的なタッチではなく、肩を回したり背中を叩いたり、頭を撫でられたり、距離が近かったりする程度のようだ……まあ、嫌な女子は嫌だろう。

 轟は、ああ見えて日本でもトップクラスのダイバーらしい。メディアの露出も多く、顔もいいのでファンクラブがあるとか。

 ちなみに、三上と堂島にもファンクラブがあるらしい。四人とも配信アカウントを持っているとかなんとか。


「ねえ、久世くん」

「ん?」


 三上がこそっと俺に言う。


「その、さ……カナデと幼馴染なんだよね」

「ああ。家も隣、部屋は窓から行き来できるくらいの距離だ」

「そっか……ねえ、正太郎とカナデ、噂になってるの知ってる? その……付き合ってるとか」

「そうなのか?」

「違うけどね。正太郎、自分の雑談配信で『カナデはオレに惚れてる』みたいなこと言って、それでネットで騒ぎになったことあるのよ。カナデ、それで怒っちゃってさ……」

「はぁ……お前ら、轟以外苦労してんだなあ」

「あはは……じゃなくて。それで、その……女の勘だけど、カナデは好きな人いるよ。もしかして、久世くんだったりして……」

「そりゃないだろ」


 俺は、キョロキョロしたり、床を触って珍しがったりしているハイジを見て言う。


「好きな人、か……はは、青春ってやつだな」

「え」

「おーい、そこの二人、行くわよ!!」


 カナデに呼ばれ、俺は歩き出す。


『逢魔』


 俺をデッラルテに召喚し、支えてくれた『聖女』……フェリアナ。

 俺も一緒に死ぬべきだった、今でもそう思わなくもない。

 でも……もし俺が死んだら、きっとフェリアナは悲しみ、そして怒る。

 たぶん『自分の世界を放り出して、逢魔は何やってるの!!』って、怒るかもしれない。

 だから、俺はフェリアナへの想いを胸に、この世界を救う。

 俺とハイジは朱美さんの前へ。


「二人とも、これから修復個所へ向かいます。道中、魔獣などの危険がありますが……決して『ドレッドノート』の傍を離れない、邪魔をしないように。命の危険がありますからね」

「「はい」」

「よし。じゃあチーム『ドレッドノート』、清掃人の護衛任務、いつも通りいくわよ」

「「「了解」」」


 それぞれ準備を整え、ポータル部屋から出るのだった。


 ◇◇◇◇◇


「おー……こうなってるのか」


 ポータル部屋の外は、かなり綺麗な空間だった。

 真っ白でツルツルした地面。まるでリノリウムの床みたいで、淡く発光しているのかとても明るい。

 それに、縦横の幅がかなり広い大型バスが並んで五台くらいは入って行けそうだし、高さも五メートル以上はありそうだ。

 すると、カナデが言う。


「ダンジョンは、一定の階層を超えると様式がガラッと変わるの。面白いでしょ?」

「ああ。ここ、ツルツルしてまるで人工の迷路だな」

「それ、あたしも同じこと思ってた。ふふ」


 カナデが笑い、俺も笑った。

 昔と同じ笑い方だ。カナデも同じことを思ったのか、どこか照れたようにそっぽ向く。

 すると轟が言う。


「おい清掃人、邪魔だから下がってろよ。ここはダイバーの聖域だぜ」

「……はいはい」

「轟。いちいち高圧的に言うなって何度言えばわかるのよ」

「どこが高圧的だっての。オレぁ普通のこと言っただけだぜ」


 轟はそう言うと、斥候の役目なのか行ってしまった。

 三上はカナデと並び、堂島は俺たちの後ろにいる。なるほど……ちゃんと守るための布陣だな。

 ハイジの隣に並び、朱美さんの背中を見ながら歩くと、カナデが言う。


「ラッキーね。魔獣がいない……もしかして。ねえ、かれん」

「ええ、わたしもそう思う。鉄之助は?」

「……同じだ」


 三人が頷く。

 ハイジは首をかしげていた。


「えと、どういうこと?」

「先客がいるんだろ」


 自然にそう言うと、カナデたち三人、朱美さんが俺を見て驚いていた。


「え、どういうこと?」

「魔獣がいるはずなのにいないんだろ? だったら、先にこのエリアに来たチームが討伐したんだろ。ダンジョンの魔獣って復活するんだよな?」

「え、ああうん。二十四時間で復活するってデータがあるみたいだけど」

「だったら、二十四時間以内に、この階層を通ったチームでもいるんじゃないか? まあ、ついさっきの可能性もあるし、二十三時間前に倒してあと一時間で復活する可能性もある。運がいいなら、今のうちに進むべきだな」


 そう言うと、カナデが驚いたような顔をして言う。


「……逢魔の言う通りだけど、あんたすごいわね」

「何が? 思ったこと言っただけだぞ?」

「……はいはい。ふふ、じゃあ朱美さん。このまま新エリアに向かいます」

「はい、よろしくお願いします」


 俺たちは、スマホの地図を見ながら進むカナデの後について行くのだった。


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