友を送る
「友よ、また会おう。住み処が決まったら、使い魔に連絡させる」
「うむ。また会おう」
ザバラキィーンが、異国へと去る。この国で吸血鬼族の居場所が、無くなりつつあるためである。
「ザバラキィーンよ、行くあてはあるのか?」
「まずは、極東の古き都へ。その先は、後で考えるつもりだ」
「左様であるか」
「うむ」
「では」
「ああ、いずれまた」
ザバラキィーンとは、かくのごとき会話をし、別れたのであった。
ニンゲンの社会が、異質な者を受け入れる柔軟さを失うにつれて、ザバラキィーンのような存在は、流浪を強いられるのである。それは、冷血人間である私にも言えることであった。
私は人付き合いが苦手である。されど、他者と交流することが嫌いなわけでもないのである。
仲良くするべく人々に近づき、人付き合いの拙さ故に適切な対応が出来ぬ。結果、人々は去って行くのである。
あるいは、私の冷血さをどこか本能的にさとり、去って行くのであろうか。
……そうして、時に人付き合いをすることが面倒になり、独りでのたうつのである。
そんな時は、他者と交流することが、たまらなく苦痛なものに感じられるのであった。
つまり、足元でゴロゴロと転げ回るまつ黒い猫に、独りにしてくれと云いたいのである。
「ニャラル7世殿、しばらく独りで考えたいのであるが……」
……のごぬわあぁある!
「……クフン。冷血人間ごときが、考えたいなどとは、片腹痛いのう」
ニャラル7世は、叫び声をあげて転げたあと、鼻で笑ってからそんなことを言うのであった。
「どうせ根暗なことを、ぐだぐだと考えて、より一層暗い顔をするのが落ちであろうにのう」
「……」
ふぉわるらら
ニャラル7世殿は、伸びをしてから去って行った。
独りになりたいと思っていたはずなのに、妙に落ち着かないのは、何故であろうか。
私は、自らにも解らぬ心の揺らぎを感じつつ、冬の空を見上げるのであった。空は白く曇り、まるで世界に自分が独り取り残されたような、そんな心細さ、ただそれだけが我が身に親しいもののように感じられる。
おそらく、人が生きることとは、そうした寂しさと共にあることであろうと、私は思うのである。
そして、寂しさがあるからこそ、世界は美しいのである。
あるいは、私が冷血人間ではなく、温かい血の流れる優しい生き物であったなら……世界はより美しく、寂しさも感じずに生きられるのであろうか。




