第4話「自殺者N・その4」
一応他に似ている子がいないか全員見たが、この中村海斗以外に似ている人物はいなかった。
「この子の個人情報をください」
一枚のかみが手渡される。
履歴書のような、生徒の情報が書かれた紙だ。
住所は、山梨県甲府市―。
自宅の電話番号は、055―。
よし、これがあれば十分だ。
私は立ち上がり、校長先生に頭を下げる。
「ご協力ありがとうございました。また、生徒等に聞き込みする可能性があるため、その時はよろしくお願いします」
頭を上げ、いそいそと車に戻る。
中村海斗君の自宅に着いた。
ドアの前で息を整える。
ここからがこの仕事の辛いところだ。
チャイムを鳴らす。
「はい」
女性の声だ。
母親だろう。
「山梨県警です」
警察手帳を見せる。
しばらくしてドアが開く。
「何の用でしょうか?」
ごく一般的な女性が顔を出す。
「この方をご存じですか?」
写真を取り出して見せる。
「これは、海斗、ですか?」
「そうです。海斗君のお母さまで間違いないですか?」
「は、はい」
「本日11時ごろ、青木ヶ原樹海で遺体で発見されました」
「え?」
「本人確認を行います。同行願います。」
「待ってください、今、遺体でって・・・」
「心境をお察しします」
「分かりました」
道中は母親は何も話さなかった。
これはおそらく現実を受け入れられていないのだろう。
まだ穏便なほうだ。
泣きだし話ができない状態になる人や逆に激怒する人だっている。
病院についた。
母親はゆっくりと車を降りる。
「大丈夫ですか?」
私が聞くが、母親は何も話さなかった。
検視担当者に会う。
「あ、刑事さん。検案と検視終わってます。自殺で終わらせましょう」
「誰がわざわざ樹海の中に入って服を脱がして死体損壊をしてもう一回服を着させるんだ?司法解剖で絞殺か刺殺か判明させろ」
私は母親に聞かれないよう、小声で担当者に言った。
「いえ、死因は絞首です。明らかに死んだ後に刺し傷ができています」
「何じゃあ、首を絞められた後、死体損壊を行い服を着させ、樹海で自殺に見せかけたということか?」
「その可能性は高いです」
「明日の午前中までに作って、署の担当に伝えておいてくれ」
私は担当者の肩を叩き、再び歩き始めた。
母親を死体安置所に案内する。
死体袋を開け、顔を見せる。
口を押さえ、崩れ落ち、激しく泣き出す母親。
「彼は中村海斗君で間違いないですか?」
母親は小さくうなずいた。
そしてその後もただひたすらに泣いていた。
家に送っている中でも、時折泣き止んだかと思えば、再び泣き出す。
そんなことが続いていた。




