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ぶち切れ聖女は激マズポーションを置き土産に逃亡する  作者: 嵐華子@【傾国悪女】3/5発売予定
2章~魔国での生活

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56.カリエル、何やった?

「まあそんな訳で、テレスは学園に来る前に王城に寄って、看守へ引き渡した。対魔法用の発動阻害効果を空間全体にかけた牢へ入れるってさ」


 自領の森でザケルバード達と別れて一週間後。学園へ戻った俺はカリエルにそう告げた。


 ちなみに一週間が経過したのは、自領から王都までの距離の問題だ。


 俺一人が馬で駆けるなら最短四日で王都に戻れるが、テレスを連れていたから馬車を使うしかなかった。


 馬車とはいえ一週間で到着できたのは、テレスがリビアの魔法で眠り続けたからだ。起きて暴れられたら、さすがに一週間では到着できなかっただろう。


 つうかテレスは一週間眠り続けてんだけど、その間飲まず食わずで大丈夫なのか?  このまま眠り続けたら死ぬんじゃね?


 あれ? リビアがテレスにかけた魔法って、睡眠魔法だよな? テレスがウォルフ使って、いかがわしい見た目のクリスタルアートをリビアに披露した腹いせに、リビアが呪いかけたんじゃねえよな?


「面倒をかけたね、ガルヴァウ。あの女の為に、わざわざ王城に立ち寄って看守に引き渡したんだ? そんな事しなくとも、生徒会室(私の所)に連れて来てくれて良かったんだよ? 学園には警備員もいるし、対魔法用の発動阻害効果がかかった反省室もあるからね」


 内心首を捻っていると、俺の報告を生徒会長用の机に座って聞き終えたカリエルが、そう言ってほの暗く微笑んだ。


「……ウォルフが過去に処方してた薬については、魔国側から連絡が来る。ウォルフが正気を取り戻して証言すんのを承諾してくれさえすれば、ウォルフを使って転移したテレスが黒魔法使いで、国王も含めて王族を呪った事実を裏づける要素の一つにもなるだろ」


 その様子、その言葉の裏にカリエルの本心が垣間見えたが、あえて気づかないふりをして追加で報告を加える。


「そっか。じゃあ、あの女から引き出さないといけない情報も、もうないね。やっぱりあの女は、学園に連行しておくべきじゃなかった?」

「……学園に連行しても、何の反応も返ってこないぞ? テレスは睡眠魔法かけられてから、ずーっと眠りっぱなしだ。このままだと衰弱死しそうなくらい、全然起きねえ」

「そんなに深く眠ってたんだ? それなら私が魔法の解除の練習にテレスを使っても良かったんじゃないかな」


 カリエルのほの暗い笑みが、更に深まる。


 寝てるテレヌを使って、どこまで苦痛を与えたら起きるか実験でもしそうな雰囲気だ。


「どのみちテレスは黒魔法で王族を、国王陛下を呪っていたから死刑になる。テレヌ公爵もテレスの力を隠匿しつつ私服を肥やしていた事を、否定できなくなってしまうね。当然、貴族派の連中もテレヌ公爵を庇いきれなくなるだろうし、テレヌ公爵家が断絶するまで彼らに残された短い時間を有効活用しないとね」


 カリエルよ、その断絶とはテレヌ公爵家の一族郎党を全員死刑にするって言ってねえか? テレスだけじゃなく、テレヌ公爵も実験に使うって言ってねえか?


「魔法の解除すんなら、王室お抱えの魔法師にさせんのが手っ取り早いんじゃねえか? 第一、学園には他の生徒もいるだろう。一応テレスは貴族派の令嬢達のリーダー的存在だったから、王家の心象が悪くなんじゃねえ? それにテレスもテレヌ公爵も、まだ死刑宣告されてねえから、王家の体面考えても人間使って実験すんのはどうかと思うぞ?」


 俺にしては珍しく真っ当な事を口にする。


 だけどカリエルの心には響いてなかった。


「ふふふ、ガルヴァウは優しいね。フィーの兄だけの事はあるよ。だから――」


 カリエルが苦笑し、最後の言葉は小さなぼやきとなって掻き消えた。

  

 だけど俺は読唇術も使える。自領で魔獣討伐や隣国との小競り合いをやってると、自然に習得しちまった。


『だからバレないようにやらないとね』


 カリエルの唇は、そう動いた。


 それから一週間後、リビアを伴って現れたウォルフにより、王家は証言だけでなくウォルフの体に刻まれた黒魔法による隷属魔法の痕跡を証拠として得る。


 王室お抱えの魔法師が解除できなかったテレスの睡眠魔法は、リビアが解除したと後にカリエルから聞かされた。


 結局テレスは、飲まず食わずで二週間寝っぱなしだったらしい。


 テレヌ公爵はウォルフの証言と証拠に観念したのか、一年とかからず正式な手続きによりテレヌ公爵家は取り潰し。


 元公爵、及び元公爵令嬢は、それから数日後に斬首刑となる。


 民衆の前で刑が執行される際、二人はガリガリに痩せこけ、髪は薄くなり、昔の面影はなかったらしい。体に傷はなかったものの、身に着けた衣服はドス黒い染みが幾つもあったとか。


『やっと……死ねる……解放、される……早く死にたい……』


 親子二人はギロチンを前に涙を流し、延命を嘆願するでもなく、ほっとしたような笑みを浮かべて何度もそう口にしていたとか。


 俺はカリエルに死刑場に決して来ないでくれと懇願されてたし、囚人の死刑を見たいとも思わなくて行ってねえ。


 その時の話は、処刑を見に行ったタミョルから聞いただけだったけど、思わず「カリエル、何やった?」と呟いたのは言うまでもない。


 そうして結局、俺が妹と再会できたのは、それから約四年の歳月が流れてからだった。

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