52.どうすんだ、コレ?~ガルヴァウside
『ガルヴァウ!』
バサバサという羽音と共に届いた声は、カリエルのものだった。声には緊迫感が漂っている。
羽音の主は隼の形態を取っているが、連絡用の魔道具だ。それも俺とカリエルが使う小鳥型の連絡鳥とは違う。
隼は緊急連絡用に特化した連絡鳥で、小鳥型の魔道具のように特定の使用者間でなくとも使う事ができる。
魔力の感知能力が高く、使用者が連絡鳥で連絡を取りたい相手の持ち物を連絡鳥の中に入れるだけで、連絡鳥は相手の魔力を探知して飛んでいく。
相手の行き先をある程度絞ってから飛ばすと、まずはそこへ転移する機能も備わっている。
相手が魔力を遮断してない限り、ほぼ100%の確率で連絡が取れる優れものだ。
当然だが、値段はバカ高い。
『君の近くにテレサ=テレヌが召喚されたかもしれない!』
なんでこんな連絡鳥を飛ばしてんだよ、俺が壊したら弁償すんのは誰になんだ?
そう思っていれば、隼がカリエルの声で喋る。
「テレサ=テレヌ……なあ……」
カリエルが告げた名前から、やっぱそうだよなと正に今、命だけは助けたばかりの女に目をやる。
「ひはぁ~、ひはぁ~、ごほっごほっ」
めちゃくちゃ不細工な感じで、意識を朦朧とさせて呼吸とむせるのを繰り返す女――テレスは、クリスタルから顔だけ出した状態だ。
テレスが転移したのは、封緘魔法がかけられたクリスタルの中だった。
ウォルフがクリスタルの中に封じられていたお陰で、クリスタルの中にはかろうじて隙間があり、テレスはその隙間に転移した。
隙間がほぼなく、圧死する勢いでクリスタルの中から外に向かって顔を押し付けていたものの、この時点では命の危機とまではいってない。
ただ時間が経つにつれ、クリスタルの中の空気を消費していき、結果的に呼吸がとまりかけた。
対してウォルフは空気を消費しなくとも問題ないらしく、特に変化はしなかった。
もしかするとウォルフは時間を止めてるか、蛇っぽく冬眠状態で空気を消費しない体質なんだろう。
で、最終的にクリスタルの中でぐったりした誰か――この時点のテレスは、顔ベチャ状態だったせいで、誰だかわかんなかった――を助けるべく、俺は顔の部分だけクリスタルに穴を空けた。
正直、封緘魔法を完全に解除するのは難しかったし、無理に封緘をこじ開けるとどんな反発が起こるかもわからない。下手な事をすれば破裂して中のウォルフと誰かや、外にいる俺も危なくなる。
だけど封緘魔法に干渉して部分的に小さめの穴を空けるだけなら、最小限のリスク管理だけで可能だ。
で、まずは封緘魔法、次にクリスタルの順で穴を空けた。
ぱっと見、ウォルフの股間あたりから顔を出したように見えなくも……いや、止めとこう。
まあ、とりあえずテレスは一命だけは取り留めた状態だ。
出した顔を見て、もしかしてと思ってたところで、隼が飛んできて現在に至る。
「何でテレスがこんなとこに転移してきたんだ? 見る限り、魔力封じの手枷足枷を着けてるぞ?」
テレスが喋れる状態になるまで、まだ暫くかかるだろうと考え、カリエルに尋ねる。
『それが――』
するとカリエルが事の顛末を話し始めた。
「――なるほどな」
「はあ、はあ……」
カリエルが全て話し終える頃には、テレスの呼吸もかなり安定したものに変わっている。
テレスは気が抜けたのか、相変わらずぱっと見は卑猥な感じで顔をだしつつ、気を失ってしまった。
カリエルの話を纏めると、ウォルフが自分をクリスタルに封緘する前、テレスは黒魔法を使ってウォルフにマーキングか隷属のどれか、もしくは両方をしてた。
で、俺が小鳥型の連絡鳥でカリエルと連絡を取ってた時、実はカリエルはテレスの近くにいて、俺の話からウォルフの存在を思い出したテレスは、ウォルフを操作。ウォルフの魔力を使って転移した。
とまあ、そんなとこだろう。
ウォルフ自身は封緘魔法で体も魔法も封じてるし、今回のような場合で無い限り、クリスタルの外へ向かって魔法を行使する事は不可能だ。
「とはいえ……どうすんだ、コレ?」
状況はわかったものの……俺、どうもできねえぞ?




