42.同胞~ガルヴァウside
「あー……すまない」
妹を連れてくると言って暫くいなくなっていた美丈夫二人は、小一時間ほどで戻ってきた。
だが妹は連れておらず、妹から預かったという伝言を伝えると、ザケルバードが申し訳なげな顔でそう言った。
「チッ、お嬢様のくせに考えましたね」
こめかみに青筋立てて舌打ちしたのは、もちろんタミョル。
「ブルルッ」
同感だと同意するかのように鳴いたのはコロロン。
「ああ、コロロン殿は結界内にお招きしますよ」
「ヒヒィン」
ゴルがそんなコロロンにそう言った途端、コロロンは手の平返し的な甘えた鳴き声を上げた。
「チッ」
そんなコロロンを見て舌打ちしたのは、これまたもちろんタミョルだ。
結論から言えば妹はコロロン以外、会うのは拒絶。
妹はタミョルに、以下の条件付きでなら魔国に入っていいと伝えたらしいが……。
①魔国にいる間、給金は出さない
②魔国に一度でも入れば、年単位で結果の外に出せない
③カミュリッチ家の侍女という立場は捨てる
タミョルはある程度の自由を愛する現金主義者だ。この①~③の条件は絶対に飲まないのは俺でもわかる。
妹がカリエルとの婚約話を強引に進めようとしてた俺と父上への怒りが治まってないだろうってのは予想してた。
だから俺とは会わないって言うだろうなとは予想してたけど……タミョルもか。
父上の命令に従ったタミョルへの怒りがまだ治まってねえのもあるだろうが……まあ、きっとそれだけじゃねえ。
「タミョル殿……フィデリカは――」
「わかっていますよ、ザケルバード陛下。お嬢様にお伝え下さい。私に給金を払えるくらい、早く結界の中を立て直して下さいと。食いしん坊なお嬢様がひもじい思いをする事があれば、どんな手を使ってでもお嬢様を結界から引きずり出しますよと」
ザケルバードの言葉を遮ったタミョルは、妹の真意を正しく汲んだらしい。
「それからザケルバード陛下。お嬢様は本当にお元気ですか? 一度でも、お泣きになっていませんか?」
タミョルが含みのある言い方をする。
「元気だ。泣く事もなく、いつも楽しそうに笑ってよく動き回っておるな」
ザケルバードがゴルと顔を見合わせた後、満足そうに告げた。
だがタミョルは、真横にいる俺だけしか気づかないくらい、小さなため息を吐いた。
「……そうですか。お嬢様にお伝え下さい。タミョルの胸はいつでも空いてますよ、と」
冷めた表情をしたタミョルは、言うだけ言って踵を返す。
「ガルヴァウ様。お先に失礼します」
「……ああ、わかった。それよりフィデリカは黒タンポポについて何か言ってたか?」
立ち去るタミョルに声をかけ、美丈夫二人に尋ねる。
少しして馬の嘶きが微かに聞こえた。
多分、俺が乗ってきた馬だ。コロロンと違って普通の馬だったから、結界から少し離れた木に繋いでおいた。
「ああ。簡単にだが――」
タミョルの背を訝しげに見ていたザケルバードは、少しして妹から聞いた黒タンポポについて話す。
「そういう事だったのか」
全てを聞き終えた俺は頭の中で噛み砕いてから、そう頷いた。
黒タンポポの効能の他、国王が飲んでいた虚弱体質の薬への推察。更にテレヌ嬢が持っていた宝石の正体。それらが全部繋がった。
「ところで超虚弱体質の薬を作っていたという薬師の名前はわかっていますか?」
不意にゼルが尋ねる。
「ああ。確かウォルフって言ってたな。かなり長生きしてたみてえだから、多分もう死んでるんじゃねえか」
「どのような外見をしていた? 髪や目の色は?」
次いで尋ねたのはザケルバード。
「さあ? いっつもローブを着て、フードを深く被ってらしい。そのせいで髪や目の色どころか誰も素顔を知らなくて、行方不明になった時も名前と背格好でしか探背なかったらしい。性別を男だって判断してたのも、声と名前、それからガタイが成人男性くらいだったからみてえだし」
俺がそう言うとザケルバードとゴルが視線を交わし合う。
「もしかするとその薬師は、私達の同胞かもしれません」
ザケルバードに軽く頷いたゴルが俺を見て、静かにそう告げた。
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庭の台風対策してたら更新が遅れましたΣ(・ω・ノ)ノ




