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ぶち切れ聖女は激マズポーションを置き土産に逃亡する  作者: 嵐華子@【傾国悪女】3/5発売予定
2章~魔国での生活

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40.同担歓迎~ガルヴァウside

「たのもー! おーい! たのもー! フィデリカー! 聞こえてねーかー! ガルヴァウだぞー! カッコイイお兄様だぞー!」


 カリエルと王都の学園で黒タンポポについて話した後、一人自領に戻った俺は、魔国との境界となっている結界の外から叫んでみる。


「ブルヒヒン」


 フィデリカの専属侍女だったタミョルに手綱を引かれたコロロンが鳴く。


 コロロンはィデリカの愛馬だ。きっと俺を応援して――。


「無駄無駄、脳筋馬鹿」


 背後を振り向けば、ついてきたタミョルがコロロン語を人語に訳した。


 普段からコロロンの言葉がわかると豪語しているタミョルだが、嘘だよな? コロロンは俺を応援してくれてるよな?


「コロロンたら。止めときなさい。一応、コロロンの餌代を支払ってくれてる人の息子ですよ」

「ブルルッ」

「コイツのせいでフィデリカ様に置いてかれた? それは私も思ってますが、口にしないのが気遣いですよ」

「タミョル……だったらコロロン語を訳さなきゃいんじゃ……」


 思わずタミョルにそう言えば、タミョルだけでなく……な、何でコロロンまで俺に冷めた視線を!?


 いや、わかってる。


 タミョルは妹が魔国に行った元凶である俺と父上に、いや、どちらかというと当初カリエルを妹の婚約者にゴリ押ししてた俺に怒ってる。フィデリカが魔国に行っちまって以来、ずーっと怒ってる。


 コロロンも俺を蹴り飛ばそうとするあたり、怒ってるんだろうな。


「騒がしいな」


 涼やかな声が結界の方からして、再び視線を結界に戻す。


 すると結界を挟んだ向こう側に二人の人間がいた。


 どちらも明らかに美丈夫。圧倒的かつ誰が見ても美丈夫。耳がとんがってたり蝙蝠みたいな翼が生えてる二人だが、紛れもない美丈夫。


 男の俺でもそう思うんだ。タミョルは……。


 チラッとタミョルを見たが……。


 何でタミョルはスンとした顔をしてんだよ!? フィデリカとイケメンウォッチングしてたんじゃねえのかよ!?


「陛下、お下がり下さい。外の人間はいつ襲おうとしてくるか……」


 そう言ったのは、灰色髪に赤い瞳をした儚げ美丈夫な長身の男だった。誰が見ても、目元のホクロが色っぽい系美丈夫。背中から蝙蝠みてえな羽根が生えてるけど、紛れもない美丈夫だ。


 最初に聞こえた声とは違うが……陛下って言ったか?


 まさかとは思うけど、最初に喋ったあの黒髪金目の尖った耳した迫力系美丈夫は……魔王!?


「フィデリカの兄君だ」


 んん!? 今、サラッと妹の名前が出た!? しかも俺を見て、兄君!?


「え、フィリ様の!? 確かに髪色はフィリ様と同じく赤系統ですし、何より瞳の色は同じですね」



 儚げ美丈夫が俺を見て、納得する。


 その時、タミョルが俺の隣に静かに立った、


 タミョルの横顔を見て……。


 だから何でタミョルは、スンとした顔をしてんだよ!? フィデリカとイケメンウォッチングしてたんじゃねえのかよ!? 何か機嫌悪くなってねえ!?


「ああ。脳筋なところもよく似ているな」

「お馬鹿可愛いって顔に書くの止めて下さい。フィリ様は御年十歳。いくら押しかけ女房で魔王妃名乗ってるからって、手を出しちゃいけませんよ」


 タミョルの様子に驚いていた俺だが、迫力系美丈夫がデレ、儚げ美丈夫がつっこんでいる会話はちゃんと聞いてる。


 いや、押しかけ魔王妃って……やっぱり二人は妹を知ってるな。


「ふん、我とて分別くらいある。そもそもフィリは自分から、魔王妃などとは名乗っておらん」

「知ってます。始まりは陛下でしょう。フィリ様はお可愛いらしいのに、可哀想ですよ。魔を付けて魔王妃呼ばわりするなんて」

「違う。我は皆の前で王妃と呼んだだけだ。それがフィリがポーション飲ませて腹パンしまくってるうちに、魔王妃になったのだ」


 おいおい、腹パンしまくってるって何だよ!? うちの妹、魔国でも大暴れしてんのか!?


「まあ、そんなわけだから帰れ。フィリは我が嫁だ」

「ええ、お帰り下さい。フィリ様は我が国が愛してやまないマスコット的お馬鹿キャラ、んんっ。国民的お馬鹿スターです。返却など致しませんよ」


 冷たい表情で言い放つ美丈夫達。


「いや、ツッコミどころありすぎて……」


 とりあえず妹が魔国で上手くやってんのはわかったが、儚げ美丈夫は言い直した意味――。


「お嬢様、いえ、フィデリカ様がお馬鹿可愛いマスコット的キャラクターなのは否定しませんが……」


 タミョルよ、俺もそこは否定しないが、断言もしてやるな。


「権利侵害です。お嬢様を揶揄う、んんっ、愛でるのは専属侍女である私の報酬の一つ。それがあるから通常の報酬の二割減、三食昼寝つきで手を打っておりました。お二人は、いえ、魔国は、フィデリカ様の保護者であるカミュリッチ家当主が認めた私の権利を侵害されております」


 言い切るタミョル。今、妹揶揄うって言ってたな。


 つうか、え、そんな報酬を父上はタミョルに与えてたのか!? 二割減だけと三食に昼寝もついて、何なら朝寝もしてからの、昼寝してねえ? そもそもタミョルよ、お前はそんな報酬で良かったのか!? もっといい報酬なんていくらでもあんだろう!?


「「権利侵害、だと!?」」


 いやいや、何で美丈夫が二人揃って愕然としてんだよ。


「確かにフィリの可愛らしさは報酬になる! 何故、そんなあり得る話に気づかなかったのか!?」

「わかります! あの可愛いらしくチマチマ動いた末に、最後は拳と蹴りと腕力で解決する様は、商標登録必須の脳筋馬鹿的お可愛らしさ!」


 うん……もう俺には美丈夫達が言ってる意味が――。


「そうでしょうとも」


 うん、タミョルがふんぞり返ってしたり顔になってんのも、もう意味がわかんねえ。


 これが最近、王都で流行り出した【同担歓迎】ってやつなのか!?

いつもご覧いただき、ありがとうございます。

更新が10日ほどできてませんでしたが、初めて郵送するタイプのラノベとは全然違うジャンルの公募が締め切り間際になってて、そちらの原稿を仕上げるのに集中してました(^_^;)

今日からまた週2投稿できるかと思います( ´艸`)

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