39.食ったし、飲んだ。美味かった~ガルヴァウside
「そう、今は元気になってる……だから余計、ややこしい」
「……そうだな」
一番の問題は、国王が伏せっていた理由がわからない事だ。
致死レベルの虚弱体質が原因なのか、はたまた呪いが原因なのか。
国王が呪われてたのは間違いねえが、寝たきりになったのが薬切れのタイミングとなると、呪いとの因果関係が崩れる。
「最良の解決策は薬師を見つけ出す事だけど、薬師が行方不明になった時点で実は薬を求めて捜索させてるんだ」
「なのに見つからねえのか……あ、国王が飲んでた特別な薬剤って方向から探すのはどうだ?」
「王宮医がとっくに薬の成分分析をやってる。どれも滋養強壮に効果がある薬剤ばかりで、何が特別なのかわからなかったみたいだ」
「うーん……」
「ただ王妃陛下が持っていた先代の王妃陛下の日記には、一度だけ薬師が薬剤を作っているのを見せた事があるって書いてるみたいだ」
「へー、先代王妃も日記なんてつけてたんだな」
「看病日記みたいで、国王陛下にどんな療養をさせていたかを細かく書いてるんだって。きっと先代王妃は自分が亡き後、息子も含めて虚弱体質で生まれてしまうかもしれない子孫の為に書き残したんじゃないかな」
苦笑するカリエルが気にしてんのは、王家の血縁者が少ない事だ。
今の国王もそうだが、王家に生まれる子供の数は昔からかなり少ない。生まれても王妃一人につき二人がせいぜいで、一人しか生まれない事も多々ある。
その上、国王みたいに致死レベルとまではいかなくとも、体はそこまで強くない。
それもあり、この国は王女にも王位継承権が認められてる。実際、女王が即位した代もある。
それを考えると、カリエルの異母兄はすこぶる健康体だ。精神には問題があったが、テレヌ嬢が呪ってたんなら、まあ本来の第一王子は心身共に健康って事なんだろう。
カリエルも少し前は急に体調を崩してたし、回帰前のカリエルは寝たきり状態にもなったらしいが、それも呪いのせいだったなら、本来のカリエルも心身共に健康体って事だ。
となると王家の血筋としちゃ、軌跡の健康異母兄弟って事に……。
「黒い色の花弁をしたタンポポ」
健康異母兄弟に思考を傾けてたら、カリエルが何か言ったが、何てった? 黒いタンポポ?
「ん? 悪い、聞き取れなかった」
聞き間違いかと思い、カリエルに聞き返す。
「実在しない色のタンポポだから、馴染みがないよね。日記には『一度だけ無理を言って薬師が薬剤を作る場面を見せて欲しいと懇願した。子に飲ませる物故に、どうしても確認したかった。薬師は一度だけ、見るのは私だけだと言って作る場面を見せた。見た覚えがある薬草ばかりだったが、一つだけ初めて見る薬草があった。黒い花弁のタンポポだ』と、そう書かれてあったらしい」
「黒タンポポ?」
頭の中には、リアルな感じで黒い花弁のタンポポが思い浮かんで、思わずオウム返しをしてしまう。
「そう、黒。僕も聞いた事ないし、国王陛下は国内どころか国外の植物博士にも問い合わせたけど、答えは黒い花弁のタンポポは確認されていない、だったんだ」
「黒タンポポ……」
あれ? 存在しない? どっかで見た事あったよな?
カリエルの言葉が頭を素通りする中――。
「黒タンポポ……黒いタンポポ……黒……うーん?」
ぶつぶつ呟きながら、黒タンポポが風に揺れる様を思い出す。
「ガルヴァウ?」
カリエルの訝しげな声が、またも頭を素通りした。その時だ。
『あ、くろちゃんぽぽよ、おにいちゃま!』
三歳頃の妹が無邪気に笑って……そうそう、あどけない口調で、豪快に黒タンポポの茎をむんずと掴み、地面から引き千切ったんだった。
『根っこはきいりょより、ふかいりこーひーふーみになりゅにょ~』
とか言いながら、ぶちぶち引き千切って……。
『はにゃ、いりゃにゃい。こりぇ、たべちゃ、めっ、よ』
とか言いながら、今度は黒色の花部をぶちぶち引き千切ってたんだった。
その後、俺は妹のお願いで茎と葉っぱは綺麗に洗って天ぷらに、茎は洗って天日干しにして後日、乾煎りしてから煮詰めて飲んだ。
家族皆で食ったし、飲んだ。美味かった。




