38.致死レベルの虚弱体質
「私は正直、犯人は王妃以外の誰かだと思っている。国王も同じお考えだ」
「テレヌ嬢は何て言ってんだ?」
カリエルの言葉に同意はせず、話をふる。
「テレヌ嬢は当時国王に仕えていた薬師からの贈り物だと言っている」
「当時仕えていた薬師? ソイツが何で何人かいる婚約者候補の一人でしかなかったテレヌ嬢に贈り物をするんだ? 大方、奪い取ったんじゃねえ?」
「まあ、あのテレヌ嬢だからね。薬師が首飾りをたまたま持ってて、たまたま出くわしたところで首飾りを気に入り、無理矢理奪った可能性なら否定できない」
「だとしても薬師が国王夫妻と王太子しか入れねえ場所に保管してた首飾りを持ってた理由にはならねえか。だがその言い方だと、贈り主の信憑性は確認できねえパターンじゃねえか?」
嫌な予感に眉根が寄る。信憑性を得るには薬師の証言が必要なはずで……。
「ご名答。国王陛下が生まれた時から、ある特別な薬剤の取引きをしていた薬師らしいけれど、既に消息が途絶えてかなりの月日がながれてる」
「真相は迷宮入りだな。もしくはテレヌ嬢が嘘を吐いてんのか」
「嘘は吐いてないんじゃないかな。その道の専門家が自白させてるから」
カリエルの顔色が一瞬、冷徹なものへと変わる。
恐らく拷問に近い行為を使って自白させてんだろうな。
回帰前の記憶を思い出したカリエルは、回帰前の妹を殺したテレヌ嬢に関わる時、たまにこういう顔をするようになった。
あまりにもデカイ怒りが渦巻いた末に、冷酷で静かな憎悪の感情に身を置いてる。そんな感じがする。
「……ちなみにある特別な薬剤ってのは、どんな薬剤なんだ?」
テレヌ嬢への憎しみから逸らす為、再び話題を変える。
「国王陛下は昔から虚弱体質で、他に王位継承者がいれば国王になれなかったのは覚えてる?」
「そういや、そんな事を誰かが言ってたか?」
適当にカリエルの話に合わせたものの、嘘だ。記憶に全くねえ。
「ガルヴァウ……興味がない事を覚えない癖が強すぎるよ。歴史の授業でも教師は遠回しに伝えてるし、私も去年くらいにガルヴァウに教えたよ」
するとカリエルは呆れ顔でそう言った。バレてたみてえだ。
「まあ、歴史の授業って嫌いだからな。昔の事掘り下げても、領に帰ったら無意味だろ」
本当に覚えておいた方が良かっただろう呪いに関する史実は、どうやら隠蔽されてるっぽいしなと内心思いつつ、カリエルに返事をする。
もっとも父上からは俺の幼少期に、呪いとこの国の建国について習ってたが、寝物語だと思い込んでたのもあって、すっかり頭から抜け落ちてた。
「はあ……とにかく他に王位継承者がいなかった事で、虚弱体質な父上は国王となった。だけれど言い換えれば、父上の虚弱体質加減は命に関わるレベル。更に国王になったらなったで求められたのは、国王の血を継ぐ子を作り、その子が成長するまで生きる事だったんだ」
「それとある特別な薬剤に何の繋がりが……ああ、滋養強壮剤的な? でも致死レベルの虚弱体質を、生まれた時から数十年も生かす薬なんてあるのか?」
聞いた事がない話に首を捻る。
魔法で治癒魔法はあれど、一般的には怪我や病を治す魔法だから虚弱体質は対象外。
回復魔法もあるが、回復できる体力がない虚弱体質に掛ける魔法じゃねえ。
「あったんだろうね。父上は王家に生まれた時から、存命し続ける為だけに生きてきた。他に兄弟がいれば良かったんだろうけど、先代国王に兄弟はいなかったし、父上にも兄弟はできなかった」
「代々、子供を授かりにくい家系だったんだな」
うーっすら覚えている限り、王家の血をまともに引いたと呼べるべき血筋よ人間は、現在いないんじゃなかっただろうか。
まあ最終的に王家の直系が滅べば、政治の中枢にいる貴族の誰かが血を辿りまくって王家の血筋を探し出すだろうが。
「もちろん父上は血を次代に継ぐだけじゃなく、本格的に寝たきりになるまで政務を滞りなく行ってた。けれど父上が倒れる引き金になったのは、長年飲み続けたある特別な薬剤を提供してた薬師が消息を絶ち、薬剤が手にはいらなくなったかららしいんだ。薬師は先代の国王陛下が伝手を頼って見つけたとしかわかってない」
カリエルの話に、八方塞がりだなと内心思う。
だが、ふとある考えが頭を過った。
「ん? でも生粋の虚弱体質だった国王は、今は元気なんだよな?」
虚弱体質だった国王は、薬が飲めなくなって倒れた?
だが妹はやべえポーションを国王に飲ませて腹パンして呪いを吐き出させたんだよな?
虚弱体質と呪いに少なからず因果関係があるって事にならないか?




