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ぶち切れ聖女は激マズポーションを置き土産に逃亡する  作者: 嵐華子@【傾国悪女】3/5発売予定
2章~魔国での生活

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33.魔力石

「さあ、これで終わりよ」

「わあ……すごい、鱗が剥がれて足ができた! 指も開く! リビア様ありがとう!」


 師匠の聖女パワーで解呪された六歳の女の子が、満面の笑みで師匠にお礼を伝える。


 女の子は呪いの影響で体中に硬い鱗ができていた。鱗は下半身から始まったらしく、両足を完全に覆い、骨を軋ませて蛇のように長細くなった状態だった。


 更に下半身の鱗はここ数年で胸を覆い、呼吸もままならなくなっており、手の甲にも発生し始めた鱗は指を閉じさせた。


「ああ……」

「ありがとうございます、ありがとうございます……ううっ、ありがとう……」


 感嘆の吐息を漏らす父親と、エンドレスに礼を言い続けるのは母親。


 二人共、咽び泣きしていて、上手く言葉が出てこなくなっている。


 当然だろう。女の子は日常生活のあらゆる場面で介助を要しており、明日をも知れぬ体だった。


 今でこそ親子は腕にふわっとした羽毛が生えた、見た目は鳥の獣人。


 だけど解呪前の両親の羽根は硬質化し、一部は鋭利な刃物のようだった。そのせいで身に着けていた衣服は、ボロボロ。


 唯一の救いは介助中、万が一鋭利な羽根が子供に当たっても、子供の体は硬い鱗で守られていたことくらい。


 こんな状態が何年も続いていれば、家族全員が体だけでなく、心も呪いに蝕ばまれてしまうのは必須。


 解呪があと数ヶ月遅ければ、一家で正気を失う事態となっていた。


 もしそうなっていれば、バードが粛清せざるを得なくなったはず。


 バード達が結界に閉じこもってから五百年。バードはそうやって結界内の均衡を保ってきた。


 つまり……バードは定期的に仲間を手にかけてきたという事になる。


「良かった」


 少し離れたところから、解呪を喜び合う家族を眺めながら呟いた。


 バードは優しい。もし正気を失った仲間が自分だけを殺めようとするなら、バードは絶対に粛清したりしない。 


 けれど人の姿の片鱗を失い、完全に異形の姿となった仲間は、結界内にいる他の仲間を殺そうとする。


 更に亡くなる際、呪いを撒き散らしてしまう為、仲間の体内に巣くう呪いを活性化させ、異形の姿になる進行を早めてしまう。


 五百年前はバードの他、誰にも巣くっていない、漂うだけの呪い限定で消滅させられる人――聖騎士と呼ばれた人――が何名かいたのだそう。


 人体に巣くう呪いを浄化できた聖女と呼ばれる人と違い、彼らは異形の姿となっても呪いを消滅できたとか。


 実際、バードはケモック姿の時でも、吐き出された呪いを消滅できた。


 けれど結界内の聖女は皆、異形の姿となったせいで浄化の力が出せなくなる。


 だから撒き散らした呪いを消滅させる際、少なからず体内に呪いを取りこんでも、取りこみっぱなし。


 やがて聖騎士だった人達も一人、また一人と正気を失って、今の生存者はバード、ゴル、意外にもゼルだけとなっている。


 いや……師匠の話ではあと一人、生きているっぽい。正気を失うギリギリのラインで消息を絶ったらしいから、既に死亡しているかもしれないけど。


「昔のように一度で浄化はできないから、日を分けて何度も浄化を重ねがけしないといけないけど……」

「確かに今の今まで、この子の姿に変化がなかったので、不安に感じてましたが……ああ、こんなに急激に変化するなんて」

「リビア様は仮にも聖女。私は信じてました」


 父親が言うように、聖女の感覚的には体内の呪いは徐々に消えていても、目に見えた変化はなかった。


 実際、私の腹パンでワニのような顔から人の顔に戻った父親は、時折だけど不安そうな表情を子供に向けていた。


 対して母親は、師匠の浄化を初めて受けた直後の子供の様子に、最初こそ落胆したものの、師匠が「大丈夫、効いているわ」という言葉を聞いた途端、安堵していた。


 以降、私が見ている限りでは、子供を見つめる瞳に不安や恐れが浮かんだ事は一度もない。


 さすが初代聖女。いや、私の師匠。信頼感がハンパない。


「ふふ、そう言ってもらえると嬉しいわ。でもお礼はフィリにも伝えて。呪いを浄化する際、どうしても対象の呪いを取りこんでしまって、浄化する力が弱まるの。フィリの作る解呪ポーションで定期的に浄化するからこそ、私も浄化の力を扱えるのよ」


 師匠が私の方へ顔を向けて言った通りだ。


 絶大な浄化力を誇っていた初代聖女である師匠。


 師匠は国に蔓延した呪いに苦しむ人々を浄化する度、呪いを体に取りこんでいたらしい。


 ただ当時の師匠は、多少取りこむくらいなら体の中で勝手に浄化していた。


 けど浄化を望む人達が国内だけでなく、国外からも神殿を訪れるようになり、やがて自浄作用で対処できなくなったらしい。


 だから師匠は相性が良い魔力石を使って呪いを魔力石に移していた。


 ちなみに呪いのこもった魔力石については、聖騎士が叩き割って消滅させるシステムだったとか。


 最終的に呪いに対処できない事態となったから、魔国が出来上がったのだけれど。


 それにしても呪いがこもった魔力石の存在……気になる。


 回帰前の私を殺したクソ女が身に着けていたのは、師匠の瞳に良く似た色のマゼンダピンクの石がはまった首飾りだ。


 何か関連が……。


「「「ありがとうございます! 魔王妃様!」」」


 なんて考え事をしていれば、親子でお礼を言われた。


 魔王妃……なんだか悪の王妃みたいな呼び名が定着したのは、どうしてかしら?

ご覧いただき、ありがとうございます。

魔王妃……それはきっと突き抜けた味のポーションを作る腹パン上等少女だから(;・∀・)

おかしいな……当初は回帰前の痛みを成長と共にザケルバードの溺愛を受けて乗り越えるような、シンデレラストーリーになるはずだったのに(°∇°;)

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