愛魂(ラブソール)よ! どこまでも超えてゆけ
雅矢からもらった住所は存在しなかった。そこで確認するために亜子はその住所に向かった。現場に着いた亜子だが、そこにはなにもなかった。
亜子は、がっかりしたがそこに雅矢が立っていた。雅矢に聞いてもなにも言わなかった。そしてナミのお兄ちゃんも一緒にいたのだった。
諦めようとすればするほど気泡のように表面に沸々と浮かんでくる。中毒性が高すぎる雅矢。
あんなにだめだだめだと思っても引き寄せてしまう。 わたしの頭も心も雅矢を考えれば、考えるほど焦げてしまいそうだ。わたしは大きく深呼吸をしながら気持ちを落ち着かせた。こんな状況になると、パニック症候群が発症するのにならない。それより頭の中で、うっすらと見える。(この映像はなんだろうか? もしや••••••)
「雅矢って神の子でしょ」
わたしは咄嗟に言葉に出した。
「••••••亜子!」
「わたしには見える。ぼんやりとしたフラッシュバックが」
「やっと気づいてくれた」
「亜子さんにも雅矢の姿が見えるんだ」
ナミのお兄ちゃんが前髪を上げて亜子を見てきた。
「いま、はっきりとわたしの中で、つながったの」
「亜子の言うとおりぼくは、この神社の神の子だよ」
雅矢は今回の千年に一度の神社が建て替えにともない少年から青年の神になると教えてくれた。
「ぼくはほんのひととき解放されたんだ。そんな時、亜子のピアノ演奏に引き込まれたんだよ」
「••••••そうだったの」
「長い祠から解放された時に聞いたピアノ演奏は、新鮮で気持ちが揺さぶられたよ」
「それじゃ雅矢、もういなくなるの?」
雅矢はうなずくだけだった。
「もうすぐ千年に一度磁場が最高峰に達するエネルギーを放つ。その時、その波動に乗って神社の水晶玉にぼくは向かえられ、新しくなった神社の神棚に祀られる」
「そんなのうそだぁ、うそだぁ、うそだぁーー」
わたしは全身の力がねけた。
その場から立ち上がるうとするが力が入らない。雅矢とさよならが永遠に続く。そんなのうそだ。
今にも純粋なガラスの魂は砕け散りそうだ。(わたしが好きになった人が神の子。しかもこんなに、ださくでセンスない人をわたしは好きになったの?)
ちっぽけな人生経験を繰り返してきただけのわたし。でもこの気持ちはーー、いさぎよく諦めようとすればするほど締め付けられて心がちぎられそうだ。(だからこれ以上苦しくなってしまう、だから諦めるんだ亜子。雅矢に、さよならってーー)激動に動くわたし、いったいどうしたらいいの。
いっそこんなに苦しいなら、わたしの存在まで消えてしまいたい。
「亜子、そんなこと考えたらだめだ! 亜子が生きてるからまだ会えるんだよ」
「でも雅矢と、もう話しができないもん」
「そんなことないよ。心眼で見るんだよ。亜子には、その能力が開花してるはずだ」
「そんな能力ないもん」
「五感で感じるんだよ」
「五感で? そんなのむりだよ」
「亜子ねえ、誰としゃべってるの?」
ナミちゃんが急に声をかけて、現実に戻された。
「どっ、どうしてナミちゃんがここに?」
「お兄ちゃんが、面白い場所連れて行ってくれるって言うから、これもって」
ナミちゃんがペーパーの地図を差し出してきた。
「ナミちゃん見えないの?」
「••••••なにが?」
「わたしの隣りいる人」
「亜子ねえの隣りはお兄ちゃんしかいないよ」
ナミちゃんには雅矢が見えないのだ。
ならどうしておばあちゃんには見えるんだろう。そしてナミちゃんのお兄ちゃんも。
「お兄ちゃん面白い場所ってどこ?」
「ここだよ。ここに神様がナミの前に立ってるよ」
「お兄ちゃん、そんな冗談やめて」
「ほらそこに!」
「きゃあーーこないで!」
ナミちゃんのお兄ちゃんが指さすとナミちゃんは、顔を隠し走って逃げた。
「ナミ待てよぉ!」
ナミちゃんのお兄ちゃんもナミちゃんを追いかけた。
「ねぇ、これで分かったでしょ」
雅矢がわたしの手を握ってきた。その時ふと雅矢の手が冷たかったことを思い返した。
まるで長野へきてから雅矢に呪文をかけられたようだ。確かに長野は標高が高い山岳に覆われ、神秘的な伝説が多そうだ。けどこんなことって••••••。
「亜子がピアノも弾けたのも純粋にピアノを弾きたい気持ちが、まだ残っていたから弾けたんだよ」
「そんなことって‥‥」
「まだ亜子は自分が気づいてないことだらけだよ。大丈夫だよ。前の亜子とは違う。きっと乗り越えられる」
雅矢の握る手が強くなる。わたしは、もうなにも身動きできない。ただこのままずっと続けばと願うばかりだ。けどこのままじゃだめだ。
わたしは思い切って雅矢の胸に飛び込んだ。やっぱり体は冷たい。ためらっていた雅矢も両腕で抱きしめてくれた。わたしは額を雅矢の胸に当てた。うっすらと温かい。わたしは顔を上げた。
亜子一七才ラブソウルを雅矢に注入した。わたしのファーストキスだ。雅矢の両腕はわたしを強く抱きしめた。わたしはこのまま粉々になってもよかった。
自分でも不思議な行動だ。今までは無色透明で生きてきたからだ。息を潜めて目立たないように学校生活を過ごしてきたわたしが、こんな大胆なことをするとは意外だ。
雅矢は決して好きだとは言わない。それは分かっている。 でもわたしは雅矢が好きだ。だからわたしの炎が今、燃えている。わたしの感情は理性でも止められない。
それが神の子と知ってもだ。
今回も閲覧して下さりありがとうございます。
雅矢が神の子だと知った亜子。もうすぐ別れ日がくるのも分かっていたが亜子。そして自分に素直になる亜子を雅矢は受け止めた。
そしてナミちゃんのお兄ちゃんやおばあちゃんは、何故雅矢の存在を知っていたのだろうか?
ファイナルに向けて謎が解けていきますよ。




