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未完成な果実たち

 ステージイベントには急遽、雅矢はこれなくなった。それでも無心にピアノを弾いた亜子。そのピアノ演奏も無事に終わり、げんさんに感謝された。その後、盆踊り祭りと花火大会を亜子と雅矢と楽しんだ。

その光景は亜子が描いていたとおりになった。楽しいひとときはすぐに終わってしまった。

そして亜子は最後に雅矢からメモを受けとった。

「亜子ちゃん、この場所は、なにもないはずよ」

「••••••なにもない?」

 そんなはずはない。雅矢が確かにくれたメモだ。

「この住所がどうかしたの?」

「ちょっと聞いてみただけ。それよりおばあちゃん。ナミちゃんのお兄ちゃんきた?」

 話しをそらすため、わたしはとっさに浮かび聞いてみた。

「この間、亜子ちゃんが留守の時にナミちゃんがつれてきたけど」

「そうなの••••••」

 おばあちゃんが、ナミちゃんのお兄ちゃんが引きこもる話しを教えてくれた。原因は友達関係らしい。

 明日は我が身だ。二週間後に二学期が始まる。無菌状態で頼る人がいないわたしも同じ部類だ。学校行くのが不安だ。

 わたしは自分で負の空気を呼びこむのを連れてきてしまう特徴がある。(そんなことよりも雅矢の方が先だ)

 早く雅矢に会いたいけど、今日は店番だ。祭りの期間はおばあちゃんに任せきりだった。

「ナミちゃん!」

 噂をすると怖い。ほんとにナミちゃんがやってきた。

「亜子ねえーー!」

「わたしの留守の時、げんきやにお兄ちゃんときてくれたの?」

「亜子ねえが東京に戻ってる時に一緒にきたよ」

 思い出したくないあの時だ。

「東京から戻ってこないと思ってた」

「そんなことないよ••••••」

「わたしも亜子ねえみたいに、ピアノ弾いてみたいなぁ」

 ナミちゃんが奥のピアノをのぞきこんだ。

「いいよ」

「ほんとに!」

 ナミちゃんの目が一瞬にしてキラキラと輝いた。

 きっとわたしもピアノを初めた時は、こんな気持ちだと思い返した。なのにどこで嫌になって、つまずいて辞めてしまったのだろう••••••今更ながら。

「亜子ねえ、ステージの曲弾いてよ」

「ナミちゃんきてくれてたの?」

「ずっと聴いてたよ。亜子ねえが失敗しないかドキドキして聴いてたの。最終まで弾いた時はうれしかったよ」

「ありがとう。心配してくれて」

 ナミちゃんはほんと素直で、わたしの小五と違い過ぎる。 わたしはナミちゃんの前で革命エチュードとパッヘルベルのカノンを弾いた。『パチパチ』

「お兄ちゃん!」

 ナミちゃんのお兄ちゃんが拍手をしてくれた。

「ナミちゃんのお兄ちゃん?」

 がっしりした体格で髪の毛が耳を覆い、おまけに目元まで隠れたマッシュルームヘアーの色白な少年がうなずいた。

「雅矢まだきてないの?」

 無表情だが声は甲高い少年だ。

「どうして雅矢を?」

「いつも亜子さんが弾くピアノ聴いてるじゃないか」

「どうしてそれを?」

「雅矢が言ってた。癒されるって」

「亜子ねえ、雅矢って誰?」

「わたしのお友達」

「亜子ねえの友達をどうしてお兄ちゃんが知ってるの?」

 わたしも聞きたかった。なぜに雅矢を知ってるのか。

 ナミちゃんのお兄ちゃんと雅矢のつながりがあるのか。雅矢からも聞いたことない。

「それは二人だけの秘密だよ」

 ナミちゃんのお兄ちゃんは、ぶためんとわさびのり太郎を買って帰った。

 わたしは店番をしながら雅矢がくるのを待ったが、結局その日は、こなかった。

 その日の夜ママが東京から帰ってきた。お土産はわたしのお気に入りクリスピークリームドーナツだ。でもそれを食べると波留や宏樹を思い出す。

「明日はママが店番してあげるから」

「うん」

「どうしたの? あまり嬉しくないの」

「ううん」

「ゆっくり寝たらいいじゃない」

 珍しいママがそんなことを言うのは、でもわたしも気になってたから明日メモの住所に行くことに決めた。


 次の日わたしは早く目が覚めた。わたしは雅矢の住む場所にむかった。昨日おばあちゃんに場所を聞いた。ここから歩いて20分かかる。それでも歩いた。  

 道中のモヤモヤ感がわたしの足元を重くする。しかも歩く山並みも色が黄色系に色づき初めていた。知らない間に初秋に近づいている。わたしもあと二週間しか長野にいない。これ以上疑問だらけだと帰るに帰れない。そんな、はやる気持ちばかり募らせる。

 わたしはなぜに雅矢に、こんなに執着しているのか冷静になるわたしが聞いてくる。二週間もすれば会うこともなく、それぞれの生活をこなすだけだ。

 それなのにわたしは、ただ単に今の状況から雅矢が去られのが怖いだけだ。だがらしがみついてる。それがわかっていてもそれ以上に、しがみつく。

 なんとかして同じ話題を作って雅矢と繋がろとしている自分がいた。でもなんだかんだでも今は雅矢を失いたくない。 ただわたしは雅矢と一緒にいたいだけだ。

 わたしにこんな純粋無垢なプラトニックな内面があったのだ。

 Googleマップを頼りに歩いた。けどやっぱりおばあちゃんの言ったとおり、今この場所は空き地だった。

「やあ、亜子よくきたね」

 あきらめようとした時、雅矢がやってきた。

「雅矢」

「くると思ってた」

 その雅矢の瞳は、なんだかいつもと違う雅矢だった。

「雅矢、ここに住んでるの?」

 わたしは雅矢に聞きたいことばかりで、なにから聞いたらいいのか整理がつかなかった。

「ここ空き地じゃない。しかも山のふもとだよ」

 雅矢は背中を向けた。

「もしかして雅矢••••••」

「雅矢ここにいたのか。随分探したよ」

「ナミちゃんのお兄ちゃん!」

 今回も閲覧してありがとうございます。

雅矢との距離が縮まったと亜子は確信した矢先、雅矢のまだ分からないことだらけだった。そこにナミちゃんのお兄ちゃんが現れた。雅矢とナミちゃんのお兄ちゃんは以前から知り合いだった。

そこに隠されていたこととは? いよいよクライマックスに向けてラストスパートです。

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