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最終章 とどけぇーー

 雅矢に誘われ草原やひまわりの丘で楽しんだ亜子。

そして雅矢と一緒に行く盆踊り祭と花火大会を楽しみにしていた。だが少しだけ、げんさんに頼まれた余興イベントでピアノを弾くことが心配だった。その夜おばあちゃんの誘いで一緒に寝ることになった亜子は、おばあちゃんと色々な話しをしながら眠った。

 おばあちゃんが一番お気に入りの赤黒絵柄の牡丹柄浴衣を選んでくれた。  

 何枚も折り重なる赤と黒の牡丹が浴衣全体の白色に目立った。帯も赤だ。大人っぽいとおばあちゃんが選んでくれた。 これも今でいう勝負服なのか? 

 もしやおばあちゃんは雅矢のことを知っている気がしてならない。わたしは雅矢からもらったクッピーラムネを舐めながら、ステージイベントでショパンの革命エチュードとパッヘルベルのカノンをピアノで演奏した。

 集中して五感を使うと勝手に指先が動く。(なんだろうこの指先の感覚?)革命エチュードで激しく鍵盤と黒鍵を叩いた。 繰り返されるアップダウンリズムは長野にきてからのわたしの心境と似てた。

 2曲目はカノンだ。失敗をどこかに怯えながら弾いた。柔らかなメロディが心地良く体に響く。ほとんど弾いたことがなく、決まってから一週間しかたってない。でも不思議な現象で最後まで弾けた。

 まるで自分が弾いてないようだ。指先に思いを込めて家族に、そして雅矢に届くように。

「亜子ちゃん上手だったよ。お願いしてよかった。思わずピアニストかと思ってしまったね」

 げんさんが満面の笑みを浮かべ満足そうだ。でも一番聴いてほしいママにもおばあちゃん、そして雅矢もこの場所にはいない。ママは東京、おばあちゃんは店番、雅矢は急な私用でピアノは聴いてくれなかった。(急な私用ってなんだよーー)何度も心で叫んだ。一番聴いて欲しい人達が誰もいない。

 ステージイベントが終わると、わたしは急いで雅矢の待つ盆祭り会場に向かった。

「ごめんよ。急にステージイベント聴けなくなって」

 雅矢が両手で謝ってきた。

「いいよ。ピアノ無事に弾けたよ」

「亜子なら弾けると思ってたよ」

 妙な雅矢の安心しきった表情はなんだ。

「亜子の浴衣姿よく似合ってるねぇ」

 予期せぬ服装チェックは赤面しそうで恥ずかしい。

「雅矢の浴衣も、よく似合ってるよ」

 わたしも同じ言葉を返した。初めて白Tと短パン以外の雅矢だ。浴衣は、手ねぐいと同じ桜紋柄だ。

「なんだか雅矢、別人みたいに凛々しいよ」

「ありがとう」

 雅矢が手を握ってきた。不意打ちにわたしはドキドキ鼓動が早くなり手汗が出た。雅矢の握っだ手が冷たくて気持ちがいい。

 会場を包み込む提灯の灯りが幻想的だ。まるで手作りのイルミに見える。太鼓と笛の音が、盆祭りを演出し、わたしと雅矢の夏に彩りをつけてくれた。そんな空間を雅矢と歩く。(このまま時よ、止まれっーー)何度も握った雅矢の左手に思いを届けた。

 ベンチに腰掛けて屋台のかき氷を買って食べた。

 雅矢は、いちごのかき氷を随分と気にいったようだ。

「雅矢、かき氷初めて食べるみたいで、大げさだよ。頭がキーンとこない?」

 雅矢は首を横にふり三分で食べきった。食べっぷりがいいので、わたしのレモンもあげた。

 ほんと雅矢は無邪気心旺盛だ。鉄の鎧で覆って生活する、わたしと対照的だ。その鉄の鎧が雅矢に溶かされていきそうだ。素直に、わたしは雅矢が好きだ。素の自分でいいのだ。 わたしは雅矢の左腕を両手で、離れないように強く腕組みした。

「ゴホッ、ゴホッ」

 雅矢が急にむせて咳き込んだ。

「雅矢、盆踊りってそもそもなに?」

「祖先の霊を供養するための踊りらしいよ」

「ふぅーーんーー」

 改めてわたしは、興味のないことには、知らないことが多すぎて恥ずかしくなる。

「知らなくても大丈夫だよ。これで覚えたんだから」

 わたしの考えてたことを 優しくフォローされた。(わたしは雅矢への思いを圧縮された心が爆発しそうでくるしーーよぉー)

「もうすぐ花火だから行こうか」

「うん」

(今度はわたしの心が誘拐され、わたしは抜け殻状態だ)

 打ち上げ花火が連続で大きく開いた。つぎに山並みに響いた低音が時差で、シャワーのように全身に浴びた。

「すげぇーー、すげぇーー」

 雅矢が両手を広げ色鮮やかな花火に、はしゃいだ。夜空に舞った三十分の花火ショーは最高だった。

 今日はわたしにとって忘れられない夏ストーリーだ!

「これ」

 雅矢が帰りかけにメモをくれた。

「おれの情報。帰ってから見て」

 興奮する私は舞い上がってしまい、そのまま巾着袋にしまった。

 月光ってこんなに綺麗なんだ。太陽の光と違い優しい光が心地いい。月光のシルエットが、ほてる気持ちまでも抑えてくれる明るさだ。

 こんな日に、ひとりで寝るのがもったいない。だから今日もママがいないからおばあちゃんと寝ようと決めた。

「おばあちゃん、この住所わかる?」

 おばあちゃん家に帰ると、雅矢からもらったメモの住所を聞いてみた。

「ここねえ、ここって」

 今回も閲覧していただきありがとうございます。

いよいよ最終章に入った物語。亜子と雅矢の関係性もお互い近づいた距離に入りました。お互いが意識するうちに、亜子にはある変化が生まれます。

そしてその変化で、どのように亜子は成長していくのでしょうか。

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