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断罪とギロチンと、少しだけ首切り役人

 あたしは目覚めた。本日幾度目かの覚醒だろうか。クレーターのほぼ中心で、恐らくあたしは死んで、復活したのだろう。

 体を起こす。

「あいつは……!?」

 あたしがぐちゃぐちゃにしたはずのあいつがいるはずの方を見る。裏切者の――。

「あれ?」

 少し遠くを見ると、誰かの影が蠢いている。あれは……。

「ギロチンさんーーーー!!!!生きてますかーーーーーーっ!!!!!どこにいるんですかーーー!!!生きてても死んでてもどうかお返事をーーーーー!!!!!」

「首切り役人!?」

 あれ、死んだはずでは。

「あ、みつけましたぁーーーーーーーーー!!!!」

 そんなあたしの驚きも知らず、彼女はあたしの胸に勢いよく飛び込んでくる。

 とりあえず生粋の肉体派である彼女の、その全力の突進をまともに受けたら普通に死にかねないので、ひらりと躱す。我ながら闘牛士顔負けの華麗な躱しだったのではないだろうか。

「あ、あれぇー?首切り役人ちゃん、殺されたのではぁー?」

 とりあえず疑問はさっさと氷解してしまいたい。

「え?わたくしめが?はっはっは、ご冗談を!」

「ま、まあそれならいいけどぉー」

 とりあえずいつも通りならよかった。そう思ったのだが。

「まあ、本当に冗談、と言えたらよかったのですけどね……」

 何やら気になることを言い始めた。

「……何があったのぉー?」

 流石に聞き出さざるを得まい。そんなに不安げな声を聴いてしまったら。

「い、いえー?なな、ななななな、何でも、何にもありませんでしたよ!!???なな、なにを言っているのやら!!!??」

 わかりやすいことこの上ない。だが、このままでは何も聞き出せないだろう。まあ、首切り役人ちゃんは何でかあたしを敬愛しているため、ちょっと問い詰めれば聞き出せるはずだ。自分でもいうのもなんだけど。

「ふーん?まあ、なぁーんにもなかったならいいけどぉー?ほんっとぉーにぃー?なぁーんにもぉー?なかったのぉー?」

 にんまりと口に笑みを浮かべながら詰問する。

「ねぇー?」

 首切り役人ちゃんの額にはびっしょりと冷汗が浮かんでいる。吐くまでもうすぐだろう。

「え、ええ、ええ、えーっとと、ととと」

 震えている首切り役人ちゃんの肩に手を置き、顔をずいっと近づける。

「ね?何があったのかなぁー?」

「えーっと、あの、その……」

 観念したのか、彼女は吐き出すように一気に話し始めた。


「んーむむむぅー」

 首切り役人の話によると、昨夜出ていった断罪ちゃんを追いかけたところ、再びあいつと相まみえたらしい。そこで一度断罪ちゃんは首を斬られたのだが、どういうわけか首なしのまま体だけ動いて、あいつを追い払った。その後断罪ちゃんの体が自ら首を拾って、無事つながったようだが、その光景に呆然としているうちに、首切り役人ちゃんは、今度は断罪ちゃんに首を斬られてしまったという。

「えぇー?それほんとぉー?」

「もちろん、本当のことでございます!!断じて、一分たりとも、ほんのすこーっしも、嘘など交えておりません!!!」

 そんなことを言いながら首切り役人ちゃんは土下座の体勢を取っている。

「すごい突拍子もないよなぁー……」

 そんなことを言いながらも、あたしは別に首切り役人ちゃんのことを疑っているわけではない。事実、首切り役人ちゃんは首だけで戻ってきたわけだし。

 問題は、断罪ちゃんがなんでこんなことをしたか、ということだ。首切り役人ちゃんが復活したということは、彼女はイリヤを殺す力は持っていないのだろう。それを彼女自身は知っているのだろうか。それとも知らずに首切り役人ちゃんを殺したのか。

 前者だとしたらいいが、もし後者だとしたら。本当に首切り役人ちゃんを“殺す”ために首を斬ったとしたら。

 その場合は、もう一度彼女を殺す必要がある。今この場にいないということは、あたしよりも先に目覚めてどこかに行った可能性が大きい。ならばどこへ行ったのか。

「あのぉー」

 土下座のまま、ほんの少し顔を上げて首切り役人ちゃんが声をかけてくる。別に謝ってほしいなんて言っていないから、土下座とかさっさとやめてもらっても構わないのだが、彼女自身が「自戒のため」とかいってその体勢を崩さないからそのままにしておいている。

「これは言おうかどうか迷っていたことではあるのですが……」

「うーん、情報はあって困るものでもないから、何でも言ってほしいかな」

 難しい顔で考え込んでいたあたしを見かねたのだろう。なんでもいいから何か言ってほしい。

「では、実は、断罪の輩から言伝を預かっておりまして……」

 そんな重要なことがあるのならもっと先に言ってほしい。

「言伝ぇー?なんか言われたのぉー?」

「ええ、まあ、殺される前に。えーっと、確かですね……

『……起きたら伝えといて。オルグは、私が殺す』

 とのことだったと思うのですけど、いやー、オルグって何ですか?」

 そういえば、こいつはあいつの名前を知らなかったか。まあ、それが誰かは察してほしい。あと、首切り役人ちゃんモノマネ意外とうまいな。特徴捉えてる。

「って、そうじゃない!は!?そんなこと言っていたのぉー?それならあたしが迷っている必要なんて微塵もないじゃん!!早く言ってよぉー!!」

「申し訳ありません!!ここで一生土下座しています!!!」

「そんなの求めてないからぁー!というか土下座は相手に許してほしいという意思表示であってぇー、どっちかというと自分のための行動だからぁー!!」

「ではどうすれば!!?」

 今は首切り役人の馬鹿に付き合っている暇はない。無いのだが、動揺してついつい反応してしまった。

「とにかく、その言伝は本当に言っていたんだよねぇー?」

「不肖、この首切り役人の斧、ギロチンさんに対して嘘などつきませんよ!!信じてください!!」

 まあ、彼女が嘘ついたことなどないし、そもそも彼女は嘘がつけるほど器用でもないことはよく知っている。

「そっかそっかぁー?だったらぁー?」

 にんまりと笑みを浮かべる。

 未だわからないことも色々あるが、いくつかの事象はストンと納得がいったし、新たに分かったこともあった。

 断罪ちゃんは、やはり断罪ちゃんだった。変わったと思ったが、変わっていなかった。

 だったら、やるべきことは一つ。

「あ、わたくしめもついていきます!!」

 無言で歩き出したあたしの後を、首切り役人ちゃんは疑問すら吐かずについてくる。

「そうだねぇー、首切り役人ちゃん、ついてきてもいいけど、一つだけ約束してくれないかなぁー?」

「はい、わかりました何でも!!!何なりと!!!了解しました!!!頑張ります!!」

 たまに首切り役人ちゃんのあたしへの心酔ぶりが怖くなる。大丈夫か、首切り役人ちゃん。

 そんなことはさておき。

「あいつは、あたしが確実に殺すからねぇー?」


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