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戦闘の後

 いくらかの時が経ち。

 凄惨な傷跡残る廃墟に独り、俺は佇んでいた。

「はあぁぁ…危なかったぁ!」

 脚がガタガタと震える。

 自ら体を両断したときも驚いたが、まさかこんな奥の手を隠していたとは。刃の量も、速さも今までとは段違いだった。

 初めは本気を出していなかったのか?いや、違うだろう。最後のアレは全身全霊をかけた、己のすべてをかけた攻撃だった。だからその威力がいつにも増して高いのは当たり前のことだ。

 ゆえに、彼女のことはすでに終わったと考えても良いだろう。長い異世界生活だ。いずれ出会うこともある。その時に、俺がこの手で殺してやればいい。

 少しでも一緒に生活したのだ。その分俺がこの手で葬ってあげるべきであろう。それが俺の義務であり、責務だ。

 辺りを見回す。

 地面は抉れ、でこぼこと荒くなり、若干歩きづらい。一帯の廃墟は粉々に砕かれており、いかに彼女の猛撃が辺りを蹂躙したかが窺い知れる。

「……死ななくてよかった」

 ぽつりと言葉が出る。一度きりの人生だ。仮にすでに二度目であったとしても。まだやるべきことも、やりたいこともできていないのに、ここで野垂れるのはあまりに無念である。

 幾度もの修羅場をくぐってきた。死への恐怖心は確かに薄れつつある気がする。けれど、やっぱり死にたくないという感情はあるのだ。

 今夜の死闘はいつにも増して体力を消耗し、へとへとになって座り込む。

 上を見上げると右側が輝いている半月が、明部が下になるように傾いている。あれは上弦の月だったか、下弦の月だったか。

 そんなことは忘れた。

 けど。

 今なら思い出せる。

 この世界に来る前に俺が何をしていたか。どう生きてきたか。そして、その最期はどうだったか。相変わらず自分の名前だけはなぜか思い出せないが、それでも、自分が何者であるかが、はっきりとしている。

「今夜は店じまいだ。ゆっくり休もうか」

 あれだけの死闘が繰り広げられたのだ。通常そこにいるのは、疲労した勝者と、敗者の骸である。この世界の住人は万全の状態の者同士で戦う傾向が強い。

 さらに、彼らはそれぞれの領地を持っている。ここは彼女の領地であっただろう。ならば、彼女がいない今、ここは誰もいない、ただの廃墟に過ぎない。

 だから。

 疲労困憊であった俺は、その場に倒れこむと、すぐに寝息を立て始める。

 そのすぐそばに、見覚えのあるポーチが落ちていた。


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