緋色の眼を持つ少年第五十八話
まさか…
透さんの両目が僕の緋色の眼の様に赤い。
美由紀さんが待ち焦がれていたのは…
透さんだったのか?
懐かしげに美由紀さんに話し掛ける。
『済まなかったなぁ…
君を独りボッチにしたままで…
今でも君はあの頃のままだ。
本当は君との約束を果たしたかったんだけど…
永井の長男である良美が死んでしまったので…
後継者が必要だったんだ。
漸く…和美が来てくれた。
これで…僕は君との約束が果たせる。』
約束ってなんだ?
もしかして…
考えるだに…
恐ろしい。
先程までの禍々しさが消え失せた美由紀さんが、透さんに尋ねる。
『あなた…随分と年をとったのね?
もう…あの頃のサラサラの髪は…
真っ白に…
でも…その緋色の眼だけは今も変わらない。
ねぇ…一体どれだけの時間が過ぎ去ったの?』
『そうだなぁ…
10年は過ぎてるよ。』
『そう…私はあれから…10年以上も生き長らえてたのね…』
美由紀さんは、自分が10年以上既にこの世の人で亡くなっていることを認識してない。
ふと…ある疑問が頭をよぎる。
何故…
透さんは、美由紀さんの怨霊を10年以上ほったらかしにしたんだ。
それは…
永井の家の為?
それとも…僕の為…
まとわりつく思念を振りほどくように…
頭を左右に振った。
『美由紀さん…』
透さんが、真剣な表情で…
『あの時の約束を果たそう。』
『ええそうよ…私は今…
この瞬間の為に…
生き長らえてきたのよ!』
『ああ…そうだ…
君は僕との約束の為に
この洋館に繋ぎ止められ…僕が来るのを待ち詫びていたんだ。
君はあの日…
町を出たいと言った。
しかし…君は…体が弱く…この家から出る事すら出来ない。
僕も…何の生活力の無い少年の身で…
君をこの町から連れ出すことなんて…
出来なかった。
そんな、僕らの事情なと…お構い無く君の病状は悪化していく。
ベットに横たわる。初めての理解者…
呪われしこの身と心を優しく包みこんでくれた唯一の人…
ベットに横たわる君の手を取り…
決して君を独りにしない…寂しい思いはさせたくない。
僕の魂を君の側に侍らせて未来永劫…
君の魂と一つでいたい。
だけど…
君は寂しくこの世を去った。
僕も諸々の事情があり…
君の側には来れなかった。』
そして…透さんは僕を見つめ…
『後は頼んだぞ…
もう家業の事は気にしなくても良い
永井の家を守ってくれ。
暫くは忙しい日が続くだろうが…
済まない…俺はこんな言葉しか…お前に掛けてやれない。
和美…ホントに済まないなぁ…』
と、僕にとても寂しげで憂いを帯びた表情で語りかけ。
『さぁ…美由紀さん…
一緒に行こう…』
と、美由紀さんに向き直り…両手を広げた。
美由紀さんは、硝子のような瞳から一筋の涙を流し…艶やかな黒髪を靡かせながら、透さんの広げる両手の中にある。
透さんの胸に飛び込んだ。
美由紀さんの口許が
『嬉しい…』と、動いたように見えた。
胸に飛び込んで来た美由紀さんをしっかり抱きしめ。
スゴく落ち着いた声で…
『僕の心臓を握り潰すんた…
それで…僕は君と一緒に逝ける。
さぁ…最後まで君を抱きしめているから…』
と、透さんは…美由紀さんをきつく抱きしめ…
暫くして…
『ウッ…』と、うめき声を上げて床に倒れた。
僕には床に倒れた透さんの体から…
美由紀さんの手に取られて引きおこされる透さんの魂が見えた。
二人…未来永劫まで…
一緒に居よう。
その幼い頃の二人の約束は今…
果たされた。
二人で手を繋ぎ…ニコヤかに空に昇って行く。
僕は…ハッと我に帰り…
階段をかけ降り…
瑞代ちゃんの元に駆け寄った。




