緋色の眼を持つ少年第五十六話
僕の苛立ちを見透かす様に、美由紀さんは…
『その女の子が心配なの?でも…足手まといみたいね。』
『足手まといなんかじゃない。
護らなきゃいけない人なんだ!!』
と、今度は美由紀さんを突き放す様に叫んだ。
『そうなの?
そんなに、その子が大事なの?…』
大事な人だ!!…
と、叫ぼうとしたとき…
美由紀さんの背後から…
あの…清水靖子さんや透さんが見せた。緑とも、青ともつかない色が吹き出し始めた。
まるで透さんが吹き出した緑より…黒みが掛かってる
初さんは、この光を怨念だと言った。
この怨念に触れると…
破滅を迎えるとも言った。
それは、本人に返って来る…とも言った。
だが…
多分美由紀さんは、この世の人じゃない。
怨霊ではないのか?
では…怨霊が怨念を吹き出すこれは?
なんなんだ。
頭を掠めたのは…
悪霊…
そんな言葉が浮かぶ。
全身の身の毛がよだつ…
『いいわ…そんなに…その子が大切なら…
その子を二階に連れて行くわ…
大事なんでしょ?
護らなきゃいけない人なのよね?』
そう僕に語りかけると
今まで押しても引いてもままならなかった瑞代ちゃんの体が…ガクン…と動いた。
僕は耳元で…
『瑞代ちゃん!!行っちゃダメだ!!』と、何度も叫んだが瑞代ちゃんの意識には届かない。
美由紀さんか開け放つ玄関に向かいユックリと体を起こし…
体を揺らしながら歩いて行く瑞代ちゃんの体にしがみつき…何とか押し留めようとするものの…
この細い体の何処にこんな力があるんだ!!
押し留める僕を押し返し
玄関に入ろうとする。
僕はなすすべもなく
玄関に押し込まれた。
僕の体を押し退けて
瑞代ちゃんは、玄関脇の二階への階段に足を掛けた。
その頃には、あの穢してはならない程に磨き込まれた家の中は朽ち果て…
床は反り返り誇りはうずたかく積もっている。
美由紀さんに連れられる様に階段を一歩一歩体を揺らしながら上っていく瑞代ちゃん。
手を伸ばせば届く…
なのに…
足が前に出ない。
遂に…瑞代ちゃんは、美由紀さんの部屋まで入ってしまった。
僕の足元を小さな影が走り抜けた。
いや…影では無い。
白くて小さいものが走り抜け階段を駆け昇り…
『ワン!!』
と、吠えた。
チョコだ!!
それは…まだ子犬の咆哮だったが僕の呪縛を解くには十分だった。
呪縛が解けた僕は反り返った床をものともせず。
埃を撒いたたせながら…
美由紀さんの部屋へ飛び込んだ。




