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緋色の眼を持つ少年  作者: カモメ
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緋色の眼を持つ少年 第五十五話


透さんからのメールは、いまだに届かない。


瑞代ちゃんを抱える様に抱きしめながら…

次に美由紀さんが、いつ静寂を乱して僕に語り掛けてくるのか?


僕は…瑞代ちゃんの温もりを感じながら緊張の糸を切らさぬように、美由紀さんに気を配った。


秋の夕暮れ…

釣瓶落としの様に陽が沈み逢魔が刻の闇が押し寄せ

肌に触れる空気が冷たくなっていく。虫の声すら聞こえないシン。と、静けさが、耳の奥で騒がしさを感じる。


《ドクン!!》


心臓が大きくバクついた。

初さんが…言ってたじゃないか?


怨霊が住まう家には虫の声すら聞こえない。と…

やはり…

美由紀さんは、念をこの世に残し…

その念を成就させるため、現世をさ迷う怨霊なのだ。

僕の緋色の左目が…

現世と現を、同時に映し出すならば…


緋色の左目を閉じてみれば…

取り敢えず、美由紀さんの姿は見えなくなる。

そうすれば…

今は動かない体も、縛り付けられたような状態から解放され…

瑞代ちゃんの体を抱えて逃げ出せるかも…


知れない。

僕は、美由紀さんの姿を認められない不安を抱えながら左目をユックリと瞑った。


『和美くん?どうして赤い左目を瞑るの?

私にその赤い目を見せて頂戴…』


美由紀さんの哀願に等しい呼び掛けを無視する様に

右目だけで周りの状況を把握しようとした。


僕の右目には美由紀さんは映り込んで来なかった。


しかし…

穢れを許さない筈の洋館はその白ささえも失われ…

いつも美由紀さんの居る窓に靡く白く…

そよぐようなカーテンは、ボロボロに千切れ…

玄関脇の壁などは…

外材も剥がれ内材が飛び出している。


僕の目に映る穢す事を許さない洋館は…

廃墟のように…




朽ち果てていた。

そのまま…呆気に囚われていると

美由紀さんが

『ほら…和美くん…

いつまでその女の子を支えてるの?

さあ…その手を離して

私の手に、捕まって。そして、二人だけで私の部屋へ上がりましょう。』


今まで閉じていた左目を開き…

睨むように美由紀さんを見上げて

『瑞代ちゃんを置いては行けない。』と、ヤンワリ断った。


断わったつもりだったが

『いつまで貴方はその子に執着するの?

あの時に私と交わした約束を忘れたの?


今更忘れた何て言わせない。

その約束の為に私は今まで生き長らえてきたのに…』

美由紀さんは、深い悲しみとも、絶望とも取れる表情で…

僕を蔑むように見下ろす。

美由紀さんとサラサラの髪を持ち、両目が赤い少年とどんな約束を交わしたなんて…僕には解らない。


兎に角…瑞代ちゃんをこの場から引き離さなければ…

必死で瑞代ちゃんの体を抱えようとするも…

完全に脱力した人の体はこんなに重いのか?


瑞代ちゃんの体は、女子の中でも細いほうだ…

なのに、どうしてこんなに抱えあげるだけで、手こずるんだ…

僕は焦りの中で、思うようにならない。

苛立ちを覚えた。

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