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緋色の眼を持つ少年  作者: カモメ
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緋色の眼を持つ少年第五十二話

美穂ちゃんは、今日は都合が悪いと言う。

多分塾か、習い事へ直行なのか?

当然僕は瑞代ちゃんと二人で帰る事になった。


クラスの男子に見られでもしたら

多分…明日の朝は話題の的になる。

そんな事を避けるためにも僕らは少し遠回りをした。

周りの目も気になる。

だけど、クラスで一番人気の瑞代ちゃんと二人きりで下校するのは楽しい。

美穂ちゃんには悪いが、感謝の意すら覚える。


瑞代ちゃんの家の側の神社の前に置かれた狛犬が、秋の日の釣瓶落としの様に

自棄に沈みの早い西日に照らされ少し不気味だった。

左右非対称の狛犬は阿吽に別れ、僕らを睨むように鎮座していた。


この神社の前の通りは万葉の頃よりの本通りらしかったが…

時代が過ぎ行くうちにどんどんと裏通りに押しやられ鎮守の森共々時代に置いてきぼりをくらってしまった様にも思える。


『ねえ…和美くん?』

不意に声を掛けてくる瑞代ちゃんに反応し、

『なあに?』の返事と共にマジマジと瑞代ちゃんの顔を見詰めた。


そんな僕の反応など気にも留めずに…

『この神社で何時もチョコを遊ばせてるの…

本当は、もう和美くんに返さなきゃいけないのに、

お母さんもチョコに情が移っちゃって…』


その先は言われなくても解る。

最初僕が永井の家に引き取られた時…

マルは吠えこそしなかったが、僕は身近に犬と接した事が無かったので少し苦手だった。

しかし三日も経つと、マルの警戒心がとけたのか?

それとも僕を永井の家の一員だと認めたのか?

僕の姿を認めるとすりよって来るようになった。


こうなると、多少苦手でも可愛く思えてくる。

況してやチョコは生まれたての子犬だ…

さぞかし愛嬌を振り撒き

瑞代ちゃんのお母さんの心を鷲掴みにしたのだろう。

そんな事を考えていると…『あっ!和美くん!含み笑いをしてる!』

と、突っ込まれてしまった。

『ち、違うよ。これは、思い出し笑いだよ。』

今度は瑞代ちゃんがニヤリと笑い…

『和美くん…思い出し笑いはスケベの証拠だって知ってる?』


正直思いもよらない突っ込みにオロオロするうちに瑞代ちゃんの玄関先にたどり着いた。


『お母さん!!

ただいま!!

と、元気良く帰りの挨拶を聞き付けた瑞代ちゃんのお母さんが顔を覗かせた。


』あらっ?

お友達?それならそれで一言電話でも入れてくれないと…』

とたしなめる様に言っている、その足元からチョコが飛び出して来た。


本当の飼い主である僕には見向きもせずに

瑞代ちゃんに飛び付いた。

瑞代ちゃんの腕に抱えられ僕らとチョコは居間へと向かった。


居間でソファーを勧められると、

漸く思い出したのか僕の足元に擦り寄り小さな尻尾を振って来る。


『あのね…お母さん…彼がチョコの本当の飼い主の永井和美くん。』


『あらあら、そうなの?

ごめんなさいねぇ…

何時までもチョコを預かってて。』


『とんでも無いです。

元々他所の家に引き取られる予定だったので…』


『そうなの?…

うちの子も私もスッカリ情が移っちゃって

今じゃ家族同然なのよ。』と、瑞代ちゃんとそっくりな笑顔を僕に投げ掛ける。

将来…瑞代ちゃんはこんな大人になるのかと思った。

『ねえ…和美くん…そろそろチョコと散歩に行かない?』

と、瑞代ちゃんが僕を誘う。

『瑞代、折角お友達が遊びにみえたのに、お茶も出さないうちに…』

お母さんの言葉を遮る様に『だってぇ、直ぐに真っ暗になるわ

帰って来たら温かい珈琲でも頂くわ。』


そして僕と瑞代ちゃんは、チョコにリードを着けて玄関を出た。



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