緋色の眼を持つ少年第四十七話
透さんなりの落とし前…
僕は《ゾクリ》とした。
江崎さんも同様に狼狽えた。
『いや…
裁判は物の例えで…
あなた達と事を構えるつもりは無いんですよ。』と
最初の勢いなど微塵もない。
透さんはそんな…江崎さんの態度の変化など、
心にも止めずに…
『僕は、弱者…特に子供に暴力を振るう奴を許すつもりはありません。
和美は、今まで虐待を受けて来ました。
江崎さんの暴力で和美はあの悪夢の様な時代を思い出したでしょう。
江崎さん…
貴方の行為は、僕なりの落とし前をつけなければなりません。
覚悟を決めておいて下さい。』
江崎さんは明らかに狼狽え始め…
恐怖の色を顔に浮かべた。
『悪かった!!和美くん。
僕に出来る事は何でもする。
今すぐ病院に行こう。
そして…
治療費も…診断書に見合う慰謝料も払おう。
だから…君からも透さんにとりなして貰えないか?』
僕はチラリと、透さんの顔色を伺い見た。
透さんの顔色は未だ無表情で伺い知れない。
だけども、何故か恐怖が押し寄せる。
江崎さんは逃げるように玄関で躓きながら帰って行った。
透さんは、
『和美、一寸付いて来い。』
と、立ち上がり廊下を勝手口に向かい歩き始めた。
慌てて玄関から靴を取り
勝手口から出て行く透さんを追いかけた。
勝手口から続く階段を登って行くと綺麗に掃除されたお墓に出た。
『和美…これが初さんのお墓だ。』
『綺麗に掃除されてる。』僕の問いに答える様に…
『姉さんが毎日綺麗にしてるんだ。』
すると…墓石の裏から初さんが出てきた。
『透…何をそんなに怒っておる。』
『和美が大人に暴力を受けた。
しかし相手は反省などしてない。』
『透…お前も和美も虐待と言う地獄を見たから
子供に暴力を振るう大人を許せないのは解る。
だが…たからと言って狗神を飛ばさんでも良いじゃろう?』
僕は驚いた。
狗神を飛ばす?
って事は、マルを繋ぎ…
餌を与えず…怨念が全てを占めた。その時に首を切り落とす。
そんな事は駄目だ!!
僕はそんな事を見たくない。
『透さん!!マルを殺すのはやめて!!』
透さんは漸く優しい顔を僕に向け
『マルは殺さないよ』と、答えた。
『だけと…狗神を飛ばす事はやめない。』と言葉を続けた。




