緋色の眼を持つ少年第二十話
僕が浩子さんの前で項垂れていると…
透さんが、玄関で長靴を脱ぎ…
僕らの所にやって来た。
『江崎さんには、納得して貰えた?』と
浩子さんが尋ねると…
『多分納得はしてない…
でも…お帰り願った。』
と、透さんが返事をすると…
『チョコは渡さなくてもいいんだよね?』
『ああ…』と優しく相槌をうつ透さん…
『和美!!…
今は犬の事を心配してる場合じゃ無いでしょう!?』
と激しい口調で、浩子さんにたしなめられた。
僕は少し…上目遣いで、透さんに
『学校まで付いてきて欲しい。』
『ん…どうして?』
軽く疑問の表情を浮かべる透さんに…
『この子!!学校にランドセルも何もかも、全て放っぽって、帰って来たのよ。!!透!!…アンタからも確り注意しなさい。』
『まぁ…姉さん今回は仕方がないよ…
和美も必死だったんだ。
人外の者が…
教室に現れたんだから。』
『そうなの?和美?』
僕は浩子さんの方へ振り返り…頷いた。
『姉さん…和美と二人で、学校に、荷物を取りに行くよ。…
和美…軽トラに乗っていこう。』
僕は頷き…透さんの後に続き、玄関を出て、軽トラの助手席に座ると
『和美…一寸待ってろ。』とマルの側にしゃがみ、
右手にチョコを抱きしめ軽トラの運転席に乗り込むと…
『ほら…お前の相棒だ…』
と真っ白で睫毛まで白く…だけど尻尾の先が、チョコンと黒い…
チョコを僕に抱かせてくれた。
『良いの?』
透さんは何も返事せずに
軽トラのエンジンを掛け
発進させた。
心配そうに、軽トラを目で追うマルの姿が心に焼き付く。
しかし…
いきなり人の手に抱かれたチョコが僕の腕の中で暴れる。
『確り抱いて頭でも撫でてやれ…
軽く噛みつくが痛くない…兎に角お前の臭いと温もりを確りと覚えさせるんだ。』
透さんは窓を空け…
胸ポケットから、マイルドセブンを取り出し…
一本口にくわえ…
シガーライターの火をタバコの先に着けて…
ユックリと…
とても旨そうにタバコを吸い込む。
タバコの先の火が真っ赤に燃える。
左の指でタバコを挟んで
口から話し…
『ふうぅ…』とタバコの煙を吐き出した。
タバコの先に灰がたまる。灰皿にポンポンと灰を落とす仕草は、芳典や祖母と良く似ている。
僕はタバコを吸う祖母の仕草や姿が嫌いだった。
それが…
透さんだと…
何故か大人の仕草に見える
『透さんもタバコを吸うんだ?』と尋ねると…
『たまにはな…』とタバコをくわえたまま、ニコリと笑った。




