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鉄槌の優等生~勉強だけの人生だった彼女は自由に生きる事を決意する~  作者: 鳳翔雨月


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23話 盗賊狩り(2)

お読みいただきありがとうございます!


 落ちていた枝を拾って、地面に段取りを描いていく。

 頭の中だけじゃなく、こうしてイメージを書く事は相手に伝える意味でも重要だと思う。

「エルは高い台で狙撃。出来れば……リーダーがいいけど……贅沢は言えないでしょう。薬の効果だけど……正直どれぐらいで効果が出るのか分からない。これ、農薬だからね……。だから目標はなるべく偉そうな人で。上が死ぬと混乱が大きくなる筈だから。私は出来る限りアジトの近くで待機。薬が効いて体調を崩し始めた盗賊から仕留めていく」

 私たちが調べた盗賊のアジト付近のメモを地面に書き込んでいく。エルは顎に手を当てながら時折頷くので問題ないだろう。

「弾丸はどう?」

「弾丸は結構作ったけど、鉛はいいとして……火薬が切れかけてる。でも今回の戦いで無くなる程じゃない」

 正直戦いの鍵はエルだと思っている。私がいくら頑張っても所詮はただの女子高生の戦力だ。多少戦場で鍛えられたからと言って、出来る事は限度がある。

「人数は多くても20人……か」

 二人で森の中を音に気を付けながら人数を探るのは中々に辛い作業だった。火を焚けば盗賊に気が付かれる危険性もあるのでジーモに分けてもらった干し肉をかじりながらの望遠鏡を覗く一日。

 エルと二人交代で森を下り物資を補給したりしながら、彼女と身を寄せ合う様にローブを被って観察した成果である。

 出来得る限り準備を整えたいが……。二人で話し合い、三日後を作戦決行日とした。これはエルが

「ずっと準備不足って……いつまでも時間をかけらんねぇだろ? 慎重なのはいいけどさ……お前自身が言ったんじゃねぇか。いつグゥワイ家から追手が掛かるのかも分からないってさ」

 エルの言葉にそのまま黙る。

 全くのその通りだからだ。

 だから三日後までと時間を区切った。エルの言う通り私はいつまでも準備の為に時間を使いそうだったから……。

 出来得る限り盗賊たちの行動を調べ上げた。

 やはり組織だって動く事はあまりない。けれどどうしても集団ゆえに決まったの役割と言う物がある。

 残念だったのは盗賊のリーダーらしき男を見つけることは出来たものの、エルの狙う位置から狙撃が難しい事だった。

 望遠鏡を銃の上部に取り付け、スコープぽくしたりしてみたものの、やはり手作りの銃では高精度の狙いは難しい。結局は当初の計画通りに、という事になった。

 エルが決めた位置に移動する前、私に振り向く。

「国を出た時みたいに乱戦じゃないから……気を付けろよ。まぁ、今度はワタシも援護に集中できる状況ではあるけどな……。死ぬなよー」

 最後は軽い調子で森の中へ消えて行く。

「全く死ぬ気はないから大丈夫」

 エルの背中を見送り、私も最後の準備に向かうのだった。




 予め用意していた身を潜めるポイントに到着。

 私のいる場所から少し下流の開けた場所で盗賊たちはいつも水を汲む。

 自分の呼吸音と、木々の揺れる音だけだった世界が終わり、盗賊たちの品のない笑い声が耳に届く。

 毒を川に流すタイミングが難しい。何度か砂などで実験して流れる時間とタイミングを計った。

 盗賊たちの見た目は粗野で服装も毛皮や荒革のものが多い。お世辞にも身ぎれいとは言えない見た目だ。

 私自身それなりに離れた場所にいるのだが、それでも匂うのはかなりの間風呂に入っていないのだろう。

 それぞれがそこそこ大きな樽を抱えているので、腕力はあるのかもしれない。

 頭のなかで何度もしたシミュレーション通りに時間を図る。

「っ……」

 出来る限り静かにポケットから毒を川へ。

 直ぐに水に溶けていき、見た目には全く分からなくなった。

 盗賊たちは仲間内の話題が盛り上がっているのか、大笑いしながら水を汲み終えた。

 彼らの後ろ姿を息を殺しながら眺め、十分な距離が出来たところで後を追う。予め作っておいた自分の足の踏み場をなぞり、出来るうる限り音が鳴らない様に細心の注意を払う。

 ギリギリ盗賊のアジトが見える範囲の藪に再び身を潜めた。

 盗賊のアジトは森の中の広場にあり、簡単な砦と言った風貌だ。けれど深い森の中はそれだけで天然の要塞になりうる。奴らのアジトがある場所は元々隣の国へ出る小道の途中にあり、開けている場所故に一息つく休憩場所のような感じだったようだ。

 それを検問所の様に陣取り、道行く人を襲うということらしい。

 藪の中でどれぐらいの時間が経っただろう。

 相変わらず盗賊に動きはない。既に日は傾き、夜がすぐそこに近づいていた。

 完全に夜になれば仕切り直し、とエルと約束している。夜は奇襲には便利だが、エルの狙撃も出来なくなる。なので完全に日が沈んでしまえば仕切り直しだと決めていた。

 けれどこれは大きな危険もはらんでいる。もし私たちが退いた後に、毒の効果が出て異変が起これば彼らも警戒を強める事になる筈……。毒を盛ると言う作戦に次はないだろう。

 けれど……。

 にわかにアジト内が騒がしくなる。

(よし。一番いいタイミングだ)

 まだ日の光はアジト内を照らしている。それでいて適度に薄暗い。

 私はフードを目深に被り直し……、数秒だけ深呼吸をして覚悟を決める。そして静かにアジトに向けて歩を進める。

「ぐぅ……、気持ちわりぃ……」

「おい、どうなってる!?」

「わかんねぇよ……」

 元気な者もいるが多くの男たちが地に伏せ、横になっていた。

 嘔吐や具合が悪そうに突っ伏す者。それらを無視して盗賊の頭目らしき男を探す。

 なるべくしっかり、ゆっくり足を置き音を殺す。アジト内はテントと質素なログハウスが並んでいる。

 エルには私が戦い始めたら援護する手はずだ。

 手下を幾ら消しても効果は薄いだろうし、殺して感情を高ぶらせるよりその辺で苦しんでもらった方がいい。

 けれど効果が薄いのか、それとも元も水を飲んでいないのか仲間を助けようと飛び出してきた者と鉢合わせする。

「ちっ」

「なっ! おま――」

 片手持っていたハンマーを横薙ぎに頭を狙う。

 鈍い音と共に男が倒れる。素早く首元を確認。確実に倒した事を確認して、見えない藪の中に放り込む。

「ふー……」

 焦る気持ちを落ち着け、丹念な確認を心がけて行動する。

 頭部は一撃で相手を倒せるけれど出血が酷いのは問題だ。幸いローブのお蔭で大半は服に付いてはない。けれど自分の顔だけはどうしょうもない。

 生臭い血を袖で拭う。

「おい! どうなってやがんだ!」

「わかりません! 突然……」

 広場で怒鳴り散らす恰幅のいい男。遠目に見たリーダーだ。

 肥満体だが相撲取りの様な脂肪の鎧と言ったところだろうか。上半身裸で野人と言った言葉が似合いそうだ。上半身裸でも腰に付けた装飾品は高価そうで、周りに指示とも罵声ともつかない叫びを浴びせている。

 向こうから出て来てくれるとは、幸運だ。

 だが彼はピンピンしていた。具合が悪そうだと言った感じはしない。尻を蹴飛ばしているのは副官だろうか。

 エルと二人、盗賊たちを調べた時も自ら表に出ず指示を飛ばしていた事からも全くの考えなしではない。彼を殺せば盗賊たちの戦力を削げるはずだ。

(勝負はすぐに決まる)

 気持ちを入れ直し……地面を蹴り、出せる全速で盗賊リーダー目掛けて走る。

 先に副官が気が付き、咄嗟に剣を向けてくる。が、彼は無視する。副官は私に攻撃が当たると予想し、僅かに笑みを浮かべた。

 けれど銃声と共に副官の肩から血飛沫が上がる。私は速度を落とさず副官の顎を下からすくい上げるようにハンマーで打った。

 死亡したかは分からないが手応えから確実に顎を砕いた。もう戦いに加わる事はできないだろう。

 副官が戦闘不能になり、大きく自身の優位は無くなったリーダーだが戦い慣れているのだろう、仲間が倒れても冷静に大振りな剣とも鉈ともつかない武器を手に取り構える。

 体格的に頭を狙っても大きな効果が出せないと判断して、低く身を屈めた。

(狙うのは……その巨体を支える足!)

 けど単純に攻撃しても防がれる。私は片手で砂を掴むと顔目掛けて投げた。

「ぐっ!」

 即座にその太い腕で防がれてしまう。けれど時間は出来た。

 再び私の後ろ側から銃声が聞こえたかと思うと盗賊のリーダーの腹部から失血する。

「ガハッ!? 魔法か!」

「その通り! 私の援護には強い魔法使いがいるからね! 大人しく死んでちょうだい?」

「ぐぅぅぅ! 小娘が! 楽に殺さねぇ!!!」

 この世界で魔道具を使う者を魔法使いと言うか知らないけど、適当に言っておく。

 盗賊のリーダーは頭部に血管を浮き上がらせながら怒りの声を上げた。腹部から出血しながらも盗賊リーダーの勢いは止まらない。その多く蓄えた脂肪のお蔭か、防御に使える魔道具でもあるのか。どちらにせよ、エルの援護には再び弾丸を込める時間が必要だ。

「ふっ!」

 力の限りハンマーを振るう。金属同士の擦れ合う音と共に剣に防がれ弾かれる。体勢が崩れるのを強引に修正して、今度は逆に振る。全身の筋肉が悲鳴を上げるけれど、自分の体を気にしていられる余裕がない。

 女の力では大したダメージにならない、と唇を噛む。けど私に出来る事は多くない。何度も打ち合い、薄暗くなったアジトに小さな火花が散った。だが意外にも相手は攻撃を防ぐだけで反撃をしてこない。

(そういうこと……普通銃で撃たれてダメージがない訳がない)

 戦い、荒事などに慣れた身ゆえに痛みを我慢しても戦えるのだろうが……。目に見えて盗賊のリーダーの顔色が悪くなってるのが分かった。

 それに動きも鈍くなってきている。

「いい加減ウンザリ! 消えて」

 休ませる訳にはいかない。未だに勝利の天秤は揺れ動いている。私自身全力でハンマーを振るい、手に力が入らなくなってきた。

 何度も力の限りハンマーを振り下ろす。全力で振り回す。

 徐々に膝を付き荒い息のままに盗賊リーダーが攻撃に対応できなくなっていく。

 私の攻撃が当たり、肉を叩く音が多くなり……最後にひと際い高い金属音がして――盗賊の剣が吹っ飛び、木々の闇の中に消えて行った。

「ちくしょうがぁぁぁ! この俺がこんな小娘にぃぃぃいい!」

「くっ!」

 終わりだと一瞬隙が生まれてしまう。ハンマーは振り抜いていて――盗賊のリーダーのタックルに対応できない。

 押し倒されれば体格差ゆえに抵抗できない事が容易に想像が付く。

「ッ!」

 私は体勢が大きく崩れる事を承知でワザとバランスを崩し、つまずく様に地面に転がる。

 それでも私の方が一手遅い。

(ダメ!)

 その時、遠くから残った夕日を追い払う様な鋭い音と共に再び盗賊のリーダーの腹に赤い花が咲く。

 私は勢いそのままに転がり、素早く立ち上がる。反対に盗賊は地面に転がった。

「はぁぁぁぁああ!」

 盗賊のリーダーの頭部目掛けて全力でハンマーを振り下ろした。

 盛大な血飛沫と共に四肢が一度痙攣。

「はぁはぁはぁ……」

 だがそれ以上は盗賊のリーダーが動く気配はなかった。

 しかし安心できない。盗賊は他にもいるのだから。

 慌てて、奇襲を受けないように周囲を警戒する。

「終わったよ。元気だったのは副官とコイツだけらしい――うわ、グロいな……」

 エルがひょっこり森の奥から現れた。言葉からは緊張感は感じられないが銃剣を構えて警戒は解いていないようだ。周囲を警戒しつつ、盗賊のリーダーを見ておもいっきり嫌な顔をした後、銃剣の先で突く。すでに頭部は肉塊で、確実に無力化できている。

「はぁはぁ……ふぅ……。それならいいけど……しっかり確認した方が安心できるわ。二手に分かれて安全を確保。あと残った奴は拘束ね」

「了解。しっかり仕事を終わらせますか」

 既に夜の支配は完全な物となり、周囲は暗い。だからアジト内のたいまつに火を付けながら、倒れ苦しんでいる男たちを縛りあげている。

 男臭い建物の中に吐しゃ物などがあるので更に臭い。布で口元を覆いながら、拘束していく。力が抜けた人間を動かすのは結構な重労働だ。

 盗賊を拘束し、更に念入りにアジトを探索した頃にはすっかり深夜になっていた。時計がないので正確な時間は分からないけど……。

「おぇ……」

 エルも疲れた様子で手近な椅子に座り込んだ。盗賊たちの手作りか、木製の武骨な物だ。

「こっちは終わったよ」

「ワタシの方も問題ない。これで依頼は終わりだな。こいつ等はどうする?」

 顎で倒れた盗賊たちを指すエル。

 盗賊たちは体調が回復した訳ではないので、呻きながら拘束されたまま地に伏している。一先ずアジトの広場に転がしていた。

 私はエルの視線を追って同じように盗賊を眺める。

「さぁね。リーダーは倒したし、動ける人もいない。依頼達成でいいでしょう。文句があるなら後でも殺せるし……。ギルドがどうにかするんじゃないかしら?」

「はぁ、そうだった。報告に村へ戻らないといけないんだった」

「貴女はまだいい方だわ。私はへとへとなんだけど」

 エルは気だるげに座ったまま私を見上げる。

「ワタシだって凄い神経使ったんだぞ……。弾丸を外したらお前がヤバいって……手汗は凄いし、緊張しっぱなしだったよ」

 目を見開く。

 それはエルが私を心配してくれていた、という事と同義ではないだろうか。エルも言ってから気が付いたのか、直ぐに自分の顔の前で手を振る。

「違うから。お前が死んだら、次はワタシになる。だから前衛が死んだらヤバイって意味だ」

 フッと笑う。

 そういえば、こんな風に誰かに心配してもらったのはいつ以来だろうか。元の世界ではなかった気がする。

「オイ、何で笑う」

「ふふ、私の中では嬉しかったから、かな」

「絶対違う意味に取ったろ!」

 肩を竦めて、村へ歩き出す。

 後を追ってきたエルがわざわざ肩をぶつけていくが、ほんのり耳が赤くなっているのが見える。

 少しづつだけど、私たちの間にも信頼という目に見えない物が生まれているのだろうと確かに感じるのだった。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

次回も明日【19:20】に更新予定です。


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いや、ホントに凄いモチベーションが上がりますので、ぜひぜひ、よろしくお願いします!!!


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