21話 生きる為の学び
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ジーモさんから学んだ事は非常に為になったと言えるだろう。
と言うのも私——エルもだったが——の戦い方は結局平野での戦い方だったと言う事だ。森などの障害物の多い地形で戦うとなれば相応の動きが必要になってくる事を痛感した。まず普通に森の中を歩く事は大変な事なのだ。木の根、蔦、足を取られる物は無数にある。
エルも平地では野生動物を長銃で仕留めていたが、森の中では全く当てられなかった。
初回は完全に足を引っ張ってしまった。けれど狩った獲物を運搬する人数が増えるだけでもありがたいらしく、この村の深刻な人手不足を感じた。
森の開けた場所はジーモが毎回休憩に使う場所で、木を切っただけのベンチが置かれており、対面にジーモ。隣にエルが座って彼の話に耳を傾ける。
「盗賊が消えて、人の流れが変わればまた違うんだろうけどな……。せがれも戻って来られる筈だ」
「おっさんの息子、帰ってこられないのか?」
「あぁ……森の向こう、隣国アルズに獲物を卸しに行ったきりだ。手紙は来てるから心配はないが」
迷惑そうに森の奥を睨むジーモに対して私は手紙は届くのかと不思議に思ったが、魔法がある世界である。何かしらの方法があるのだろうと納得した。
「さて……休憩は終わりだ。行くぞ」
ジーモの静かな声にエルと共に頷き、立ち上がった。リュックに手早く荷物を詰めたジーモの後に続く。
足音を殺し、ジーモの通った場所に同じように足を置く。ジーモに教えを請いながら森に入った当初、私は通り易くする為に鉈で枝や蔦を切り払っていた。
『低級の魔物相手や動物だけの森ならそれでも問題はない。だが同じ人間相手だと誰かが通った事を知られ、警戒される』
ボソっと呟く様に告げたジーモは器用に体を捻り、枝の間をすり抜ける様に通っていく。
『んぐっ! あーもう! 服が引っかかった!』
イラついた声で枝を手で払うエル。彼女と同じく私も色々な所に服を引っかけてしまう。
苦戦する私達を見ていたジーモから新緑色のローブを渡された。
『これを着ろ。だいぶマシになるだろう』
そのローブを着るだけで移動は一気に楽になった。枝に引っかかる事が減るし、変な虫が服の中に入ってくる事も少なくなり、快適度は格段に上がった。
ジーモと共に森に慣れる事、数日後。
「この森は山に繋がっている。そこへ登ろう。見せたいものがある。そこが今回の目的地だ」
ジーモも同じく新緑色ローブを身に纏い、黙々と進んでいく。
私たちも慣れないながらも、ジーモの後を追い……山の頂上付近へ辿りついた。
「見ろ、あれだ」
眼下には森の中の簡素な砦らしき物が見える。中では忙しなく人々が移動していおり、活気があるようだ。
「うぇ……結構な規模だな」
エルがローブのフードを上げて目を細める。
「ヤバかったな澄……。あのまま無策だったら確実に死んでたぜ」
「そうね」
ジーモと共に山頂に上った私達は盗賊のアジトを確認したその後、ジーモに狩りのやり方やサバイバル技術を学んだ。
……
…………
「エルマ……お前さんの武器は……威力も高く、狙える距離も長い。だが音がうるさいな。先に獲物を見つけ、一撃で仕留めないと狩りは失敗だ」
狩人と狙撃は相性がいいらしくジーモ自身見た事がない武器である銃であっても応用できる物は多いようで、エルの腕は目に見えて上がっていった。
「トオル……はエルマのサポートだ。今出来るのは接近戦だけのようだしな……」
基本的に弓を使い遠距離で獲物を仕留めるスタイルの狩人のジーモからしたら当然だろう。私も頷くしかない。
だが全く実りがない訳じゃない。
森での歩き方や獲物の捌き方——最初、私は普通に吐きかけてエルに呆れた目をされた。分かっていても動物を捌くというのは現代人にはキツい。人間は平気なのにね……——を教わる。
エルも我流のやり方より効率的で味を落とさない方法に関心していた。彼女自身知的探求心が高いので熱心に聞き入っていた。
私の戦い方にも全く無意味だったという訳じゃない。魔物や動物は往々にしてこちらより察知能力が高く、気が付かずに接近されていると言う事もよくあった。それらの対処方は例え人間相手であったとしても今後役に立つだろう。
「こればかりは仕方ない。魔物は元より動物は人間よりずっと察知能力が高い。ワシはとにかく逃げる。だがトオルが居れば対処できる筈だ」
エルが狙いを定めている間は私が警戒する。というようなスタイルを基本した。
元の世界では全く触れる事すらなかった経験の連続の中で私が楽しかったのは馬に乗った事だった。
ルルミナス国から出る際、一緒に連れてきた二頭の馬。荷車の近くに繋いでおいて、様子を見に行っていたのだが、ジーモが
「馬を持っているのか。ならば乗れた方が今後は役に立つだろう」
と言って基本的な乗り方を伝授してくれた。
彼曰く、気性が穏やかな馬の様で割と直ぐに乗れるようになった。エルは苦戦していたが。
御者は出来ていたのに、馬に乗るとなるとよく落とされ、尻を摩りながら悪態を付く。必死に馬にしがみつく様子は、悪いが笑ってしまった。もちろんエルにはキレられたけど。
こうして暫く技術を磨く日々を送る。
その間にも追手が来ないか警戒していたけど、追手が現れる事はなかった。
「教えられる事は教えた。後は地道に技術を磨いていくしかない」
不愛想な言葉と共に弟子入りは終わりを迎えた。
正直、態度こそぶっきらぼうだったが、真摯に教えてくれたと思う。そもそも彼の普段の仕事からすれば私たちはお荷物でしかなかった筈だが、食事も普通に出してくれたし、有意義だったと思う。
「ありがとう。ジーモさん。とても助かりました。この御恩はいずれ――」
「フン、礼などいい。そんな事より盗賊を早く退治してくれ」
「もちろん。盗賊は倒すわ」
「あぁ! ワタシたちに任せとけ」
やる気の高いエルだが最初は私の技術を学ぶっていう考えにもジーモにも疑いの目を持っていたが、惜しみなく狩りの技を教えてくれたジーモへ、恩を返そうと張り切っているらしい。
ジーモと別れ、私とエルは盗賊の根城がある地点へと静かに移動するのだった。
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次回も明日【19:20】に更新予定です。
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