幕間 ルルミナス国編 『ルルミナス国脱出前夜、二人の特製長銃』
お読みいただきありがとうございます!
今回の話は12話と13話の間の話になります。
今回でルルミナス国脱出編を終わり、一旦更新を停止します。
ストックが溜まるまで暫くお待ちください……。
「なんだよ! じっとしてろよ、鬱陶しいな!」
耐えかねた様にエルマが叫ぶ。
「大まかな計画は出来た訳だけど……意表を突く『何か』が欲しいと思ってね」
「だからって部屋の中をぐるぐる回るな! ただでさえ狭いんだから、埃が舞うだろーが」
「意外……気にするんだ?」
ベッドで横になりながら本を読んでいたエルマはこれ以上ないくらい綺麗な、だけど完全に目が笑っていない笑顔で本を閉じた。
「そりゃどーゆう意味だ? ワタシは毎回片付けてる! 散らかしてるのはお前だろ!」
「私は物を置いた位置をちゃんと覚えているから問題ない」
「それを片付けられないヤツってゆーんだ!」
エルマが部屋の中を歩いている私を止めようと手を伸ばしてくる。けれど私は身を捻って躱す……のだが、床に置いてあった本に躓きバランスを崩した。
「あっ」
「!?」
向かう先は手を伸ばしてきたエルマ。彼女を巻き込みベッドへダイブ。
「ぐぇぇ!」
私はエルマの柔らかい胸がエアバックになって衝撃が緩和されたのだが、当の彼女は私の頭に肺の中の空気を全部押し出されたらしく苦しそうな声を出して倒れ込む。
意外に甘い香りが両頬を包み込んだ。
「いつまで胸に顔埋めてんだ!! どけー!」
ぐいっと髪を引っ張られカチンとくる。右手でエルマのわき腹を殴る。
「ぐふっ!」
鳩尾に入ったらしい。が涙目のエルマと目が合うと今度は下から腹に膝を入れられる。
「ぐっ!?」
痛みで体を曲げ、再び彼女の胸に戻る事にってしまう。
そこからはお互い手と足の応酬である。
互いに荒い息と額に汗が浮かび始めた時だった……エルマの手がベッドサイドに積んであった本に当たったらしく、上に居た私の後頭部に直撃した。角が。
「っ~~~!」
目の前に火花が散って、三度目のエルマの胸に頭を収める事になった。更に雪崩と化しか雑貨が私たちの上に降り注ぐ。
「…………」
「…………」
どんな時でもフッと冷静になる時がある。今だが。
「澄……死んだか?」
「生きてる」
まだ目の前がチカチカするが。エルマの顔の左右に手を付いて上体を起こす。
「……? なんだよ?」
下になったエルマが怪訝そうに見上げてくるが、本の内容に目が釘付けになる。
ベッドの上に散乱した物たち。開いた状態の本。
偶然開いた本は魔道具に関する記述——エルマが前に解説してくれた内容でC級と呼ばれる生活に使える魔道具の一覧だった。一般エリアでも見かけた火種を起こす程度の小さな火の魔法が刻まれた魔道具がそれである。
それらから連想してひらめく。
「どうしてこの世界に銃器がないのかしら? これだけ異邦人が居て、異邦人の文化が浸透してるのに……」
「じゅうき?」
これには私も説明するのに苦労した。誰でも知っていて言葉だけで伝わる物が、知らない人には一から説明が必要で、頭を捻る事になった。
体を起こしてベッドの上、何とか言語化する。だがその言語化する為に説明するうち、私自身にも完成形が見えてくる。
「あー……。なるほど」
エルマは腕を組んで頭を掻いた。
「ファイヤーとかフルファイヤが刻まれた魔道具とかで……それで事足りるからじゃない? お前の説明を聞くと、道具を作るのは結構手間そうだから……。敢えて作る必要がないんじゃないかな……」
言われて確かにそうだなと納得してしまった。戦場で何度も身がすくむ思いをした魔法。炎弾がかなりの速さで飛んでくるので脅威だった。刻まれた魔法が違うらしく、単純に炎が飛んでくるものもあれば、着弾して爆発する魔法もあった。
「でも……だからこそ、私たちには必要なんじゃない?」
C級の魔道具を組み込んで銃を作る。この世界の人間から意表を突ける筈……。
私の言葉にエルマは目を輝かせた。
「確かに……その銃? っていうのなら作れそうだし、意表を突けるかも……」
エルマは一つしかない机の上に乱雑に置かれた物をこれまた雑に横にどけると紙にすらすらと設計図を書いていく。
「よーし」
どことなく嬉しそうなのは気にせいだろうか。
イキイキとしたエルマと共に武器屋で店主に銃身となる筒を作ってもらった。
単純な鉄の筒を私が見ている横でエルマが銃床となる木と火薬を机に並べる。火薬は意外にも簡単に手に入れる事が出来た。
「工夫なら持ってるだろ」
と言うエルマと共に出向いた先の鉱山で、働く工夫からお金ですんなり譲ってもらえた。魔道具は厳しく規制されている一方で元の世界で危険扱いだった物の規制は緩いようだ。やはり簡単に使える魔法の方に注目が行きがちなのかもしれない。
「ほら」
私はチンピラやマフィアたちから徴収したお金で買った魔道具をエルマに渡す。
「おぉ!」
手に取り魔道具を眺めるエルマ。小さな宝石に見えるが魔力を通せば小さな火が現れる筈だ。エルマの手から持ち上げ私が試しに使ってみると、魔道具の少し上に小さな火が灯った。
その小さな火をエルマが見つめる。
「魔道具……高っかいのに……この程度なんだよな……」
呟くエルマの表情はバカバカしい言う割には憧れの色を含んでいた。特別な感情があるのかもしれない……。しかし直ぐにいつもの憮然とした表情に戻った。
「よし。これを組み合わせれば……」
私はベッドに横になりながら夜通し作業するエルマを見つめ、気づけば寝ていた。
「出来たぁぁ!」
朝、エルマの眠気を感じさせない声で目が覚める。
机の上には長い銃身を持つ長銃が置かれていた。大部分は木製で丹念に磨かれている。エルマがせっせと削っていたのはこれだったのだろう。
エルマが肩にストックを当て構えた。
「こんな感じか?」
「実際には見た事ある訳じゃなけど……テレビなんかで見るのはそんな感じね」
近くの棒——込め矢を手に取り、エルマに渡す。エルマが銃を立てると銃身に火薬と弾丸を込めた。
「銃身を二本用意した。これを——」
銃身の横に小さなレバーがあり、エルマが上へ持ち上げるとストックから銃身が持ち上がった。それを取り外し、もう一本を装着。レバーを下げる。
「これですぐにもう一発撃てる……筈だ」
エルマの考えたギミックに驚きながらも、まだ試さなければならない問題がある。真剣なエルマには悪いがそれを指摘しない訳にはいかない。
「その前にちゃんと撃てるかも分からないでしょ?」
「まぁ……その通りなんだが……。スラムの下水に行くか……あそこなら誰もいないだろ」
下水と聞いて嫌な顔をする。
でも確かに人に見られる訳にはいかない。折角の切り札なのだから。
しかしそれで気分が良くなる訳でもない。
出向いた先は案の定、愉快な気分になれる場所ではなかった。
「う゛……」
「我慢しろ」
口元を隠しながら、周囲を見回す。確かに誰もいない。試射にはうってつけだろう。
エルマが銃を隠していた布を取り、私に差し出す。
「エルマが使って。計画は説明したでしょ? 私が持っててもしょうがない。私にはこれがあるしね」
ハンマーを取り出し見せる。最近はチンピラとの戦いを通してハンマーの使い方に慣れて来たところだ。
「いいのか? お前が買った魔道具だけど……」
「えぇ。エルマが使わないと意味ないでしょ」
エルマはしばし手元のお手製銃を見たが、頷くと片膝を付き、ストックを肩に当てた。
一息吐き、吸う。緊張した空気が流れる。エルマが息を止めて、トリガーに指を掛け……引く。
僅かに魔道具が炎の魔法を発現させる為に小さく光を放ち——甲高い音を響かせ、遠くのレンガを穿った。
「おー……」
エルマが驚いた表情ながら、構えを解き遠くのレンガを指さす。
「これでいいんだよな!?」
「うん。これなら……計画を始められる」
私も頷く。
「よし。もう一度」
エルマが込め矢で火薬と鉛玉を詰め……もう一度同じ様に構えて——トリガーを引いた。
再び鋭い音と共にレンガに穴が開く。
「狙いが難しいな……。まぁ……当てられるようにしとく」
「えぇ、お願い」
エルマは頷くと再び銃を構えた。
彼女の一撃が作戦の要であることは間違いない。しかし私が先に倒れても意味がない。
もうエルマはこちらを振り返る事なく、狙撃の精度を上げるべく試行錯誤を始めた。私も私のやるべき事をするべくスラムに戻るのだった。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
次回更新は未定ですが、ある程度ストックが溜まればまた更新を再開しますので、よろしくお願いします。
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