17話 終わった世界と始まる世界
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今回の話でルルミナス国編脱出編が一区切りつきます。
熱い鮮血が私の顔を濡らした。
「っ!」
眼鏡を汚す赤色を無視して、テラスの床を転がる水晶に手を伸ばす。
「ぐびぁぁぁ!?」
――と同時に目の前のデデルから汚い悲鳴が上がった。エルマの構えた長銃から放たれた弾丸が、デデルの右腕を粉砕したのだ。腕を押えテラスにみっともなく転がるデデル。
池内は元の世界で実際に聞いたことがなくても、その音が頭の中に危険だと刻み込まれていたが故に、無意識にテラスに伏せていた。
並ぶ隣の屋敷の向こう。その赤い髪を靡かせたエルマが長銃の構えを解いた。手に持った武器の威力に目を丸くして驚きつつもこちらに向かって頷くのが見える。
私も片手を上げて応えた。でもその手が小刻みに震えていたのがエルマにバレないように願う。
はぁぁぁ。
まず一つ目の計画が上手くいって一息つけた。手首の魔道具が起動したことで、刻まれた魔法が首を絞めていたがその熱さを持った圧迫感も消えた。
首元を撫でながら向こうを見ると向かいの屋敷の屋上から既にエルマは姿を消している。
(なんとか命拾いした……)
私がエルマに元の世界の銃の事を話し、あの魔道具店で見かけた火を起こす魔道具を組み込んだ、古典的なマスケット銃モドキは役目を果たしたようだ。チンピラから奪った金で魔道具を買い、武器屋に苦戦しながら説明して銃身を作ってもらい、魔道具などをエルマがうんうん唸りながら組み込み形にした。
完成後は人に見られるのを避け、碌に試射も出来なかったが成功してよかった……。
けれどゆっくりもしていられない。手の中の水晶を覗き込む……。
「なるほど」
水晶から直ぐに使用方法が頭に流れ込む。私の腕輪の魔道具はこの水晶の魔道具と親機、子機と言った関係であり、腕輪ではお金であるGの出し入れぐらいしか使えないようだ。
「い、今の……銃か? ふざけやがって!」
怒りを目に宿した池内が動揺から回復して立ち上がる。日本人のようだが、銃声は反射的に身を伏せてしまうらしい。
私は使い方を理解した水晶に魔力を流し込む。
「腕輪は全ての機能を停止、今すぐ外れなさい!」
カタッと腕輪が広がり、私の右手首から外れ落ちた。
「っ! よし!」
元居た世界では言った事もないような言葉が自然と溢れる。
(! 今のは? 複数の繋がりが同時に切れたような……)
私の腕輪以外にも複数の感覚が消える。しかし悠長に考えている暇はなかった。
「なんの音だ!?」
「爆裂魔法か!」
「チンピラなどよりデデル様の護衛を!」
屋敷内が騒がしくなり、大勢が戻って来たのだろう怒号に似た大声で階段を上ってくる。私は素早く落ちた腕輪と水晶をポケットに入れると屋敷内に駆け込んだ。
「待てやぁ、ゴラァ!!!」
剣を抜き、斬り掛かってくるよりも早く。巻き舌の池内に背を向けて騎士達へ駆け寄った。
「貴様! 異邦人! 何があった!」
「池内がデデル様を襲ったわ! 重症だ! 早く手当しないと死ぬわよ!」
「なにっ!?」
先頭の騎士が勢いよく階段を上っていくのを壁際に避け、私は屋敷の出口……ではなくエントランスの柱の陰に隠れる。
ドガァァァ!
解体工事現場のような音と共に屋敷のドアが破壊され、煙と共に派手な装いの男が現れた。
「お前ら! 楽しい時間の始まりだ。安心しろ、パウドウ家とは話が付いてる。探せ、ここの当主だ。それに黒髪の異邦人も捕まえて連れてこい、落とし前をつけさせる」
喜々として屋敷の中へ流れ込む男達。その顔は一方的に暴力を振るえる喜びに満ちた狂気的な笑みを誰もが浮かべていた。
騎士とマフィアたちが戦い始める。
「どうやら、私だけが目的じゃないみたい……」
マフィアのボスが屋敷の中へ消え、遅れて現れた人影は警戒した表情で注意深く探りながらキョロキョロと何かを探して様子だった。
私は眼鏡を外しレンズの反射で合図を送ると、すぐに気が付いた人影――エルマがこちらに駆け寄ってきた。
「成功だな」
普段はどちらかというと不機嫌な表情が多いエルマも満面の笑みだ。
「えぇ」
私は右手を掲げてみせる。
「反射の合図……案外分かるもんだな。それにこれ……」
私が眼鏡を掛け直していたのはエルマへの合図だったのだ。
エルマは興奮気味に長銃を掲げて見せる。
「凄い威力の武器だな。銃とかいったっけ?」
キラキラした目で銃を見つめるエルマの肩を叩く。
「作戦は成功したんだから、次に行こう」
「次? 逃げんじゃねぇの?」
不思議そうなに小首を傾げるエルマにニヤリと笑ってみせる。きっと悪い笑顔になっている事だろう。
「今まで働いた分をいただこうと思ってね」
ウィンクするとエルマは更に頭上へ? を浮かべる。
屋敷の部屋を手当たり次第開けていく。
「全くお前は……」
呆れた声ながらエルマもしっかり付いてきていた。その手には大きな麻袋を抱えている。
「散々コキ使われたからね。その分だよ」
大きな混乱は私達の味方だった。やり合っている騎士やマフィアを無視して屋敷から価値のありそうなものを貰っていく。
だが長いは無用だ。欲をかけばチャンスを失う。
「あぁくそっ。手に持つには限界があるな!」
エルマが悔しそうに袋を担ぎ直して吐き捨てるのを横目に屋敷の外へ視線が向く。
「あれを使おう!」
馬と荷台。幌が掛けられたオーソドックスな馬車だった。場所も裏庭らしく人気がない。
「! よし」
エルマも馬車を見て直ぐに理解したのか、私と一緒に窓へ足を掛け外へ出た。
一目散に馬車へ足を動かす――その時だった。
「っ!!」
エルマを蹴飛ばし、何とか自分は後ろへ身を引く。
「逃がさねぇぞ……」
見えない生垣から剣を振り下ろした池内だった。
「くっ!」
体勢を崩しつつも、踏ん張るエルマ。あのままエルマを突き飛ばさなければ池内に斬られていただろう。池内は数十分見ない間にボロボロだった。混乱し敵味方も曖昧になった屋敷内を抜けてきたからか、あちこちから出血していて、荒い息を繰り返しながら血走った目が私に向けられる。
「澄――!?」
叫んだエルマが再び慌てて地面を転がるのが見えた。エルマの頭上を剣閃が尾を引く。その鎧は見え覚えがある、デデルの護衛の騎士。その片割れだった。
「チンピラどもを引きこんだのはお前らだな、殺してやる!」
兜の奥から殺気の目が覗く。
自然とエルマと背中合わせになった。私の前には池内。エルマの前には騎士。
どちらも倒さなければ、ここから脱出するのは無理だろう。
「あぁもう! 邪魔なんだよ!」
エルマが憎々しそうに叫ぶ。
「片付けましょう。なるべく早くね」
後ろのエルマへ耳打ちする。
「頭に血が上ってくれている内がチャンスだわ。冷静になって仲間を呼ばれる前に倒すわよ」
騎士を睨んだままだが、私の言葉に頷くエルマ。すると懐から短剣を取り出すと銃身の下部へ取り付けた。
(銃剣!)
エルマが自分で考えついたのだろうか。改めてエルマなら頼れる相棒になるかもしれないと思いながら、意識を切り替える。
走る為に腰に差したままだったハンマーを抜き、構える。
「さっさと消えて」
私とエルマは同時に前へと踏み込んだ。
「らぁ!」
「!」
自分の体を無理やり止める。
(危ないな! 止まってなければ斬られてた)
池内の武器はロングソードで異邦人に支給された武器もこれだ。飾り気のない武器はしかし扱いが難しい。威勢よく剣を抜いて力一杯振り下ろし、剣自体を壊してしまう者も多い。酷い時は自分の足を斬りつけ、大怪我をするものも見かけたことがある。
だが池内は違った。池内が剣を振り下ろし隙、体勢が崩れたところに踏み込んで反撃――は叶わなかった。地面を斬りつける事もなく素早く剣を持ち上げると切り上げで対応してくる。
「くっ……」
(この男も相当場数を踏んでる)
私のハンマーより池内の剣はリーチが長い。当然、攻撃を当てるには池内の剣の間合いの中へ入っていかなければいけないのだが……隙が無く攻めあぐねていた。
(やりにくいな!)
この男も理不尽にこの世界へ召喚され――しかし今も生き残っているのは自身の力で生き残ってきた人間に他ならないのだ。
それに私自身の焦りもある。彼らに長く足止めされてしまうと、屋敷の騎士やマフィアが来てしまうかもしれないという焦りが動きを悪くしているのだ。
冷静になろうと原因を考えても、やはり焦ってしまう。
チラリと後ろに目を向けると、エルマもまた騎士の剣に翻弄されていた。
(……援護を待つなんて……甘えよね)
大きく後ろに跳び間合いを取る。
「俺の……楽園を壊しやがって……」
池内は隙なく剣を正眼に構えたまま動かない。こちらの出方を伺っているのか。
「この腕輪に繋がれた生活が?」
大きく息を吐いて、ハンマーを握る手にしっかりと力を入れながら池内の怒りに興味が出て、話しかけた。池内は怒りに染まった居ながらも、動きに乱れはない。
少しでも隙を見せてくれたらと思ったが淡い期待だったようだ。
「他人に理解してもらおうとは思わない。でも俺ぁ……この小さな山のボスで満足だったんだよぉぉ! 自由? どこまでいきゃあ自由なんだ? この国から出ても自由になんてなれない! なら自分の力の及ぶ範囲の王で満足だったんだ!」
勝手に喋ってくれている内に一歩踏み出すが、鋭い突きと共に牽制されてしまう。
「ちっ」
「くそが! 人の話も黙って聞けないのか!」
「冗談みたいに詰まらなかったからね」
自分の力が足りる範囲の王国か……。安定はしているのかも。
私はイヤだけど。
もう元の世界に居た頃みたいに自分で自分の生き方を決めたりしたくない。
その時々で事情は変わるだろうけど……。少なくとも今はこのルルミナス国から出て、この異世界を見てみたい。
池内の鋭い突きを後ろに下がって躱すので精一杯で、腕や足に切り傷が増えていく。幸い深い傷はないがこのままでは追い詰められていく一方だろう。
けど……ジクジクと痛む体中の切り傷のお蔭でなんとか、池内の動きに慣れて来た。
もう一度踏み込む。だけど今度は前足に力を入れず、後ろ足に力を残していつでも体を動かせるように。
風切り音と共に腹を剣が掠める。元より後ろ足に力が残っているので容易に体を引くことが出来る。
エルマと初めて戦った頃を思い出し、池内の持つ剣の腹にハンマーを当てる。横薙ぎの剣に斜め上から迎える振り下ろし――。
ギャリっ! と金属の擦れる不快な音と共に軋む嫌な音がして池内の剣が半ば程から叩き折れた。
「なんだと!?」
池内は驚きながらも素早く予備の短剣を抜いて、攻撃しようとする私を迎え討つつもり――だったのだろうが、私はそのまま後ろに大きく後退した。
「え!?」
驚くエルマの傍に寄ると、腕と腕を絡めて立ち位置を入れ替えた。
池内の方へ向いたエルマの絡めた腕を放すと腰を叩いて、私は前に踏み出す!
「そのまま撃って!」
恐らく状況はつかめていないと思う。けれど直ぐにエルマは銃のトリガーに手を掛け……トリガーを引いた。
ダンっ!
池内が驚愕に目を見開き――そのまま倒れ込んだ。
「消えて!」
騎士は突然相手がスイッチして僅かに驚いた様だが、好機とばかりに突っ込んできた。エルマは一定の距離で様子を見ていたようだが……私にも考えがある。
全身鎧は戦場で何度も見た。高い防御力を誇るが……兜の所為で視界が悪い。私は出来るだけ身を低く、踏み込む足に力を込めて――騎士の剣を潜るようにいなすと力の限り鎧の背中を殴りつけた。
それに全身鎧についてもう一つ。それは私のハンマーの打撃は内部に浸透しやすいということ。
鎧が盛大にへこむと、内部で肉が潰れる音。
「ご、ばっ!」
兜の口元から大量の血液と共に騎士が倒れ込むのを横目に走り始めながらエルマに声を掛ける。
「馬を繋げる?」
倒れた池内を見下ろしていたエルマは肩を跳ねさせると我に帰った様に長銃を背中に背負うと繋いであった馬へと弾かれたように掛け始めた。
「見た事はある」
「なら私は馬車に荷物を積み込むから――早くここを出るわよ!」
エルマは頷きで返すと繋がれていた馬を引っ張る。私は大急ぎで屋敷から持ち出した荷物を荷台に乗せた。
「アバババ――」
エルマは目を回つつも、御者台に乗って手綱を手に馬車を進めていく。未だに混乱の最中の貴族エリアを物凄い勢いで駆け抜ける。
例え騎士だろうがマフィアだろうが、挽かれたくはない筈。みんな本能的に身を引くので今の所轢き殺された者はいない。
(馬車って結構スピード出るんだ……)
私も驚きながら、風に遊ばれる髪を押えた。御者台に座るエルマの後ろ姿を見つめる。ずっと私の中で先延ばしにしていた事だった。
(だけど……もう決めた)
普段は陰鬱ながら人通りのあるスラムエリアは人もまばらだった。ここの人間は何かしらグルイディファミリーに関係があり、駆り出されているのかもしれない。
エルマのアパート近くで馬車が急停止する。
「ワタシはここまでだ。 分け前はもらうぞ」
御者台から降りて、荷台から荷物を取ろうとするエルマの腕を掴んだ。
「なんだよ?」
私が分け前を拒否するのかと疑われたのか、眉間に深い皺を刻んだエルマが睨んでくる。無言でエルマの瞳を眺める。
黄金の瞳には怒りの色はないように思えた。どちらかと言えば怒った声音だけど、怪訝な感じだろうか。
「なにしてんだよ……早く行け。完全に封鎖されるぞ」
荷台から飛び降りてエルマの前に立つ。その瞳を真っ直ぐ見つめた。
今日の戦い、エルマは裏切ることもできた筈。でも私は彼女に賭けた。この世界で一番長く付き合いがあり、エルマしか賭ける相手がいなかったと言うのもある。それでも彼女は危ない橋を渡り、私に協力してくれた。
握った手首ごとエルマの体を引き寄せる。
「!?」
驚いたエルマの手を胸元まで引き寄せて、私の姿がエルマの瞳に映る程、近く。
「一緒に来なさい。こんな国に貴女を置いていくのは……私が嫌だわ。一緒に……世界を見ようよ」
エルマの大きな瞳が見開かれ……逡巡するように僅かに伏せられた。けれどそれも一瞬。再び私の瞳を見返す。
「お前……最初に戦った時から――ははは……。ホントッ……変なやつだよな」
エルマが強い力で手を振り払う。
「はぁ……。たっく」
呆れたように……けれど少し頬の染まった表情で自分の赤いくせ毛を弄った。
「付き合ってやるよ! クソお嬢!」
迷いを振り払う様にアパートへ走り出すエルマ。
「部屋から荷物を出すの、手伝え。捨てて行くなんてもったないからな!」
出来る限りのエルマの私物を乗せ、再び走り始めた馬車。後ろの荷台には幌を被せて中は見えない様にしてある。
なだらかな下り坂の最後に見えるのは検問所。
「結構な人数だな。どうする?」
御者台に座ったエルマにローブを被せ、私も被る。
「そのまま行きましょう」
頷くエルマ。
検問所の前ではゆっくりとスピードを落とす。早くもエルマは馬車の扱いに慣れてきたようだ。
「止まれ!」
僅かにこちらを見て、視線で問うエルマ。『突破するのか?』と。私は首を横に振って、僅かなスペースの御者台に立ち、声を張る。
「私たちはグゥワイ家の者! 当家の火急の要件に付きどいてももらいたい!」
衛兵たちは数人。普段はもっと居るのだが、貴族エリアの混乱だ、人を割いているのだと予想できる。顔を見合わせた衛兵は荷馬車の幌に目を向けた。グゥワイの紋様が掛かれている。
彼らの目にははっきりと迷いが見て取れた。
「早くしろ! 今上で起きている事を知らないのか!? 我々は当主様の命を直々に受けた! 貴様らの妨害で使命が果たせないなどとなったら責任を取れるのか!!!」
「し、しかし……私たちも仕事が……」
「くどい! 話はグゥワイ家にしてくれ。いくぞ」
エルマの肩を叩く。
馬車が進み始めると、衛兵たちが道を道を開ける。普通の衛兵たちはどうしていいのか分からない様子だが、上官だと思われる男は逡巡しながらも
「お待ちください! やはり確認を――「走って!」
エルマが勢いよく手綱を引いくと、馬は弾かれた様に駆け出した。
「そいつらはグゥワイ家の者じゃない! 捕らえろ!」
走り始めた馬車だが荷車が重く、数人が取り付く。
「悪いけれど、一緒に連れて行く気はない!」
ハンマーで荷台を掴んだ腕を殴る。飛び乗ろうとした衛兵を蹴り落とす。
「おら!」
エルマも銃のストックで殴りつけ、衛兵を地面に叩き落とす。次第にスピードに乗った馬車に矢が何度が飛んできたが、幌に穴をあける程度に収まる。
荷車から後ろを振り返ると検問所が小さくなっていく。
「はぁ……」
思わず、荷車の中に座り込んでしまった。ガタガタと揺れる馬車はお世辞にも乗り心地がいいとは言えないが……危機は終わったとみていいだろう。
ルルミナス国の外は何もない荒地と言っていい具合だった。草が生えてない程度の道が続いている。エルマの隣、御者台に立ち遠くを見つめた。
いつの間にか太陽が沈みかけ、夜が近づいている。エルマもフードを下ろし、同じように空を見つめていた。
「外……か。ワタシはルルミナスから出るのって初めてなんだよな……」
その表情はなんとも表現しづらく、色々な想いが混じっている気がした。エルマはあの国に残ろうとした事から何かあるのかも知れない。
気にはなったが聞く事はしなかった。いずれ聞く機会もあるだろう。これから一緒にやっていくのだから。
「私と一緒に色々見て回ろう」
沈む太陽を背に座ったエルマを見下ろす。
「また用事があれば来ればいいんだし」
「そんなに簡単な事か?」
苦笑とも呆れともつかない笑顔で肘をつくエルマ。
「これからどうするかな……」
「それを決めるのも楽しいわよ。エル」
私が言うと不思議そうな顔をして、自分の事なのだと気が付いたらしいエルがフッと笑う。
「そうだな……。一先ず……もう少し進んでみるか」
馬車は先ほどまでと違ってゆっくりと進み始めた。
その緩やかな風は、ずっと私自身をこうあるべきと縛っていた何かを攫って行くような気持のいい風だった。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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