14話 脱出模索
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「…………」
スラムの一角。粗末な広場。そこにはこの世界に召喚された者たちが集められた場所だった。ここは異邦人と呼ばれる、私の世界から来た人々が力なくそこらに座り込んでいたりする場所だ。周囲には簡素なテントもあったりするが、全体的に陰鬱な雰囲気に包まれている。ほとんどの人が死んだ目をしているが、中には血走った目をしている者もいる。
私もこの光景は随分と見慣れてしまった。招集されるとこの広場に集められるからだ。
何度かの強制的な招集で得たものは戦いの経験だけ。魔物との戦いは未だに如何ともしがたい。
このルルミナス国と言うのは複数の国と戦争状態にあるらしく、戦地が多かった。人間との戦いはマフィアやチンピラで鍛えたので少しはマシになったが、問題は遠くから魔法が飛んでくることだった。時に砲弾、時にスナイピングじみた魔法が飛んでくる。隣の人の頭が突然破裂したのは流石に身がすくみ、改めて魔法というものの脅威を感じたものだ。
この世界に来てからの事を思い出している内に、目的の場所についた。
全体的に荒っぽいがしっかりとした家。ログハウスと表現するのが正しいと思う。
薄そうなドアを叩く。と中から気だるげな声が聞こえてきた。
私がドアを開けると薄暗い室内にいるのはプリン頭の男。この男は広場に集められた私たちの前に現れた男だ。周囲の人間に聞けば直ぐに池内という名前だとわかった。
広場に現れた時の柔和な笑みはなく、気だるさの中に警戒心を含んだ鋭い目を私に向けている。
「どうも、池内さん」
「最近暴れ回ってる奴だな……あの日も他のバカ共と違って、さっさと消えたのを覚えてるぞ」
私の他にも数人、この池内の詐欺めいた――いや完全に詐欺ね……――方法を怪しみ、輪から離れた者は数人居た筈だったけど……。
まぁ、なんとなく印象に残ると言うのはありえる事だ。
「何の用だ? 言っとくがこの世界に守ってるくれる法律なんてないぜ。お前も分かってるんだろ? マフィア相手に派手に暴れ過ぎだ。終わったな」
「まぁまぁ。私にも考えあってのことよ。どう? このまま、この国に使い潰されるのが嫌なら私の話を聞いてみない?」
私はなるべく好意的に映るよう、笑顔で話しかける。しかし池内は興味なさそうに動物でも追い払うように手を振った。
まぁ、想定通りだ。ここで食いつかれると予定を変更しなければならなかったかも知れない。
「そう……残念。貴方の……主人に伝えて置いた方がいい情報だと思ったんだけど……」
そういい、踵を返す――前に池内の声が呼び止めた。私は首を傾げつつ、足を止める。
「どうかした?」
「……」
探る様な視線が私を貫く。しかし私としてはこの男とノンビリとやっている暇はない。
「あぁ、わかってるわ。貴方がこの国の――というより異邦人の管理をしている貴族に付いて、私たちを監視してるのは」
変化は直ぐだった。素早く剣を抜くと目の前に付きつけられる。
「お、落ち着いて? 私は敵じゃないわ?」
(簡単に釣られたわね……)
やはり一応の保険を掛けていても、このルルミナス国と言うのは異邦人を侮っているのだろう。
でも斬り掛かってこないのは、やっぱり私の話が気になってるからだ。
「どこでそれを?」
「どこで? 単純に推理かな。異邦人は体のいい駒なんだろうけど……中には危険なスキルを持ちながら隠している者もいるかもしれない。結託して、面倒を起こすかもしれない。魔道具で縛っていたって危険はゼロじゃないでしょう? だから同じ異邦人を手駒にして監視させる」
指先を向ける。
「それが貴方。数日見てたわ。ここで異邦人たちと同じ様に暮らしてる……ぽいだけで、一般エリアに家がある。しかも、普段は身ぎれいみたいね? ここでボロを着てるのはカモフラージュ?」
私の言葉を眉根を寄せながら聞いていた池内だが、ふっと鼻で笑った。
「俺のストーカーか? お前みたいな美人なら歓迎だぜ。で? 女にして欲しいって言いにきたのか? それとも言いふらす気か? 誰も信じないぜ。見ての通り、ここの連中は他人を信じないからな」
それはこの男の成果でもあるんだろう。元の世界の法に守られた学生たちをいきなり戦場に放り込み、同じ世界から来た池内が更に悪辣な方法で金を巻き上げる事によって、誰に信じられなくし、異邦人同士の繋がりを持てない様にする。そんなところか。
「ふふ、勘違いしないで。貴方には全く興味がないから。用があるのは貴方のご主人様。私が……派手に暴れていたのは……マフィア達に雇われたからよ」
池内は警戒した表情だったが、興味を持ったようで沈黙をもって先を促した。
「私に持ちかけられたのは貴族を襲う計画。異邦人である私が暴れる。その私を殺す為に人を集める……という名目で人数を集め、貴族を襲撃するの。分かるでしょう? この国の上流階級と呼ばれる人たちはかなり好き放題で色々恨まれているって」
私の問いに、思い当たる節が多いのか僅かに唸る池内。
「でもマフィアでしょ? 信用ならないし……それなら貴族に付こうってね。報酬として自由にして欲しいのよ」
右手を持ち上げ、首輪である魔道具を見せる。
「池内さん、貴方と私ぐらいならこの魔道具を解除するぐらいの報酬はくれるんじゃない?」
池内は自身の右手を無言のまま見つめた。いくらここにいる異邦人よりいい暮らしをしていても、手首の魔道具がある限り、安心はできない筈だ。いつどんな心変わりがあって首を吹っ飛ばされるのか分かったものではないのだから。
「…………いいだろう。話してみよう」
池内は手に持った剣を下ろし、鞘に戻した。私はホッと胸を撫で下ろす。
「えぇ、お願い。……あぁ、これで少し安心したわ。返事を待ってる」
疲れた様に力を抜き、池内のログハウスを後にする。
「さて……どう出るかな」
あまり演技には自信がないのだけれど……。
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次回も明日【19:20】に更新予定です。
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