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鉄槌の優等生~勉強だけの人生だった彼女は自由に生きる事を決意する~  作者: 鳳翔雨月


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11話 無法の労働(1)

お読みいただきありがとうございます!


 武器屋には様々な剣、鎧、防具が売っていた。防具は武器なのかという考えもあったが、結局は武器防具はセットだから関連商品として置いてあるのだろう。

 エルマと共に鈍い銀色の輝きを放つ剣が並べられた棚を眺めているとエルマは思い出したように呟く。

「澄は鈍器が好きなのか?」

「好き、ね。考えた事もないな。でも潰す感覚は好きね」

「ふーん。でもいいチョイスだと思うぜ。刃物を使う訓練をしてないなら、剣なんて直ぐに折れるし、刃こぼれする。ただぶん殴ればいい鈍器は技術が必要ないからな」

「へー……」

 そういうものなのだろうか。確かに私は剣術や武術を習った事はない。

 武器屋には私が考えている稼ぎの為に役に立つものがあればと思ったのだが……。

 盾などの防具もエルマが言った理由で上手く仕えないだろう。鎧は全身鎧があるが、そもそも高かった。

 女二人で剣を眺めていると店主らしき男性が現れ、じろりと睨まれた。いかにも職人的で神経質そうである。

「おい、アンタ……少しいいか?」

 てっきり追い出される流れなのかと思っていたが……見た目の割に高い声で手招きされた。エルマと二人で顔を見合わせ、エルマは肩を竦めて首を振る。

「私?」

「あぁ、黒髪のアンタだ。アンタの持ってるハンマー……魔力が宿ってるな」

 制服のベルトに無造作に引っ掛けていたハンマーを取り出す――自宅のガレージにあった、何の変哲もない片手ハンマーである――と店主へ渡す。

「おぉ……凄いな」

 店主は感動した様子で丁寧な手つきでハンマーを色々な角度から観察していた。私は肘でエルマを小突くと耳元に顔を寄せた。

「こっちの世界では珍しいの?」

「いや……普通じゃないか? その辺の職人でも持ってそうだけどナ……」

 エルマも困った様に首を傾げる。そんな私たちの様子が伝わったのか、店主が布で鉄の部分――確か頭と呼ばれる箇所だったか――を拭きながら顔を上げずに喋る。

「異邦人はこの世界に来た段階で魔力を持つらしいが、異邦人が持ってる道具も魔力を得る事があるらしい」

 不思議そうな顔でエルマ。

「魔道具とは違うのか?」

「魔道具は魔道師が魔法を込めた魔石がメインだろ。色々な形や機能があっても、本体は魔石だ。けど魔力が宿った道具はそれ自体に特別な能力があるんだ。異邦人が特別な力……確かスキルとか言ったか。それがあるのと同じにな」

「つまり、このハンマーもその魔力が宿った道具になったって事かしら?」

「恐らく……そうだろうな……」

 色々な道具を出し、調べていた店主だがやがて肩を落として私のハンマーをカウンターに置いた。

「どんな特別な力が宿っているのかと調べてみたが……分からん。ただ魔力が宿ってるのは確かだ」

「魔力があるのは分かってけどさ……なんか得があるわけ?」

 エルマの言葉に私も頷く。いくら魔力が宿っていると言われても、それだけでは役に立たない。

「今は分からんだけで、何か特別な力があるのかも知れんが……。得と言えば、魔力を注げば修復できる筈だ。ワシも見たのは初めてだからなぁ……」

 困った様に自身の薄い頭を撫でる店主。

 しかし結構いい情報かもしれない。少なくとも珍しいのはわかった。売ればお金になる可能性もあるのは収穫だ。

「ねぇ、このハンマーを武器として使いたいんだけど……。改造とかして方がいいのかしら?」

 私の言葉に腕を組む店主。刀の刀匠は自身も剣術を嗜む事が多いと聞いたことがある。それは自分の打った刀の性能を知る必要があるからではないだろうか?

 その理屈と共に店主もある程度は戦いの訓練を積んだのではないかと予想したのだ。

「そうだな……。まずは柄が短すぎるな。武器として使うならもっと長い方がいいだろう。頭部分もそう大きなものじゃないからな……アンタが使うのか?」

「えぇ」

「え゛? バラしていいのか? 魔力が宿ってるんだろ?」

 エルマが目を細めながら、ジッとハンマーを見つめる。

「大丈夫だ。魔力があるのは頭の部分……この金属の部分だ。変えても問題ないだろう」

「ならお願いします。値段は?」

「分かった。200Gもあれば十分だ」

 私は頷き、金貨をカウンターに置いた。

「すぐにすむ。簡単な仕事だからな。さて……お前さんは腕が長いから――ふむ。よし」

 店主は一瞬考えるように視線を宙に向けたかと思うと、すぐにハンマーを持って奥へ引っ込んだ。

「特別なもんには見えなかったけどな……」

 エルマは胡乱な目を向けながら呟くのだった。




「あんまり変わらないな」

 パシッと軽く手の平にハンマーの当てる。柄の部分が少し長くなり、持ちやすい様に加工されている。

 軽く振る。

「ま、これからか」

「んで? これからどうするんだ? ってか出かけに言ってたいい考え? 今後の方針だったか? それってなんだよ」

 エルマが頭を左右に振って首を傾げ様子に苦笑する。

「質問が多いわね」

 スラムまで下って来て、現在は裏路地を適当にうろついている。

 地理を頭に入れる目的もあったが、本来の目的を探して歩いていると十分もしない内に見つかった。

 見た目から粗暴な感じの男が道の真ん中を歩いている。横のエルマは明らかに面倒くさそうな顔をしながらさり気に進路を避けた。

 私は普通に真っ直ぐ進む。当然――肩が当たる事になる。

「オイ、てめぇ、どこに目ぇ付けてやがる」

「見て分からない? 随分目が悪いみたい」

 私のセリフを聞いてエルマがギョッとして、同時に男が眉間に皺を寄せる。

「あぁ゛? 異邦人か? 痛い目みたいらしいな」

「痛い目? どうぞ。でもこちらも痛い目みせてもいいのよね?」

 巻き舌と共に男が殴りかかってきた。大振りなので余裕で避けられる。

(動きは見えてて、頭では分かっているのに、足の運びが追いつかない。……もどかしい。避け方も相当、不格好だろうね……)

 荒事に慣れてなくて、足が震える――のを言葉で誤魔化しながら、ハンマーを抜いて、もう片方の手で殴りかかってきた男の腕を狙ってハンマーを振る。けど避けられてしまった。私も普通に大振りだからである。

「っ!? 異邦人がっぁ!」

 更に怒らせたらしい。

 とにかく小さく振る。それに受け止める。

 相手が殴り掛かってくるのに合わせて、左手で何とかガード。

「てめっ!?」

 そのまま踏み込んで、右手のハンマーを相手の腕に合わせて横に振る!

「ぎゃぁぁぁ!?」

 鈍い音と案外軽い感触がして男が倒れ込む。

(前よりしっかりと骨を砕く感触が伝わってくる)

 倒れ込んだ男の頭部にハンマーを振り下ろして意識を奪い、金品、持ち物を迷惑料としていただく。

 隣でエルマが唖然とした表情のまま私の行動を見ていた。

「お、お前……まさかいい考えって……」

「えぇ、チンピラに絡まれたならこちらに非はないし、戦いの経験も積める。それにエルマも私にしようとした事でしょ?」

 チンピラ相手に戦いの経験を積む。これが今後の方針だ。

 エルマは若干引いた顔をしながら、嫌そうに顔を顰めた。

「本気で服まで剥ぐか! 金ぐらいでやめとくよ! それに全部も盗らない!」

 続いて『恨まれないように』とか『やり過ぎは面倒』だとか色々言い訳じみた事を続けるエルマに彼女は本当にスラムの住人だろうかと私は首を傾げるのだった。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

次回も明日【19:20】に更新予定です。


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いや、ホントに凄いモチベーションが上がりますので、ぜひぜひ、よろしくお願いします!!!


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