↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鉄槌の優等生~勉強だけの人生だった彼女は自由に生きる事を決意する~  作者: 鳳翔雨月


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/27

9話 素敵な国(4)

お読みいただきありがとうございます!


「一匹オオカミを気取ったエルマさんが異邦人を連れてるぞぉー?」

 ゲラゲラと笑う男達を無視する。エルマも無視しているし、私に何か言われた訳でもない。

 言われているエルマが無視をするなら私が出しゃばるのも違うだろう。

「オイ……無視してんじゃねぇよ……」

 先ほどまでのヘラヘラした顔から一転、眉間に皺を寄せてエルマの前に顔を覗き込む。

「お前さぁ、ツラ見せんなって言ったじゃん? 生意気なんだよ、俺らとは違うみたいな顔しやがってよぉ……。一緒だろうが、あぁ? このスラムで地べたを這いずり回ってんのは一緒なんだよ。頭お花畑女よぉ?」

 エルマはスープまで飲み干すと、乱暴に器を叩きつける様に置いた。

「うるせぇんだよ、ゴミが! 大してうまくもないメシがお前のクソみたいな顔のお蔭で更に不味くなんだろうが! 一緒? あぁ、そうかもな。でもお前らみたいにどうしょうもないってワタシは諦めてなんいんだよ!」

 言葉と共に立ち上がるエルマ。

「へへへ、おい、分からせてやれ」

 男が指示すると数人に囲まれた。エルマが構えている姿を横目に器を置いた。ふぅと短く息を吐くと立ち上がり――不愉快な男を殴り飛ばした。

「ぐぎゃ!?」

 大きく吹っ飛び、他のテーブルを巻き込み、倒しながら転がる。

「やっぱり変ね」

 自分の拳を見て思わず呟いた。ある可能性を思い試したのだけれど……確定だろうか。

 そんな私の姿を見ていて、理解できないと言った顔をするエルマ。

「変なのはお前だよ? 普通いきなり無言でなぐるか?」

「冗談でしょ……。貴女……あれだけ不快な言葉を投げられて、丸く収める気でいたの? もういざこざになるのが確定なら言葉を交わすこと自体が無駄だわ。それなら早く攻撃した方がいいでしょう?」

 私の言葉に後ろ頭を掻きながら、その通りだけど、と呟くエルマ。

「女どもぉ! おい! 何ぼんやり見てるんだ!? やれ!」

 転がっていたこのグループのリーダーらしき男が叫ぶと唖然としていた仲間も身構える。その瞳には下種な色も見える。

「ふっ!」

 エルマの見事な回し蹴りで一人が吹っ飛ぶ。

「綺麗に足が上がるわね」

 私は体が硬いので、羨ましい。

 リーダーを殴ったので当然の様に私の方へも男が一人胸元へ掴み掛かってくる。

「でひゅへへへ」

「…………」

 巨体ゆえのタックルを横に僅かに飛んで交わす。体制が崩れた背中に不格好な蹴りつける。

 またテーブル群をなぎ倒しながら、地面を滑る男を追いかけ、頭を力を込めて踏みつけた。

「ぐびゃぁぁぁぁ!?」

 2、3回も繰り返すと動かなくなる。

 見ればエルマが男の足を引っかけ転ばせると、椅子で殴打して意識を刈り取る。地べたに座ったリーダーも手に持ったひしゃげた椅子で更に殴打。

「片付いたか……」

 持っていた椅子を横に置いて手を叩くエルマを横目に私も手を握ったり開いたりする。

「んで? 何か変なんだ?」

 男達を黙らせるのに集中していると思ったのに、意外に視野が広く冷静なエルマの視線と共に質問が飛んでくる。

「うん。元の世界に居た頃はこんなに力が強くなかった。だから変なのよ。……恐らく身体能力が上がってると思う」

 「いいことじゃん」

 その通りで、今はありがたい。異世界に召喚された人が多少でも生き残る理由は元々武道をやっていたり荒事に慣れた人物なら向上した身体能力で切り抜けられるからではないだろうか。

 そんな事を考えながら、転がった男共を見下ろす。

「よし。持ってる物をもらおう」

「うん。まぁ……容赦する必要はないけど。お前、ホントに異世界から来たのか?」

 エルマは両手を抱える様に腕を組むと呆れた目を向けてきた。彼女の言う通りである。人に向かってあの態度ならこちらが優しくしてあげる道理はない。エルマの言葉に首を傾げならも手を動かす。

 現金や持ち物、武器、服を剥ぐ。

「おいおい……下着は勘弁してあげたら……?」

「下着は売れない?」

「多分……。他人の履いたもんとか売れないだろ……」

 いや、もしかしたら売れるかも知れない。はぎ取ろう。

「…………」

 何故かげんなりとした表情のエルマを無視して、全て回収した。

「よし。その辺に縛って捨てましょう。手伝いなさい」

「えぇ~……」

 縄で縛りあげた男達を見て露骨に嫌な顔をする。

「触るの汚いじゃん……。ここに捨ててこうぜ」

「……それもそうね」

 ゴミを路上に放置してはいけないと無意識に思ってしまったのかもしれない。

 

 壊れたテーブルや椅子などの惨状も彼らの所為だと説明して――エルマが――屋台が集まった広場を後にし、リサイクルショップの様な店なのだろうか? 雑多に様々な商品が並ぶ店のドアを開けた。もちろんエルマの案内で。

 店のカウンターに彼らから譲ってもらった物品をやや乱暴に置いた。扱いが荒いのは仕方ない。だって衣服が臭いんだ……。

 エルマが店主と交渉する。

「1203Gだって」

 随分半端な数字だけど、元より持っていても仕方がないので店主へ頷くと金貨を渡された。

 店の物を眺めながら、隣の微妙な顔をしているエルマへ内訳を聞いてみる。

「どれが一番高いの?」

「ん? あぁ、ナイフだった。やっぱり武器は需要あるからな。服が小銭。んで……下着が1G」

「やっぱりお金になったじゃない」

 釈然としない顔のエルマだったがそれ以上なにも言ってこなかったので、私も話を終わらせる。今はえり好み出来る状況ではないのだ。

「この店に魔道具はないの?」

「ねぇよ。こんな店に」

 肩を竦めるエルマに店主が睨むだけなのは不快だが、真実なので何も言えないからだろうか?

「もっと一般街……それも貴族街に近い場所じゃないと魔道具なって売ってないョ……」

 遠い目を向ける先にはその一般街があるのかもしれない。遠い目のまま小さく呟くエルマ。

「実物を見てみたいもんだな……そうすりゃワタシも……」

 その呟きは小さくなっていき、考え込むように黙ってしまった。

 私はエルマから視線を外し、手に入った金額を計算する。男達から得た現金は2207G。金貨自体は分かり易く、元居た世界……と言うより日本の小銭と同じ様な感覚の金額の分けかただったので分かり易い。

『私が命からがら生き残っても300Gなのに……』

 彼らから出てきた金額を見てついそう呟いたのは仕方がない事だろう。

 なんにせよ、現金も手に入った。これから暫く食べるだけなら困らない筈だ。

 エルマに半分金貨を渡す為に頬を人差し指で突く。

「……なにすんだ」

 思案顔だったエルマがこめかみを僅かに痙攣させた。

 無言のまま小銭を握っていた手を開く。

「いいのか?」

「えぇ。彼らのうち二人倒したのはエルマだわ」

 寧ろ、もっと貰える権利があると思うが私にもお金が必要なのである。

「へへっ、貰えるもんはもらっとく」

 私の手から小銭を受け取ったエルマは嬉しそうに金貨をポケットに仕舞った。


 



 エルマのアパートの自室に入ると一目散にベッドへそのまま倒れる様に横になった。

「おい……」

「……限界だわ」

 濃密過ぎる一日からか、建物に入ったあたりから目を開けているのに視界が暗くなると言う現象に見舞われている。

(猛烈に……眠い)

 何日も徹夜した翌日みたいな感覚だ。

 エルマが何か言っていたが答える気力はなく、そのまま意識が途切れるのだった……。

 


 真夜中。目が覚める。

 随分と心地の良い温かさだった。

 そして目の前には赤い謎のふわふわした物。多分意味もなく触ってみたい衝動に駆られて手が伸びた。

(やわらかい)

 しかし沈み込む手が止まり、固い部分に触れる。硬い部分に触れていると丸い形なのだと分かるし、僅かに温かい。

 半分寝ぼけた頭で、それがエルマの頭なのだと理解する。

 この暖かさはエルマと共に寝ているからだろうか。

(人と一緒に寝るのはこんなに温かいのか……)

 異世界……。この世界で自分の思うままに生きてみる。

 その思いを確認した直後に再び睡魔が襲い、眠りに落ちるのだった。


 

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

次回も明日【19:20】に更新予定です。


もし「続きが気になる」と思ってくださったら、ページ下部にある【ブックマーク登録】や【いいね】【評価の☆☆☆☆☆】を押していただけると、執筆の励みになります!

いや、ホントに凄いモチベーションが上がりますので、ぜひぜひ、よろしくお願いします!!!


それではよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。