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生命魔法使いに転生したので、聖者の皮を被って気ままに生きようと思います  作者: aramakid
プロローグ

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第7話 仕組まれた奇跡

「ノア。今日はおうちで遊んでなさい。外に出ちゃダメよ」


 母親はそう言い残すと、急いで出かけていった。

 神官の先触れが到着したらしく、大人たちはみんな、歓迎の準備に駆り出されていた。


 もちろん、こんなチャンスに家で大人しくしている訳にはいかない。


 僕はそっと家を抜け出すと、村の門を見渡せる木によじ登った。


 木の枝に身をひそめ、門の先をじっと見ていると、街道に護衛を連れた一行が姿を現した。

 馬に乗った人物は法衣をまとっており、その周りを冒険者らしき護衛が囲んでいた。


 神官を鑑定してみる。


【名 前】クリス・ダリシア

【位 階】Ⅱ

【魔 力】C

【スキル】光魔法

【魔 法】ヒール


 思ったよりも地味だな。

 魔力はCだし、使える魔法もヒールだけか。


 それに——光魔法?

 僕の使う生命魔法とは、どう違うんだろう?


 冒険者たちも、ついでに鑑定する。


【名 前】ロイ

【位 階】Ⅱ

【魔 力】D

【スキル】剣術


【名 前】ジェイク

【位 階】Ⅱ

【魔 力】E

【スキル】鉄壁


【名 前】アガサ

【位 階】Ⅱ

【魔 力】C

【スキル】火魔法

【魔 法】フレイムアロー ファイアボール


 革鎧を身にまとい大剣を携えたのがロイ。

 巨大な盾を持つジェイク。

 そしてローブに身を包んだ女がアガサだ。


 彼らは護衛としてついてきたのだから、それなりの実力はあるはずだが、スキルが少ない。


 これが、一般的な冒険者の実力というものなのか?

 それとも、こんな辺鄙な村にやって来る神官一行だから、派遣されたのは実力不足の者たちだったのか。


 村の門前で村長が出迎え、彼らはそのまま村長の家へと入っていった。


 夕方になって、両親が帰ってきた。

 二人とも、悲痛な顔をしていた。


「どうしたの?」


「明日、子供たちを全員集めて光魔法の適性をみるそうだ」


 父親の声は固い。


「今までこんな事、なかったのよ」


 母親は僕に駆け寄るとぎゅっと抱きしめた。


「どうしよう……このままじゃノアが連れてかれちゃう」


 それにしても、光魔法の検査か。

 生命魔法は引っかからないかもしれないな。

 ——検査に引っかからなかったら別の手を使うか。


 ◇


 村長の家では、神官を迎えるために用意された、村なりの精一杯の食事が卓に並べられていた。

 粗末ではあるが、皿の一つひとつに気遣いが感じられる。


「クリス様。お食事はいかがでしょうか」


 差し出された椀から立つ湯気を眺めながら、クリスは胸の内で小さく舌打ちした。


 ――これが精一杯、か。


 だが顔には、神官にふさわしい穏やかな笑みを浮かべる。

 こんな辺鄙な村を巡る務めなど、早く実績を立てて抜け出さなければならない。


「ええ、ありがたく」


 そう言って椀を手に取り、ゆっくりと頷く。


「この恵みを与え給うた神と、心尽くしでもてなしてくださる皆さんに、感謝を。どうか神の祝福が、この村にありますように」


「なんでも、今回から子供達の才能を貴重な魔道具を使って見ていただけるとか」


 村長がおずおずと尋ねる。


「ええ、前任者は自分の感覚に頼っていたようですが、魔道具であれば見落としなく確認できますので」


 クリスは穏やかな笑みを崩さぬまま答えた。


 前任者のように、他人の光魔法の才能を感じ取れるほどスキルが育っているわけではない。

 だが、そんな曖昧な感覚に頼る方が非効率なのだ。


 そもそもやり方が甘すぎるのだ。

 健康診断のついでに才能の有無を確かめるなど、あまりにも生ぬるい。


 その点、今回は違う。

 実家に無理を言って取り寄せた魔道具がある。


 子供を全員集めさせ、この魔道具で調べればいい。

 そうすれば、取りこぼすこともない。


 光魔法の才能を持つ子供を一人でも連れ帰れば――


 私も、街に戻れるはずだ。


「授けられた才能は、すべて神の御心によるもの。今度からは、その恵みを漏らさず見いだすことができるでしょう。これもまた、神の導きです」


「……それは、ありがたいことですな」


 村長はそう言って頭を下げたが、その声にはわずかな戸惑いが混じっていた。


 ◇


 翌朝、子供たちは村の広場に集められた。


 広場の中央には簡素な台が用意され、その上には白い布の敷かれている。

 そして、その台の上には、水晶玉のような魔道具が据えられていた。


 子供たちは不思議そうにそれを見つめ、後ろでは大人たちが小声でささやき合っている。


 その台の後ろに立ち、神官はゆっくりと周囲を見渡した。


 そして、厳かな表情を作ると、静かに口を開く。


「皆さん、よく集まってくれました。授けられた才能は、すべて神の御心によるものです」


 神官は台の上の魔道具にそっと手を向ける。


「そして、その恵みを見落としてはなりません。この魔道具によって、子供たちに授けられた神の恵みを、漏らさず見いだすことができるでしょう」


 子供たちは首をかしげる。

 何をするのか、まだよく分かっていない。


「順番に、手をこの玉にかざしてください」


 神官は手のひらを水晶玉の上にかざし、ゆっくりと光が揺れる様子を見せる。


「光魔法を持つ者の魔力には、この玉が反応して光を放ちます。光が見えた者は、その才能を神に認められたことになります」


 村の子供たちは少し緊張して、手を組んだり、そわそわしたりしている。


「順番は一人ずつです。急ぐ必要はありません。焦らず、落ち着いて、手をかざして下さい」


 子供たちが、尻込みしてるのを横目に僕は前に進み出て、手をかざした。


 ——魔道具はなんの反応も返さない。


 周りの子たちがざわつく中、神官は淡々と言った。


「光魔法の才はありませんが、神は見ておられます。次の子もどうぞ」


 やはり、生命魔法は何も反応しないのだ。

 後ろで両親が安堵の表情を浮かべ、互いに小さく頷き合っている。


 僕は広場を抜けると、秘密基地へ続く塀の穴までやってきた。


 広場に視線を向ける村人たちは全員、神官と魔道具に注目している。

 誰一人、僕を警戒してはいない。


 ――完璧だ。


 僕は森に向かって全力で魔力を広げた。

 その魔力に誘われる様に、森の中が騒がしくなる。


 森の反応を確認し、にやりと笑う。

 誰も僕の行動に気づいていない。

 足音を忍ばせて、僕は広場へと戻った。


 ちょうど検査を終えたゲルトが、こちらにやってきた。


「俺も才能なかったよ。村を離れずに済んでよかった」


 ほっと息を吐いてゲルトが言う。


「リサも大丈夫だった!」


 検査を終えたリサが駆け寄ってきて、にこにこと笑う。


「光魔法持ちなんて滅多にいないだろ。この村にはいないよ」


 マークも小走りでやってきた。

 皆、無事でよかった、という空気が広場に広がる。


「教会に連れて行かれたら、冒険者になれないしな」


 トムの言葉に、他の子もくすくすと笑った。


 不意に、背後で騒がしい声が響いた。


「ゴ、ゴブリンだ!」

「どこから入りやがった!」

「くそっ!数が多いぞ!」


 ざわざわと大人たちが叫び、子供たち悲鳴を上げる。

 村人たちの足音が広場に響き渡る。


 神官の護衛がゴブリンの前に躍り出た。


 ジェイクが盾を叩いて挑発し、ロイが隙をついて大剣で叩き切る。

 アガサのファイアボールが後方を吹き飛ばした。


「すげぇ。かっこいい!」


 トムが目を輝かせている。


 だが、ゴブリンの数が多い。

 冒険者の間をすり抜けた、ゴブリンがこちらにやってきた。


 棍棒を振り上げたゴブリンがトムに襲いかかる。


 ゲルトがトムを庇うように割って入った。


「トム、逃げろ!」


 ゲルトが叫ぶ。


 その瞬間――


 ゴブリンの棍棒が、ゲルトの頭に叩き込まれた。


「がはっ!」


 ゲルトが倒れる。

 地面に血溜まりが広がって行く。

 

「ゲルト!!」


 トムの悲痛な叫びが広場に響いた。


「えい!」


 リサが投げた石がゴブリンに命中し、やっと一体が倒れる。


「ゲルト!!」


 僕はゲルトに駆け寄り、声を張り上げた。


 ちらりと周囲を確認する。

 神官の視線がこちらに注がれている。


 ——よし、想定通りだ。


 さらに大きな声で叫ぶ。


「ヒール!!」


 手をゲルトの傷に当てる。


 ——瞬間。眩い光が溢れた。


 ゲルトの傷が、みるみる塞がっていく。


 血が止まり、傷口が閉じていく。


 周囲が、息を呑む。


「今の光は……!」


 神官が駆け寄ってくる。


「お前……光魔法を……!」


 僕は無邪気な顔で頷いた。


 ——計画通り。


 すべて、思い通りだ。


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