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生命魔法使いに転生したので、聖者の皮を被って気ままに生きようと思います  作者: aramakid
プロローグ

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第5話 小さな支配

 僕は村の広場で、村長の息子のゲルトと向かい合っている。


「負けたら、俺の命令は何でも聞くんだぞ」


 ゲルトが、言い放つ。


 発端は、ほんの些細なことだった。


「おい、お前ら!」


 いつものようにリサで実験——いや、遊んでいると、背後から乱暴な声が飛んできた。


 振り向くと、そこに立っていたのはゲルトだった。

 十歳。村で一番の腕白坊主だ。


 後ろには同い年のマークとトムもついてきている。いつもの取り巻きだ。


「なんだ?」


「お前ら、俺の子分になれ!」


 ゲルトが胸を張って言う。


「……なんで?」


「俺は村長の息子だぞ!」


 リサが首を傾げる。


「それって、関係あるの?」


「あるに決まってるだろ!」


 ゲルトがムッとする。


「それに、お前ら五歳だろ!年上に逆らう気か!」


 リサがきょとんとする


「年上だから偉いの?」


「当たり前だ!」


 ゲルトが力説する。


「五歳が十歳に勝てるわけないだろ!」


「強い奴が上ってこと?」


 僕は首を傾げる。


「そうだ」


「じゃあ、僕の方が強いから子分になりなよ」


 僕は肩をすくめる。


 マークとトムが、ざわざわと囁き合っている。


「おい、あいつ……」

「ゲルトに逆らってるぞ……」


 ゲルドが顔を赤くする。


「じゃあ勝負だ!」


 ゲルトが僕を指差す。


「俺が勝ったら、お前は俺の子分だ!」


「……逆は?」


「は?」


「僕が勝ったら?」


 ゲルトが少し動揺する。


 おそらく、負けることなど考えていなかったのだろう。


「……お、お前が勝ったら……」


 ゲルトが歯を食いしばる。


「俺が、お前の子分になってやる!」


 取り巻きが「えっ」という顔をする。


「ゲルト……」

「本気か……」


「うるさい!」


 ゲルトが後ろを睨む。


「強い奴が上なんだ!それが俺のルールだ!」


 意外と律儀だ。


「いいよ、勝負しよう」


「お、おう!」


 ゲルトが少し驚く。


 五歳児が素直に応じたことが意外だったのだろう。


 リサが心配そうに言う。


「ノア、大丈夫?ゲルトって結構強いよ?」


「大丈夫」


 僕は軽く答える。


 そして、静かに脳に『エンハンス』をかけた。


「行くぞ!」


 ゲルトが駆け出した。

 

 腕を振りかぶり、まっすぐ突っ込んでくる。


 その動きが――ゆっくり見える。


 脳を強化したおかげだ。


 拳が迫ってくる軌道。

 足の運び。

 体重の乗せ方。


 全てが、手に取るように分かる。


 余裕で避ける。


 ゲルトの拳が、僕の頭があった場所を通り過ぎた。


「なっ!?」


 ゲルトが驚く。


 そのまま体勢を崩す。


 ——今だ。


 足を引っかけて、上体をそっと押してやる。


「うわっ!」


 ゲルトが簡単に転がった。


 周囲から、驚きの声が上がる。


「嘘だろ……」

「五歳が、ゲルトを……」


 リサが目を輝かせている。


「ノア、すごい!」


 ゲルトがゆっくりと顔を上げる。


「な、なんで……」


 信じられない、という顔だ。


「……もう一回だ!」


 ゲルトが立ち上がり、再び突っ込んでくる。


 今度は、もっと速い。


 でも――


 やはり、遅く見える。


 右からの拳。

 それを避けて、カウンター。


 ゲルトのみぞおちに、拳が入る。


「ぐっ……」


 ゲルトがよろける。


「くそ……」


 何度も立ち上がろうとする。


 でも、体が言うことを聞かないようだ。


「……負けた」


 ついに、ゲルトが地面に座り込んだ。


「お前……強いな……」


「そうでもない」


 僕は淡々と答える。


 実際、リサには勝てない。

 ゲルトは、まだ僕でも勝てる相手だっただけだ。


「……分かった」


 ゲルトがゆっくり立ち上がる。


「お前が上だ」


「別に、上下関係とかいらないけど」


「いや、約束だ」


 ゲルトが真剣な顔で言う。


「強い奴が上。それが俺のルールだ」


 マークとトムが、呆然としている。


「ゲルト……」

「本当に、子分に……」


「うるさい!」


 ゲルトが叫ぶ。


「俺が決めたルールだ。守るに決まってるだろ!」


 そう言って、僕の方を向く。


「これから、お前についていく」


「……好きにすれば」


 僕は肩をすくめる。


 村長の息子が子分になった。


 まあ、悪くない。


 色々と便利に使えるだろう。


 リサが駆け寄ってくる。


「ノア、本当にすごかったよ!」


「リサには勝てないけどね」


「えへへ」


 リサが照れくさそうに笑う。


 ゲルトが、その様子をじっと見ている。


「……なあ」


「なに?」


「リサって、もしかして……」


 ゲルトが慎重に聞く。


「お前より、強いのか?」


「そうだよ」


 即答する。


 ゲルトの顔が青ざめた。


「マジか……」


 マークとトムも、リサを見る目が変わる。


「あの子……」

「ゲルトより強いって……」


 リサは、まったく気にしていない様子で、笑顔を浮かべている。


「よし、なら今日は秘密基地を見せてやる」


 ゲルトはそう宣言すると、村の端に駆け出した。


 マークとトムも、慌てて後を追う。


「おい、待てよゲルト!」

「秘密基地って、あそこか?」


 リサが目を輝かせる。


「秘密基地!行こう、ノア!」


「……まあ、いいか」


 僕も後を追う。


 村の端。


 木の塀が、村を囲むように立っている。

 この塀の外に出ることは、禁止されている。


 村長や大人たちが、いつも言っていることだ。


「外には魔物がいる」

「子供は絶対に出てはいけない」


 でも――


 ゲルトは、塀の前で立ち止まった。


「ここだ」


 草むらをかき分ける。


 すると、塀の下に小さな穴が開いていた。


「……これ」


「そう。ここから出られる」


 ゲルトが得意げに言う。


「半年前に見つけたんだ」


 マークが補足する。


「最初は動物が掘った穴だったんだけど、俺たちで広げたんだ」


 トムも誇らしげだ。


「大人には内緒だぜ」


 リサが少し不安そうに言う。


「でも、外って危ないんじゃ……」


「大丈夫だよ」


 ゲルトが胸を張る。


「森の入り口だけだから。魔物なんて見たことない」


 僕は内心で考える。


 魔物――この世界には、危険な生物がいるらしい。


 でも、村のすぐ近くにまで来ることは少ないのだろう。


 だから、ゲルトたちも無事でいられる。


「行くぞ」


 ゲルトが穴をくぐる。


 マークとトムも続く。


 リサが僕を見る。


「ノア、どうする?」


「行こう」


 僕も穴をくぐった。


 塀の向こう側。


 森が広がっている。

 木々が密集し、薄暗い。


 でも、危険な雰囲気は感じない。


 少なくとも、今は。


「こっちだ」


 ゲルトが森の中へ進む。


 数分歩くと、大きな木の根元に着いた。


「ここが秘密基地だ」


 木の根の間に、小さな空間がある。

 中には木の板や布が敷かれ、簡素な隠れ家になっていた。


「すごい!」


 リサが歓声を上げる。


「これ、誰が作ったの?」


「俺たちだ」


 ゲルトが胸を張る。


「マークとトムと三人で、半年かけて作ったんだ」


「へー」


 僕は中を覗き込む。


 木の実が蓄えられている。

 水を入れた壺もある。


「ここなら、大人に見つからない」


 ゲルトが得意げに言う。


「村の奴らには内緒だからな」


「……で、僕たちに見せたのは?」


「お前は、もう仲間だからな」


 ゲルトがぶっきらぼうに言う。


「強い奴は認める。それが俺のルールだ」


 リサが嬉しそうに笑う。


「ありがとう、ゲルト!」


「べ、別に……」


 ゲルトが少し照れる。


「いい場所だね」


 僕は素直に言った。


「だろ?」


 ゲルトが嬉しそうに笑った。


 この場所は、色々な実験に使えそうだ。

 人目を気にせず、魔法の訓練もできる。


それに――


僕は森の奥を見つめる。


魔物がいるらしい。

バッタや鳥では、もう物足りない。


もっと大きな被験体が必要だ。


この場所なら、魔物を捕まえて実験できるかもしれない。


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