表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
生命魔法使いに転生したので、聖者の皮を被って気ままに生きようと思います  作者: aramakid
プロローグ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/27

第24話 禁忌の実験

 何本もの石柱が林立し、高い天井のアーチを静かに支えている。ステンドグラスからは色彩を帯びた光が差し込み、礼拝堂の空気を淡く染めていた。


 正面の祭壇の前――そこには、法衣をまとった骸骨が、音もなく宙に浮かんでいる。


 僕のいる四層の礼拝堂は、そのリッチを中心に、スケルトンやレイスがひしめき合い、死の気配で満ちていた。


 四層は、リッチだと聞いて身構えていたが、やる事は二層までと変わらない。


 僕は『エンハンス』した杖を片手に、魔物の群れに突っ込む。


 スケルトンを砕き、レイスの核を正確に突く。


 時折、リッチから火球が放たれる。

 軌道を見切ってかわしながら、『ライフスティール』をばら撒く。


 礼拝堂のあちこちで、召喚の光が立ち昇る。

 倒されたスケルトンやレイスが、次々と補充されていく。


 ――それでも。


 僕が壊す速さには、追いついていない。


 残りがリッチだけになってから、しばらくは召喚されるがままに任せてみる。


 どうやら際限なく呼び出せるらしい。だが、ここで待つよりも、一層や二層の魔物をかき集めたほうが効率はいい。


 再召喚されたスケルトンとレイスを手早く処理し、間合いを詰める。

 そして、リッチの頭蓋を一撃で砕いた。


 それだけで、リッチは呆気なく崩れ落ちる。抵抗らしい抵抗もないまま、床に魔石だけを残して。


 魔石を拾い上げる。


 掌に収まるそれは小さい。

 だが――内側に渦巻く魔力は、デスナイトの魔石よりも明らかに濃い。

 見た目と釣り合わない重みが、じわりと伝わってくる。


 ——この魔石なら、できるかもしれない。


 僕は、魔石を握り込むと『リザレクション』を込める。


 ホーンラビットの魔石と違い、魔力がするりと入っていく。


 やがて、魔石が淡い光を放ち始めた。


「……出来た」


 思わず、息が漏れる。


 僕はその魔石を革袋ではなく、ポケットへ滑り込ませた。分厚いローブが、わずかな光をきれいに遮ってくれる。


 僕は礼拝堂に散った魔石を集めると、三層に向った。


 並ぶいくつもの扉から一つを選ぶと、広間へと足を進める。

 今日も、中央にはデスナイトが待ち構えていた。


 一歩、広間に足を踏み入れると、デスナイトも構えを取る。

 リッチとは比べ物にならない、鋭い緊張感が辺りを支配する。


 じりじりと、互いに間合いを詰めていく。


 まずは杖の間合いに入るが、まだ動かない。

 次に剣の間合いに踏み込む。


 ――今だ


 デスナイトの振り下ろしをかわし、剣を杖で打ち下ろす。

 打撃の反動で跳ね返った杖を、首と兜の隙間に突き込む。


 そのまま杖をひねると、デスナイトの兜が外れた。


 飛び上がって、首に空いた空洞から杖を差し入れ、魔石に向けて『ライフスティール』を発動する。


 鎧がバラバラと崩れ落ち、デスナイトは倒れた。

 今度は魔石を壊さず、倒せた。


 広間を見回すといくつかの扉がある。


 扉の向こうは、ただの小部屋だったり、来たのと同じような通路が続いていたりする。


 通路を選んで進むと、再び広間が現れた。

 中央には、やはり甲冑姿のデスナイトが佇んでいる。

 しかし今回は、手に槍を握っていた。


 僕は躊躇せず、広間へと踏み込んだ。


 デスナイトは手にした槍をくるりと回し、僕に向けて構える。

 

 槍はのリーチは、杖より長い。

 僕は慎重に間合いを図りながら、デスナイトの動きを見極める。


 デスナイトの槍が鋭く突き出される。

 僕は杖で受け、跳ね上げる。


 槍はそのまま回転し、今度は石突が飛んできた。


 槍の動きは、剣よりも杖に近い。

 僕は目を凝らし、デスナイトの動きを見逃さぬよう、杖で槍をさばき続ける。


 まだ槍の間合いには届かない距離で、デスナイトが突きを放つ。

 左手を途中で離すことで、さらに間合いを伸ばす。

 届くはずのない穂先が、僕に襲いかかってくる。


 僕は杖を素早く絡め、槍を巻き上げた。


 手を離れた槍は、広間の隅へと落ちていく。


 槍を落としたデスナイトは、片膝をついたまま首を差し出すかのように静止し、微動だにしなかった。


 僕は、デスナイトの肩に手を置くと『ライフスティール』を唱えて、とどめを刺した。


 この広間にも、やはりいくつかの扉がある。

 一つづつ開けていくと、小部屋の棚の陰に人影が見えた。


 白いマントに鎧を身にまとっている。聖騎士のようだ。

 血まみれで、意識はない。しかし、まだかろうじて生きている。


 ――ちょうどよい。


 僕は、騎士の命が霧散しないように魔力で保護する。

 そのまましばらく待つと、やがて騎士は息絶えた。


 命の感触は、まだ残っている。


『鑑定』


【名 前】ノア

【位 階】Ⅲ

【魔 力】S

【スキル】鑑定 生命魔法 魔力制御 魔法付与 高速思考 見取り 杖術

【魔 法】ヒール キュア エンハンス ライフスティール リザレクション カーム ライフプロテクション


 ライフプロテクションが増えているのを確認し、僕は来た道を引き返した。


 地下聖堂に戻ると、いつも通り静かだが、どこか落ち着かない空気が漂っていた。


 聖具室のカウンターに武器とランタンを返却する。


「ノアか。聖騎士たちが三層でデスナイトにやられた。新人が一人はぐれたらしい。お前も三層に潜るなら気にかけておいてくれ」


 バルドは深刻な表情でそう告げた。


「ええ。見かけたら必ず」


 僕はそう答え、聖具室を後にした。


 翌日も、リッチの部屋を掃討する。

 技術は身につかないが、位階上げにはこちらのほうがよさそうだ。


 その後は、剣と槍のデスナイトを始末する。

 だいぶ、スムーズに倒せるようになってきた。


 小部屋の扉を開けると、聖騎士が横たわっていた。

 死んではいるが、腐敗が進んだりはしていない。


 それだけ確認すると、僕は小部屋を後にした。


 さらに翌日。再び小部屋を訪れる。


 遺体の様子は変わらない。

 ライフプロテクションの効果はまだ残っている。

 だが、閉じ込められた命が確実に弱ってきている。


 ――余裕を見て二日。もっても三日が限界か。


 ポケットから『リザレクション』を込めた魔石を取り出し、魔力を流す。

 魔石の輝きが増し、やがて聖騎士はまばゆい光に包まれた。


 光が収まると、聖騎士が目を開けた。


「……ここは?」


 聖騎士はあたりを見回す。


「何があったか覚えていますか?」


 僕は、優しく問いかけた。


「隊のみんなと訓練で、デスナイトに挑んで……」


 聖騎士は、はっとしたように顔を上げた。


「そうだ、僕は槍で……突かれて、この小部屋に逃げ込んだはず」


 そこまで言うと、彼は思わず腹に手をやった。


「傷が……ない」


 その声は、驚きと戸惑いで震えていた。


「傷なら、治療しておきました」


 僕はそっと手を差し伸べ、彼を立ち上がらせる。


「今ならデスナイトはいません。一緒に地下聖堂に戻りましょう」


 ――記憶は問題なさそうだ。


 二日も経っているが、脳への影響は無いとみていい。


 僕は、新人騎士にひたすら感謝されながら、地下聖堂へと帰還した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ