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学校一の美少女はすでに俺が攻略済み!  作者: 宵月しらせ


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第27話 手繋ぎ登校

 年が明けて、俺の停学も明けた。

 その日、俺は学校に行く前に、彩紗の家に行った。


 学校から離れているとはいえ、どこで誰に見られるかわからないので、これまでは一緒に登校したことはない。

 だが、藤巻さんに写真を送った時に覚悟を決めた。

 もうバラそう、と。


 クラスでの小さな摩擦を避けるため、関係を隠したことが、今回の騒動のそもそも発端だ。

 最初から関係を公表していれば、何も問題になるはずがなかったのだ。

 二度とこんなことがないように、今からでも関係を公にしよう――と、二人で話し合って決めた。


 というわけで、一緒に登校するところから始めることにした。

 玄関のチャイムを鳴らすと、すぐに彩紗がドアを開けたくれた。


「おはよう」


「うん、おはよう。事前に決めてたとはいえ、理希くんがうちに来てくれるなんてなんか不思議」


「そういえばそうだな」


 203号室という俺たちだけの部屋があるため、お互いの家に行く機会は多くない。

 年始のあいさつで来たから、最近来たと言えば来たのだが……その前は去年の正月だった。



「まだ時間あるから、とりあえずあがって」


「うん。おじゃまします……ははっ」


「どうぞ遠慮なく……ふふっ」


 慣れない挨拶にお互い戸惑い笑ってしまう。

 その様子を彩紗の家族が不思議そうに眺めていた。


「おはようございます」


 と家族たちにあいさつすると、みんな優しく出迎えてくれた。

 すでに食事は終わっているようで、リビングでお茶を飲みながら家族団らんの時間を過ごしていたようだ。

 ……うちにはない文化だ。


 我が家では、食事は家族そろって食べるが、食後は割とさっさと出かけてしまう。

 朝からお茶する時間の余裕があるなんて、ちょっと信じらない。


「おはよう、理希くん。今朝はハーブティーにしていたんだけど、同じのでいいかしら?」


「あ、はい。ありがとうございます」


 彩紗のお母さんに訊かれたので、どんなハーブティーなのかもわからなかったが、とりあえず首を縦に振った。

 ところで、彩紗の両親をなんと呼べばいいのか未だにわからない。おじさん、おばさん、とは言いたくない。


 しかし、お義父さん、お義母さんと呼ぶのはまだ早い気がする。

 名前で呼ぶのも少し変な気がして……正解がわからない。


 ハーブティーを受け取り、湯気が勢いよく立っている水面を吹いて冷まし、一口飲んだ。

 柑橘系のフレーバーがついていて、爽やかな香りがする。


 だが飲んでみると案外苦い。その苦みの中に甘みが見え隠れする複雑な味。 

 久しぶりに井納家に来て緊張しているのでなければ、この深雑さを楽しめたかもしれない。

  

「このハーブティーには、気持ちを落ち着かせる効能があるらしいわ。彩紗から聞いたわよ。今日は勝負の日だって。がんばって」


 なるほど。そういうことか。


「ありがとうございます。がんばります!」


「とは言っても気負いすぎないように。リラックスを忘れずに。どれだけがんばっても、それが結果につながらないことなんていくらでもあるんだから」


「まぁそうですね。肩の力を脱いていきます」


「でも気合で負けたらそこで終わりだから。やっぱり気持ちは大事よ」


「あ、そうですね……」


 言ってることが二転三転する。

 要領を得ないことをあれこれ言う実母に彩紗は苦笑した。


「大丈夫だよ、理希くんなら。だって、私の旦那様だもの」


 いつもは、実質夫婦みたいなものとして過ごしている。だから言われ慣れているつもりではあったが、彩紗の家族とはいえ、他に人がいる場面でそう言われると、なんとも恥ずかしいな。

 いや、今日からは学校でも関係をオープンにしていくのだ。これくらいで恥ずかしがってはいられない。

 彩紗はきっとそういうことを言おうとしているのだろう。


「……………っっ!」


 しかし、彩紗の顔は、見る見る赤く染まっていく。

 

「今さら恥ずかしがるのか……」


「だ、だって、いつもは二人きりでしかこんなこと言わなかったのに。家族とはいえ聞かれたら恥ずかしかった……」


 言うまでもないが、彩紗の家族は俺たちの関係を知っている。203号室で半同棲していることを知り、いろいろと手助けもしてくれている。

 そんな人たちの前でも未来の夫婦として振る舞うのを恥ずかしがっていたら、学校ではどうなってしまうのか。

 ちょっと先が思いやられるな。


★★★


 お茶を飲み終わると、そろそろ出発していい時間になっていた。


「じゃあ行こうか」

「うん」


 彩紗は通学カバンを手にし、席を立った。

 靴を履き玄関を出て、いつもの道を歩き出す。

 いつもは一人で、今日は二人で――違いといえばそれくらいだ。

 

 そう、たいして何も変わってない。

 だから大丈夫、ビビることはない。

 堂々と行こう。


 俺は彩紗の手を握った。

 彩紗は少し震えている手で握り返してきた。


★★★


 彩紗と203号室で過ごすようになってすでに二年半。

 交際を始めたからでも一年九ヶ月が経過している。

 短い期間ではないだろう。たぶん、高校生カップルの平均的な寿命はとっくに超えているはずだ。

 

 とはいえ、手を繋いで外を歩く経験はそれほど多くない。

 かなり仲の良い相手からも隠れ、二人きりの世界にこもって関係を温め続けてきた。

 リア充だと誰かに認めてもらう必要なんかはなく、俺たちが幸せなことは、俺たちさえわかっていればいい。


 だから隠れ続けることに不満なんてなかった。

 

 変わりたい欲求があるかと言われれば、実は今でもそんなに強くはない。

 それでも、関係を公表することで得られるものはあるはずだ。

 たとえば、今やっているように、手を繋いで外を歩けるようになるのもその一つ。

 

 それは、リスクに見合うほどのものか? と心のなかで何度も考え直してしまう。

 クラスメイトに見られていない今なら、まだ考え直せるのではないか?

 藤巻さんにだけ話し、隠してもらうことでいいのではないか?


 もう決めたから――と思考停止に自分を追い込んで、ひたすら突き進めたらいっそ楽なのかもしれない。

 彩紗は今、何も考えているのだろう?


「彩紗、緊張してない?」


「してるに決まってるよ。学校が近付いてきて、いつ知り合いに会ってもおかしくないんだもの」


「だよなぁ」


「理希くんは友達に訊かれても楽でしょ? 私と付き合ってるって言えば、みんな羨ましがるだけだろうから」


「すげぇ自信」


「私はたぶん、『なんで?』って訊かれる。他にいくらでも選べるのに、なんであいつなんだって」


「本当にありそうだな、それ」


 一軍の連中はナチュラルに俺たち二軍を見下してるからな。


「その人たちに、私がどれだけ理希くんを好きか説明しないと。私の方から告白して、付き合ってもらってるんだって」


「それは少し違うぞ。俺の方こそ、付き合ってもらってると思ってる」


「そんなことないよ! 私の方が理希くんのこと好きだもん」


「彩紗が俺のこと大好きなのは知ってる。でも、俺の方がもっと好きだ」


「私の方が好き! だって、私は理希くんさえいてくれたら、宝物全部捨ててもいいと思ってるもの。理希くんがどれだけ私のこと好きでも、それ以上なんてことないよ!」


「それでも俺の方が彩紗を好き」


「むぅ……理希くんのわからず屋。どうしてわかってくれないの……って、これなんのケンカ」


「さぁ……わからない」


「まぁ今日のところは引き分けってことで。どっちの方が相手をより好きかは、今度じっくり話し合おう」


「そうしよう」


 学校に着く前にケンカが始まれば、いろいろ元も子もない。

 今のやり取りを誰かに見られていないといいが……いや、イチャついてるようにしか見えず、特に問題なかったりして?

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