閑話 ドラシナとの出会い
確か5~6歳位だったと思う。
俺は全属性の魔法適正を告げられ、周りから囃し立てられ調子に乗っていた。
テンプレの様な異世界転移、チート級の能力、精神は大人。誰もが自分は天才で、世界で一番優れていると思い込むだろう。
まぁ、それも数年後には打ち砕かれるのだが……
そんな中、俺はさらに強い能力が欲しくなり次第に無茶をするようになっていた。
組み合わせが禁止されてる属性で混合魔法を試し大怪我をしたり、魔力がまだ足りないにも関わらず上位魔法を使い魔力切れを起こして死にかけたりと、何かに取り憑かれた様に魔法の練習をし続けた。
そしてなるべくして、魔界の魅力に取り憑かれる。魔界は、現世界に比べて魔法自体のレベルがかなり高かったのだ。
魔界に行って魔法を習得したい。日々その思いは強くなり理性が利かなくなっていくのが自分でも分かった。
そして俺は、禁忌とされている逆召喚に手を出したのだ。
逆召喚とは召喚と逆の方法で、魔界に自分を送り込む魔法だ。
召喚の魔法陣を反転させ、そこに立つだけの簡単な術式だか出来る人間は一握りしかいない。
何故なら闇、光属性魔法を使えることが条件の為、そこで難易度が一気に上がるからだ。
そもそも光、闇を両方使える事がかなり稀といえる。
本来魔法の属性は1種類のみしか使えず、2種類使えるだけでも珍しい。
そして2種類使えたとして、火と水などの反する属性の組み合わせは通常起き得ない。
だから逆召喚は技術的には簡単だが、出来る人間は世界に数人の運に恵まれた数人だけだった。
そして、あれだけ周囲に『逆召喚だけは、絶対にするな』と言われていたにも関わらず、俺は自分だけは特別な存在だと勘違いし、好奇心に負けて手を出した。
逆召喚は魔界に侵入する際、人ではない何かに姿が変わると言われていたのにも関わらず……
逆召喚の結果だが……奇跡的に人の姿のまま成功した。後からわかったのだが、エルフの血やドラゴンの血が俺に入っていたからではないかとの事だった。
けれど代償はしっかり他にあったのだ。
記憶喪失。
魔界に来た目的どころか、自分の名前以外は全て忘れていた。
転生者としての精神的優位を無くした俺は、ただの少年になった結果、泣きじゃくり、ひたすら宛もなく走ったのを覚えている。
どれくらい走っただろう……泣くことにも疲れ、俺は進む事をやめた。
そんな時、後ろから声をかけられた。
「な、何で人間の子供なんかが、こんなとこにいるんだい!?」
振り返ると、真っ赤なドレスを着た綺麗な女性が驚いた表情で立っていた。
ストレートの真っ赤な髪は揺れる度に火の粉が揺れ落ち、細い目は何処か微笑んでいるような印象を与える優しい雰囲気に、少し安心したのを覚えている。
「まさか……願いがかなったの……人にまでなって毎日願っていた……あの願いが……」
その女性はすごい速さで俺に近づくと、しゃがみ込み目線を合わせて質問してきた。
「名前は?家はある?」
「バルト……後は全部分からない……」
少なくとも敵意がないのは、分かったので正直に答える。
「う、嘘……だよね……まじで迷子なの……?君さ、もしかして困ったりしてる?」
「うん……行くところもないし、何も分からないんだ……」
「な、なら……とりあえず保護しないとね、こんな危ない所にお、置いてはいけないし……あくまで保護だから……うん……
バルト君、お姉さんのお家で良いこと……じゃなくて……とりあえず来る?」
これが俺とドラシナの初めての出会いだった。
今思うと、完全にショタコンドラゴンだがそんな事に気付くはずもなく、俺はドラシナと手を繋ぎながら一緒に歩き出す。
もちろんドラシナは鼻血を出していた。




