三章 人でなしのお人好し
「キース……お前本当に騎士団員か?騎士団が率先して犯罪者作ってどうすんだよ……」
バルトは呆れながらキースに近づく。
「だけど結果次第では最高の結末になるぞ」
そしてバルトは不敵な笑みを浮かべた。
「最高の結末ってどういう事ですの?犯罪なのに最高?悪い事なのに最高?ん?」
ハンナは全く意味が分からず、頭に?をたくさん浮かべている。
「国際的な戦争を止めちまえば、そいつらは英雄だろ?」
バルトはニヤニヤしながら話を続ける。
「英雄が少し法を破ったところで、罪を追及されるわけないからな!
しかもノクターナルからも謝礼はたんまり期待出来るし、さらに言ってしまえばノクターナルという国家に返しても返しきれない恩を売れる!
そうすれば俺達は一生安泰だ!依頼を受けるよりはるかに見返りがでかい!」
バルトか嬉しそうに両手を広げ笑った。
「バ、バルトさん……それを私の前で言いますか。
残念ですけど、今のノクターナルの財政状況から多額の謝礼金は出せ……」
「ラルカ、あれはバルトの照れ隠しみたいなものよ。本当は困ってる人がいたら放って置けないお人好しなだけ。
こういう言い方をすれば、助けられた相手も恩を感じずにすむでしょ。
人でなしのふりをしてるバカかつくほどのお人好しよ」
ラルカの話を遮り、リリィがバルトに聞こえないようにラルカに耳打ちする。
「バルトさん……」
ラルカは尊敬の眼差しでバルトを見つめた。
が、実はリリィの予想も外れている。
バルトは戦争をさっさと終わらせ、ノクターナルの夜のお店を楽しみたいのだ。
戦争なんていつまでもやられてたら、夜のお店がいつ再開されるか分かったものではない。
エロの為なら命を懸ける。バルトの本質は全く変わっていなかった。
『バルト……命とエロの重さか本当に同じなんだね……』
シトリーが呆れながら話しかけてきた。
『当たり前だ。俺はエロに人生を全振りすると決めている』
『まぁ、別にバルトの人生だから良いけどさ。こういう時って本当はエロを目的としたふりをして……ラルカちゃんを助けたいとかが王道だと思うんだけど……』
『は?なんで殺されそうになった少し可愛い亜人を命懸けで助けなくちゃいけないんだよ。悪いが俺はそこまでお人好しじゃない。そんなんは伝説の王道勇者がやってろ』
安定のクズ発言でバルトはシトリーに言い返した。
「バルト……悪いがそうはいかない」
キースが少し気まずそう頭を掻いた。
「君達が受けない場合、Sランクのあるギルドに依頼が回る手筈になっているからな。しかもそのギルドは依頼を今まで断ったことがない事で有名なギルドだ」
「想定済みだ……だから俺達は依頼を受けるか少し考えることにする。俺達が保留にしている間はそいつらに依頼がいくことはないだろ」
「確かにそうだが……お前達が違法に脱出したのがバレたらすぐに依頼は移るぞ。恐らくバレるまで早ければ3日だ。
その間に結果を出せなければ、俺達は恐らく反逆者として指名手配される。それに3日ではノクターナルまでたどり着くことも出来ないのだぞ?」
キースは冷静にバルトの計画の穴を指摘した。
「そこは大丈夫なはずだ。ラルカ、多分ノクターナルへ直接入れる許可証みたいなの持ってるだろ?」
「え?なんでそれを……」
「俺達が依頼を受けてから1日もかからずに来ただろ。直接ノクターナルから転移しなければ不可能だ。
そして帰る時も結界をすり抜けられる何かを持っていなければ帰れないからな。任務の報告に時間はかけれないはずだ」
「バルトさんの仰る通りです。ノクターナルの結界を無効化できる魔法石をペンダントとして渡されました」
ラルカは胸元にあるペンダントをバルトに見せた。
「転移時にラルカの近くにいれば効果は俺達にも反映されるはずだ。そもそもラルカが誰かと転移してくるなんて想像してるはずがないからな。
いきなりノクターナルに入ると、色々めんどくさくなりそうだから本来は避けたかったが……」
「確かにそれなら問題は全てクリアしているな……だが3日という短い時間でこれだけの問題を解決できるとは……いや、バルトなら出来るか」
最後まで言わず、キースは席を立ち部屋に結界魔法を張った。
「魔法干渉無効の結界を張った。これで俺がお前達をノクターナルへ転移させてもすぐには気付かれないだろう。バルト、始めるぞ」
バルト達は頷き、部屋の中央に集まった。
「では始めるぞ……あとこの指輪を持っていけ」
キースはバルトに指輪を投げる。
「お、おい……俺は可愛い男の娘以外興味はないぞ?イケメンは対象外だ」
バルトはキースから後ずさった。
「冗談言える位の余裕はあるみたいだな、それはマジックアイテムでつけている者同士が離れていても念話が出来る指輪だ。
ノクターナルとなるとかなり遠いから、魔力の関係上一日数回しか出来ないとは思うが、ないよりはいいだろう」
「いや、本音だぞ。」
バルトは親指に指輪をはめながら、真顔で答えた。床に魔方陣が現れ、転移が始まる。
「あと一つだけ重要な事を言い忘れたのだが、君達の後に依頼される冒険者は例外的にパーティーを組まずにいることが許されて……」
キースが何かを言いかけたが、転移が始まり最後まで聞くことが出来なかった。
「あいつ、最後にかなりヤバそうな情報言いかけなかったか?まぁいいか……ラルカここがどこだか分かるか?」
「恐らく成功してます。この森は城の近くの森ですね」
辺りを見回すと、確かに森の中に移動している事が分かった。
「問題はここからだな……どうしたもんかな……」
「とりあえず事実を確認していくしかないんじゃない?騎士団長だっけ?その人がどういう意図でラルカに任務を依頼したのか分からないと、話が先に進まないし」
クリスが辺りの様子を確認しながら答える。
「それもそうなんだが……いきなり暗殺目的だった奴らが現れたとなると、話がややこしくならないか?」
「そうでしょうか?ちゃんとラルカさんのお話を聞いて下されば、誤解されてもすぐにとける思いますけど」
心配そうにするバルトにハンナが笑いかけた。
「いや……普通はそうなんだろうけどさ……」
そう言ってバルトはハンナ達の新しい服を見回す。
このヤバい格好でなければ、の話だよな……
痴女シスターに、ヤンデレ召喚士、変質者の魔法使い。話を聞いてもらえる前に、絶対にややこしくなるのは分かりきっている。
「ラルカ、少し心配だがとりあえず一人で言って説明してこれるか?」
「わ、私もその方が良いと思います!」
ラルカもバルトと同じ事を考えていたらしい。
ハンナ達は不思議そうに互いに顔を見合わせていた。




