二章 想いは通じず
騎士団本部の前につくとキースが、ラルカの存在に気付いた。
「ん?そこのお嬢さんは……」
「ラルカだ、ノクターナルの騎士をやっていて……色々あって一緒に行くことになった。敵ではないから安心してくれ」
「……そうか、早速だが中に入って任務の説明をさせてもらう」
そう言うと、少し鋭い眼光でラルカを一瞥し、キースは門番に扉を開けさせる。
「うわ、童貞門番じゃん……」
「あら、意地悪童貞さん……」
「相変わらず性欲もて余してる顔ね」
クリス達が冷ややかな目で門番を見ているのに気付き、バルトが目をやるとお決まりの門番が立っていた。 クリス達の発言が聞こえたのか、顔を真っ赤にしながら必死に前を向いている。
「ん?クリス君達は彼と知り合いだったのか?」
キースは不思議そうに歩きながら門番とクリス達を交互に見ている。
「知り合いじゃないよ、ただこの童貞がめんどくさいだけ」
門番の横を通るタイミングでクリスは、キースにわざと大声で説明した。
「よく分からないが……門番よ!童貞でも恥じることはないぞ!皆最初は童貞だ!」
キースは通りすがりに門番の肩を叩きながらそう言うと、門番の顔は更に赤くなり血管がかなりの本数浮き出ている。
いくらこいつの頭が固いからって言いすぎだ……
バルトは同じ童貞として慰めずにはいられなかった。
「あのさ……俺もまだ童貞だから気にすんなよ」
バルトは優しい声で門番を励ました。
「い、いや……俺は違うぞ?妻だっているし……」
さっきまで真っ赤だった門番の顔をが普通の色に戻り、逆に気まずそうな顔でバルトを見ている。
「……ここに童貞をバカにされてるやつは居なかったんだな……」
バルトは悲しい笑顔で門番の肩に手を置いた。
「あの……元気出してください」
門番からかなり気まずそうにそういわれると、バルトは笑顔で頷いた。
「今日からお前は俺の敵だ……覚えてろ……」
そう言って笑顔のまま、バルトは騎士団の中に入っていく。
「お、おい!……はぁ……本当むちゃくちゃな奴らだ……」
門番は深いため息をついた。
騎士団本部に入るとキースの部屋に案内された。
シンプルだが、いかにも高そうな机に椅子があり、その他の装飾品も高そうなのがすぐ分かる。改めて騎士団幹部なのだと実感させられた。
「そこそこ偉いとは思ってたけど、本当に偉いんだな」
バルトが部屋を見渡しながらキースに話しかけた。
「仮にも幹部だからな!国王がいない今……私はそれなりに偉い!」
キースは絵に描いたようなドヤ顔でふんぞり返った。
「はい、はいそれは良かった。ところで副団長……カシウスはどうしてる?」
カシウスとはシトリーの件以来会っておらず、人間に戻れたとは聞いたが詳しい話は聞いていなかった。
「元気にしてるさ!我が国は国王が逃亡したせいで国の指導者不在になってしまったから、国際連邦会議で騎士団が今後国の運営をすることを宣言しに行っている」
「連邦会議?なんの?」
バルトはキースが言っていることが全く理解出来なかった。
「バルト……本当に学生のころ勉強しなかったんだね……」
クリスは頭を抱えながらバルトに呆れ返った。
「国際連邦会議は、人の国バーラック、エルフの国アネモイ連邦、神々の国コモンズ、魔獣の国デドラ、そして亜人の国ノクターナルの5つが集まる大事な会議だよ。そこで魔王の対策とか、国同士の戦争の調停とか、色々国際的な問題の解決をしてる」
「へー……こうやって改めて聞くと色々あるもんだな」
バルトはクリスの説明に感動した。
「5,6歳で習うことだけどね……」
「それと、カシウス副団長からバルト宛に伝言が昨日届いたぞ」
そう言って、キースがバルトに一枚の封筒を手渡す。
『バルト君、君弱すぎ。帰ったら指導します。後勇者の件は今後君に責任を持って引き継いでもらいますので。コウモリ男より』
バルトは何も見てないことにして、そっと手紙を閉まった。
「キース、本題に移ってくれ」
「か、構わないが……随分顔色が悪いぞ?とりあえずソファーにかけてくれ」
一瞬で青ざめた顔をしているバルトをキースは心配してソファーに案内した。
「では本題に入る。単刀直入に言わせもらうが状況は最悪だ。ノクターナルが我々と戦争状態に入った」
「え……」
キースの思いがけない発言に、ラルカは言葉を失った。




